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副業社労士の日常vol8 10日無断欠勤者は解雇できない?

副業社労士の日常vol8 副業社労士の日常
無断欠勤10日はクビなのか?
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そこここで書いているので、知っておられる方はいらっしゃると思うのですが、この記事で初めて私の記事を読む、という方のために改めて書きますと、私は大阪の農産物の中央卸売場で会社員をやりながら副業で社会保険労務士事務所を開業しております。

最近、本業のほうで気になることが出てきたので、また殴り書きのような感じで書いていきたいと思います。

無断欠勤10日間、電源オフで音信不通…さて、どうする?

掻い摘んで話をすると、無断欠勤をする従業員(アルバイト)というのをどう取り扱えばいいのか、という事なんです。

現在、約10日間無断欠勤をしており、その間携帯電話の電源は、切っています。

総務部の方が、「ひょっとしたら死んでいる可能性もある。」ということで、住んでいるマンションまで足を運んだけれど、応答はありません。

そうこうしているうちに、その従業員の上司にLINEがきて、「ちょっと体調が悪かった、休み明けから必ず出社します。」とのこと。

私の個人的意見をいうと、体調不良なら休むのは仕方がないし、休むしかないと思うのだけれども、連絡くらいは入れれるやろ。わざわざ携帯電話の電源を切っているのは何なんでしょう?基本的には10日ほど無断欠勤しているならクビでしょう。

しかし、総務部のひとは、「簡単に従業員はクビにはできない。」と言っています。

解雇はそんなに簡単じゃない?労働契約法第16条の壁

労働契約法第16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」というのがあります。いわゆる「解雇権濫用の法理」ですね。

ということは、社労士試験でも勉強したので、私もその辺は理解しています。

しかし、この「10日間の無断欠勤」というのは「客観的に(クビにする)合理的な理由がある」には当てはまらないのか?「(クビにする)社会通念上の相当性」がないのか?という疑問が湧き上がってきます。

一般常識という言葉があります。この一般常識という言葉を深掘りせずに、敢えて使うなら、「一般常識的に見て、クビにするには十分すぎる理由だろう」と思ってしまうのは私だけでしょうか?

懲戒解雇の有効性に必要な「会社の対応」

就業規則に具体的な懲戒事由を明記していれば、問題無いのではなかろうか?

例えば3日間連続で無断欠勤した場合は・・・のように。

しかし、そうではないようです。たとえ就業規則に「3日間無断欠勤の場合懲戒解雇」とあっても、実際に裁判などで有効性が争われた場合、以下の点が考慮されます。

1:無断欠勤の状況の合理的な調査・確認

  • 会社は、従業員と連絡を取ろうと最大限努力したか。(電話、メール、同居家族への連絡など)
  • 欠勤の背景に、病気、事故、災害、家族の緊急事態など、やむを得ない事情はなかったか。会社はそれを確認しようとしたか。

2:従業員への弁明の機会の付与

  • 解雇する前に、従業員に欠勤の理由を説明する機会を与えたか。

3:会社側の運用状況・過去の事例

  • 過去にも同様の無断欠勤があった従業員に対して、同じように懲戒解雇してきたか。他の従業員との間で不公平な扱いになっていないか。
  • 事前に無断欠勤に対する注意や指導は行われていたか。

4:欠勤の悪質性・会社への影響

  • たとえ3日間であっても、その欠勤が会社の業務にどれほどの重大な影響を与えたか。
  • 欠勤が悪質といえるか。(意図的に連絡を絶っていたかなど)

これらの要素を総合的に判断し、「懲戒解雇」という最も重い処分が、その状況において本当に「相当」だったかが問われます。

要するに、就業規則に具体的な懲戒事由を明記することは、解雇の有効性を高めるための必要条件ではありますが、それだけで十分条件にはなならないのです。

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最終的には、個別具体的な事情と、解雇に至るまでの会社の対応(連絡努力、調査、弁明機会の付与など)の適切さが問われることになります。

今回、私の会社での無断欠勤事件は、説明すると長くなるので割愛しますが、上記の1・3・4はクリアしてます。あとは2の「解雇する前に、従業員に欠勤の理由を説明する機会を与えたか。」は、出勤後の本人の弁明になります。

今回の件、どう見てもクビにしていいと思うが…

そういうことを踏まえると、この従業員をクビにするのは、客観的に合理性があり、社会通念上の相当性もあるように思います。

確かに、過去の判例などと照らし合わせてみると、今回の「約10日間ほどの無断欠勤」という単体の事由だけでは、「クビ」は厳しいようです。

しかし、上記の考慮されるべき事を加味していくと、結論は180度変わるのではないでしょうか。

弊社の総務部はなにをビビっているのでしょう?

ちょっとここで、私が勤めている会社の概要を言いますと、従業員数は100名には届かないくらい。売り上げは、年100億円には届かないくらいです。

私は社労士の資格を持ってはいますが、会社はそのことを知らないし、知らせるつもりもありません。

そのうえで客観的に私の勤めている会社を見てみますと、まず「就業規則」なるものがあるのかどうかが不明です。

従業員の私がそんなことを言っている時点で、当然「就業規則」がもしあったとしても周知はしていないでしょう。

弊社は農産物の中央卸売市場の中にある仲卸業ということになります。

まだまだ昭和を引きずった経営者も多く、「就業規則?何それ?」「36協定?そんなん出してない」という方々が多い業界ですが、その中では、弊社はかなりマシなほうです。

そうはいっても今回の件は、ちょっといただけないなぁ。

また、今回のことを踏まえて、労働法に関する私なりの考え等を別記事で書いていきたいと考えてます。

では、また。

ご拝読ありがとうございました。

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