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2025年・改正育児介護休業法【実務対応編】(28)男性育休「合わせ技」徹底ガイド【第3回】育休中の社会保険料は免除?月々の給与・賞与免除も解説

育休中の社会保険料免除 2025年改正育児介護休業法
育休中の社会保険料免除はどうなっているのでしょう
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社会保険労務士 戸塚淳二

執筆者:社会保険労務士 戸塚淳二

法改正対応のスペシャリスト。戸塚淳二社会保険労務士事務所 代表として、多岐にわたる労働関連法規の解説から、実践的な労務管理、人事制度設計、助成金活用まで、企業の「ヒト」と「組織」に関する課題解決をサポートしています。本記事では、事業主の皆さまが安心して法改正に対応できるよう、専門家の視点から最新情報をお届けします。

社会保険労務士登録番号:第29240010号

この「2025年改正育児介護休業法」シリーズでは、改正育児介護休業法のポイントや、男性育休取得における様々な実務対応について解説しております。

特に最近では、男性の育休取得をさらに柔軟にする「合わせ技」戦略にも焦点を当てています。

前回の【第2回】では、育休中の重要な経済的サポートである育児休業給付金について、その申請手続きや支給フローを詳しくお伝えしました。

育休中の収入に関する不安は、これで少しは解消されたのではないでしょうか。

さて、育休中の経済的な側面は育児休業給付金だけではありません。

家計に大きな影響を与えるもう一つの要素が「社会保険料」です。

毎月の給与明細で差し引かれている健康保険料や厚生年金保険料は、育休中も支払う必要があるのでしょうか?

今回の【第3回】では、まさにその疑問にお答えします。

育児休業中の経済的負担を大きく軽減してくれる「社会保険料の免除」制度について、その仕組みを具体例を交えて詳しく解説していきます。

育休を検討している従業員の方はもちろん、制度運用に関わる企業の人事・労務担当者の方々も、ぜひ最後までお読みいただき、スムーズな育休取得・運用の参考にしてください。

育休中の社会保険料免除とは?

育児休業給付金と並び、育休中の家計を強力にサポートしてくれるのが社会保険料の免除制度です。

給付金が「収入の確保」である一方、社会保険料免除は「支出の削減」という側面から、経済的負担の軽減に貢献します。

制度の概要

育児休業期間中、健康保険料厚生年金保険料が、従業員本人負担分・会社負担分ともに全額免除される制度です。

これは、産後パパ育休(出生時育児休業)、通常の育児休業、そしてパパママ育休プラスを利用した育児休業のいずれを取得した場合でも適用されます。

「保険料が免除されると、将来の年金受給額が減ってしまうのでは?」と心配される方もいるかもしれませんが、ご安心ください。

社会保険料が免除された期間も、健康保険は通常通り利用でき、厚生年金保険については、保険料を支払った期間と同様に将来の年金受給額に反映されます。

つまり、保険料の負担なしで、現在の通常利用、将来の保障が確保される非常に手厚い制度なのです。

月々の給与にかかる社会保険料の免除

月々の給与から徴収される社会保険料の免除条件は、以下のいずれかに該当する場合です。

  1. 月末時点要件
    • 育児休業の開始月から、終了月の前月までの期間。
    • ただし、育児休業終了日が月の末日である場合は、その月も免除。
  2. 同月内14日以上要件
    • 月の途中で育児休業が開始・終了し、月末に育休をしていない場合でも、同一月内で14日以上育児休業を取得していれば、その月は免除。

具体例1

  • 9月15日に育休を開始し、10月29日に終了した場合
    1. 9月(育休開始月)
      • 月末に育休中のため、9月分の保険料が免除。(要件1-❶)
    2. 10月(育休終了月)
      • 月末に育休が終了しているため、10月分の保険料は発生。(要件1-❶)
    3. 免除対象
      • 9月分のみ

具体例2

  • 9月1日に育休を開始し、9月30日に終了した場合
    1. 9月(育休開始・終了月)
      • 月末に育休中のため、9月分の保険料が免除。(要件1-❷)
    2. 免除対象
      • 9月分のみ
    3. ポイント
      • 「社会保険料の免除が適用されるのは、育児休業を開始した日の属する月から、育児休業が終了する日の属する月の前月までです。」というのが基本事項です。
      • しかしながら、「育休終了日が月末の場合」は、その月も免除になるという点は非常に重要で、多くの人が混同しやすいポイントです。(要件1-❷)

具体例3(産後パパ育休)

  • 9月14日に育休を開始し、9月28日に終了した場合
    1. 9月(育休開始・終了月)
      • 当該月(9月)中に14日以上(9月14日~9月28日の15日間)の育児休業を取得しているため、9月分の社会保険料は免除。(要件2-❶)
    2. 免除対象
      • 9月分
    3. ポイント
      • 短期間の育休で月の途中に終了していても、当該月中に14日以上の育児休業を取得していれば免除が適用されます。
      • 別の例でいうと9月14日~9月20日の7日間の育児休業取得であれば、要件1-❷に該当しないため免除は適用されません。

具体例4(産後パパ育休)

  • 9月25日に育休を開始し、10月3日に終了した場合
    1. 9月(育休開始月)
      • 月末(9月30日)に育休中のため、9月分の保険料が免除。(要件1-❶)
    2. 10月(育休終了月)
      • 月末(10月31日)には育休が終了しているため、10月分の保険料は発生。(要件1-❶)
    3. 免除対象
      • 9月分のみ

育児休業中の社会保険料免除の条件は、上記でも書いたように、以下の2点を抑えればほぼ間違いありません。

  • 月末時点要件
    • 育児休業を開始した月や終了する月において、月末時点で育児休業をしていること。
  • 同月内14日以上要件
    • 月の途中で育児休業が開始・終了し、月末に育児休業をしていない場合でも、同一月内で14日以上育児休業を取得していること。

これらの免除要件を考慮し、育児休業期間を計画すると良いでしょう。

賞与にかかる社会保険料の免除

賞与にかかる社会保険料が免除されるのは、以下のいずれかの要件を満たす場合です。

  1. 当該賞与が支給された月の末日を含む育児休業等を取得し、かつ、その育児休業等の期間が1か月を超える場合。
  2. 当該賞与が支給された月の同月内に育児休業を開始し、同月内に終了する場合で、その育児休業期間が連続して14日を超える(15日以上)場合。

具体例1(連続して15日以上

  • 7月1日から7月1日5まで育休を取得し、7月20日に賞与が支給された場合
    • 7月中に連続して15日間育休を取得しているため、7月に支給された賞与にかかる社会保険料は免除されます。(要件2)

具体例2(15日未満の場合

  • 7月1日から7月10日まで(10日間)育休を取得し、7月20日に賞与が支給された場合
    • 7月中の育休期間が15日未満であるため、7月に支給された賞与にかかる社会保険料は免除されません。(要件2)

具体例3(分割取得で15日以上だが連続しない場合

  • 7月1日から7月7日まで(7日間)育休を取得し、その後7月10日から7月19日まで(10日間)育休を取得、7月20日に賞与が支給された場合
    • 7月中の育休期間の合計は17日間となりますが、「連続して14日を超える」という要件を満たしていません(7月8日と9日は育休ではないため)。(要件2)
    • したがって、この場合、7月に支給された賞与にかかる社会保険料は免除されません。
    • ポイント: 賞与の社会保険料免除には、期間の「連続性」が非常に重要です。

具体例4(育児休業が月をまたぎ、賞与月の月末に育休が終了している場合)

  • 6月30日から7月25日まで(26日間)育休を取得し、7月20日に賞与が支給された場合
    • 「賞与が支給された月の末日(この場合は7月31日)に育児休業中であり、かつ育児休業期間が1か月を超える」という要件(要件1)を満たしていません。
    • しかも、同一月内で育休が開始・終了していないため、要件2にも該当しません。
    • したがって、免除のされません。
    • ポイント:この場合、もし育休開始が6月30日ではなく7月1日にして、7月1日から7月25日までの25日間であれば免除されます。

「合わせ技」による分割取得時の免除

  • 育児休業を分割して取得した場合でも、それぞれの育休期間において、月ごとの社会保険料免除の要件(月末に育休を取得していること)
  • 賞与にかかる社会保険料免除の要件(同月内に連続して14日を超える育休を取得していること)
  • これらを満たせば、それぞれ社会保険料免除の対象となります。

これらの既存の免除要件は、2025年改正後も継続して適用されるため、安心して制度を活用できます。

2025年改正育児介護休業法での変更点

育児休業中の社会保険料免除制度については、2025年の改正育児介護休業法において、大きな変更点はありません。 現在の制度が引き続き適用されます。

まとめと次回予告

今回の【第3回】では、育児休業中の家計を大きく支える「社会保険料の免除」制度について詳しく解説しました。

  • 月々の社会保険料
    • 育休期間が月末にかかる場合、または同月内で14日以上の育休を取得した場合に免除されます。
    • これは、育児休業給付金と同様に将来の年金受給額に影響しない非常に手厚い制度です。
  • 賞与にかかる社会保険料
    • 原則として賞与月の末日を含んで1か月を超える育休期間がある場合に免除されます。
    • ただし、同月内で育休を開始・終了する場合は、連続して14日を超える(15日以上)育休期間が必要となる点にご注意ください。

これらの免除制度を理解し、育休期間を適切に計画することが、経済的負担を軽減し、安心して育児に専念するための重要な鍵となります。

次回予告

さて、今回は育休中の経済的サポートの全体像が見えてきたことと思います。しかし、制度を知るだけではまだ不十分です。実際に社会保険料の免除を受けるためには、具体的な申請手続きが必要です。

次回の【第4回】では、「社会保険料免除の具体的な手続き」に焦点を当てます。従業員が準備すべき書類や提出方法、そして企業側が行う手続きの流れを、ステップバイステップでわかりやすく解説します。

スムーズな育休取得のために、ぜひ次回の記事もお見逃しなく!

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