本記事は「2025年改正育児介護休業法シリーズ」の第35弾です。他のシリーズの記事はコチラから👉2025年育児介護休業法改正|企業がすべき対応と助成金情報
前回の記事では、2025年4月に施行された「出生後休業支援給付金」について、「手取り実質10割」の仕組みと総務担当者向けの申請手続きを解説しました。
前回の記事は👉出生後休業支援給付金の申請手続きと必要書類|実務ポイントを解説
今回は、育児休業からの職場復帰後も時短勤務を続ける従業員を支える「育児時短就業給付金」について、総務担当者が実務で必要な知識を中心に解説します。
この記事でわかること
- 支給対象になる従業員の条件と、賃金減少率の判定方法
- 支給額の計算式と、二段階の上限・下限が適用される仕組み
- 賃金が90%超100%未満の場合の支給額調整のルール
- 給与水準別シミュレーション(不支給になる基準額の逆算含む)
- 総務担当者が事前に確認すべき社内手続きのポイント
「育児時短就業給付金」とは|目的・概要をわかりやすく解説
育児時短就業給付金は、2025年4月に施行された、総務担当者が把握しておくべき制度です。
育児休業を終えて職場に復帰した後も時短勤務を続ける従業員を経済的に支えることを目的として創設されました。
制度の目的と概要を以下で確認します。
育児時短就業給付金の目的|育児と仕事の両立を経済的に支援
この給付金の目的は、育児休業から職場復帰した従業員が直面する「時短勤務による賃金減少」を補填し、継続就労を支援することです。
子どもが小さい時期はフルタイム勤務が難しい従業員も多く、時短勤務は育児と就労を両立させる現実的な選択肢です。
一方で、時短勤務への移行は賃金減少を伴うため、従業員の職場復帰意欲や継続就労の妨げになるケースがあります。
本給付金はその減収分を補填することで、従業員が安心して時短勤務を選択できる環境を整えることを目的としています。
総務担当者としては、この制度を従業員への説明材料としても活用できます。
育児時短就業給付金の支給対象者|2歳未満の子を養育する時短勤務者
育児時短就業給付金の支給対象となる従業員の条件は以下の3点です。
- 2歳未満の子を養育していること
- 子が2歳の誕生日を迎えるまでの期間が給付対象となります。
- 所定労働時間を短縮して就業していること
- 時短勤務に移行している従業員が対象です。
- 例えば、1日8時間勤務から1日6時間勤務に変更した場合がこれに当たります。
- 育児休業開始前と比較して賃金が低下していること
- 所定労働時間の短縮によって、育児休業開始前の賃金と比較して賃金が一定割合以上低下していることが要件です。
支給要件の詳細 賃金減少率と被保険者要件
給付金を受け取るためには、さらに具体的な支給要件を満たす必要があります。
- 賃金減少率
- 短時間勤務に移行した結果、その期間の賃金が、育児休業開始前の賃金(育児時短就業開始時賃金月額)と比較して100%未満に減少していることが求められます。
- 特に、90%以下に減少した場合には、時短勤務中の賃金額の10%が支給されます。
- 賃金が90%を超え100%未満の場合には、減少率に応じて支給額が調整される仕組みです。 これにより、少しの減額でも給付の対象となるよう設定されています。
※支給要件の詳細は、厚生労働省「育児時短就業給付の創設について」(厚生労働省公式サイト)をご参照ください。
- 被保険者要件
- 育児休業給付金と同じく、雇用保険の被保険者であること、そして育児休業開始日より前の2年間に賃金が支払われた日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あることなど、一定の被保険者期間の要件を満たす必要があります。
- その他の要件
- 実際に時短勤務に従事していること、ハローワークへの申請手続きを行うことなども含まれます。
育児時短就業給付金の支給額と期間|賃金の10%相当を補填
給付金の支給額は、原則として以下のようになります。
- 支給額
- 育児時短就業中に実際に支払われた賃金額の10%相当額が支給されます。
- 支給期間
- お子さんが2歳になるまでの期間が対象となります。ただし、実際に時短勤務を行い、支給要件を満たしている期間に限られます。
給付額を左右する二段階の上限・下限について
「育児時短就業給付金」の支給額を理解する上で、実は二段階の上限・下限が存在することを知っておくことが重要です。
1. 給付額算出の基準となる「育児時短就業開始時賃金月額」の上限・下限
- 給付金は「時短就業開始時賃金月額」の10%として計算されますが、この「時短就業開始時賃金月額」自体にも、上限と下限が設けられています。
- 上限: 471,393円(2025年8月1日~2026年7月31日適用)
- 時短勤務中の賃金がこの金額を超える場合でも、給付金計算のベースとなる賃金は471,393円に抑えられます。
- 下限:86,070円(2025年8月1日~2026年7月31日適用)
- 時短勤務中の賃金がこの金額を下回る場合でも、給付金計算のベースとなる賃金は86,070円に引き上げられます。
- ※これらの金額は毎年8月1日に改定される可能性があります。
- 上限: 471,393円(2025年8月1日~2026年7月31日適用)
2. 実際に支給される給付金そのものの下限(2,411円)
- 上記1.の基準賃金月額に10%を掛けて計算された給付額が、月額2,411円未満となる場合は、給付金は支給されません。
- この金額も毎年8月1日に改定される可能性があります。
3. 賃金と給付額の合計による調整(最も重要!)
- 最も重要なのは、「各月に支払われた賃金額と、支給された給付額の合計が、支給限度額(459,000円)を超える場合は、超えた部分が減額される」というルールです。
- これはつまり、「時短勤務中の賃金 + 育児時短就業給付金」が459,000円を超えて支給されることはない、ということです。もし合計が459,000円を超える場合は、その超過分が給付金から差し引かれる形になります。
これらの上限・下限が組み合わさることで、特定の収入層に過度な給付が集中したり、逆に最低限の支援が得られなかったりすることを防ぎ、制度全体としてバランスの取れた支援が実現されます。
具体例で見てみましょう
給付金がどのように計算されるか、「給与水準が低い・標準・高い・高収入で不支給」という4つのパターンで確認します。
自社の時短勤務者がどのケースに近いかを念頭に置きながら読み進めてください。
また、ケース3では不支給となる基準額の逆算もあわせて解説します。
1. 育児休業前の月給が30万円で、育児時短勤務中の月給が約18.75万円の場合
- 元の所定労働時間
- 1日8時間
- 育児時短勤務後の所定労働時間
- 1日5時間(元の8分の5に短縮)
- 育児時短勤務中の月給
- 18.75万円(30万円 × 5/8)
- 「育児時短就業開始時賃金月額」(基準となる賃金)は18.75万円。これは基準賃金の上限・下限の範囲内(86,070円〜471,393円)なので、そのまま適用。
- 一時算出した給付額
- 18.75万円 × 10% = 1万8,750円
- 賃金と一時算出給付額の合計
- 18.75万円(賃金)+1万8,750円(一時算出給付額)=20万6,250円
- この合計額は支給限度額459,000円を下回っています。また、一時算出した給付額が給付金として支給される最低額(2,411円)を上回っているため、実際に支給される給付金
- 月に1万8,750円
2. 育児休業前の月給が50万円で、育児時短勤務中の月給が約37.5万円の場合
- 元の所定労働時間
- 1日8時間
- 育児時短勤務後の所定労働時間
- 1日6時間(元の8分の6に短縮)
- 育児時短勤務中の月給
- 約37.5万円(50万円 × 6/8)
- 「育児時短就業開始時賃金月額」(基準となる賃金)は37.5万円。これも基準賃金の上限・下限の範囲内なので、そのまま適用。
- 一時算出した給付額
- 37.5万円 × 10% = 3万7,500円
- 賃金と一時算出給付額の合計
- 37.5万円(賃金)+3万7,500円(一時算出給付額)=41万2,500円
- この合計額は支給限度額459,000円を下回っています。また、一時算出した給付額が給付金として支給される最低額(2,411円)を上回っているため、実際に支給される給付金
- 月に3万7,500円
3. 育児休業前の月給が80万円で、育児時短勤務中の月給が約70万円の場合(基準賃金の上限適用、かつ合計額で不支給となるケース)
- 元の所定労働時間
- 1日8時間
- 育児時短勤務後の所定労働時間
- 1日7時間(元の8分の7に短縮)
- 育児時短勤務中の月給
- 約70万円(80万円 × 7/8)
- 「育児時短就業開始時賃金月額」の上限適用
- 時短勤務中の賃金70万円は、基準賃金月額の上限471,393円を超えているため、給付金計算のベースは471,393円に調整されます。
- 一時算出した給付額
- 471,393円(調整後の基準賃金) × 10% = 4万7,139円
- 賃金と一時算出給付額の合計
- 70万円(賃金)+4万7,139円(一時算出給付額)=74万7,139円
- この合計額は、支給限度額459,000円を大幅に超えています。
- そのため、この場合、一時算出された給付額(47,139円)を加えると支給合計額(賃金+給付金)が支給限度額(459,000円)を大幅に超えてしまうため、給付金は支給されない(=不支給)という取り扱いになります。
- 【逆算】不支給になる基準額はいくらか
- 支給限度額459,000円から、基準賃金月額上限に10%を掛けた給付額上限47,139円を差し引くと、459,000円 - 47,139円 = 411,861円となります。
- つまり、時短勤務中の月給が411,861円を超える従業員は、原則として不支給になる可能性があります。
- 給与水準が高い従業員については、事前にこの基準額を確認した上で個別に試算しておくとよいでしょう。
4. 育児休業前の月給が10万円で、育児時短勤務中の月給が約5万円の場合(基準賃金の下限適用ケース)
- 元の所定労働時間
- 1日8時間
- 育児時短勤務後の所定労働時間
- 1日4時間(元の8分の4に短縮)
- 育児時短勤務中の月給
- 約5万円(10万円 × 4/8)
- 「育児時短就業開始時賃金月額」の下限適用
- 時短勤務中の賃金5万円は、基準賃金月額の下限86,070円を下回っているため、給付金計算のベースは86,070円に調整されます。
- 一時算出した給付額
- 86,070円(調整後の基準賃金) × 10% = 8,607円
- 賃金と一時算出給付額の合計
- 5万円(賃金)+8,607円(一時算出給付額)=5万8,607円
- この合計額は支給限度額459,000円を下回っています。また、一時算出した給付額が給付金として支給される最低額(2,411円)を上回っているため、実際に支給される給付金
- 月に8,607円
以上の4ケースを参考に、自社の時短勤務者が支給対象となるかどうかを事前に試算しておくことをおすすめします。
まとめ|育児時短就業給付金の支給要件と活用ポイント
本記事では、育児時短就業給付金の支給要件・計算式・給与水準別シミュレーションを解説しました。
総務担当者の方へ|今すぐできる3つの準備
- 社内の時短勤務者のうち、2歳未満の子を養育している従業員をリストアップする
- 現在の時短勤務中の賃金が、育児休業開始前と比較して何%減少しているかを確認する
- 月給が411,861円を超える従業員は不支給になる可能性があるため、個別に試算しておく
次回予告|育児時短就業給付金の申請フローと企業の活用ポイント
次回の記事では、【総務向け実践ガイド】「育児時短就業給付金」申請フローと企業が知るべき活用ポイントと題し、この給付金を実際に活用するための詳細な手続きや、企業が果たすべき役割、よくある疑問点などを徹底解説します。
ぜひ次の記事も参考に、貴社の育児支援体制強化にお役立てください。
次回の記事は👉2025年4月施行!育児時短就業給付金 徹底解説➁|申請フローと企業が知るべき活用ポイント【総務向け実践ガイド】
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- 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
- 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

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