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2025年・改正育児介護休業法【実務対応編】(24)男性育休の土台!2022年改正「分割取得」を2025年改正でさらに活かす方法 フローで解説

育児休業分割取得 2025年改正育児介護休業法
育児休業分割取得を有効活用しよう
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社会保険労務士 戸塚淳二

執筆者:社会保険労務士 戸塚淳二

法改正対応のスペシャリスト。戸塚淳二社会保険労務士事務所 代表として、多岐にわたる労働関連法規の解説から、実践的な労務管理、人事制度設計、助成金活用まで、企業の「ヒト」と「組織」に関する課題解決をサポートしています。本記事では、事業主の皆さまが安心して法改正に対応できるよう、専門家の視点から最新情報をお届けします。

社会保険労務士登録番号:第29240010号

男性育児休業(以下、育休)は、今や企業と従業員双方にとって、キャリアと育児を両立させるための重要な戦略です。

単に「男性も育休を取れる」という認識から一歩進んで、企業価値を高めながら、従業員がキャリアを諦めずに育児に積極的に参加できる環境をどう築くかが、現代のビジネスシーンでは不可欠となっています。

前回までの記事では、男性育休取得を推進する基本的な制度である「産後パパ育休(出生時育児休業)」や「パパ・ママ育休プラス」について解説しました。

前々回の記事は👉中小企業が男性育休を「当たり前」に!産後パパ育休活用術

前回の記事は👉中小企業向け「パパ・ママ育休プラス」徹底解説!男性育休を最長1歳2ヶ月に延ばす活用術

これらは男性が育児に関わるきっかけを作り、夫婦での育休期間を柔軟にする大切な土台となります。

今回の記事では、これらの制度と組み合わせることで育休をより柔軟にするための重要な要素、「分割取得」制度に焦点を当てます。

この「分割取得」の基本とその活用法を理解することが、これからの育休活用の鍵を握る「合わせ技」を使いこなすための第一歩となるでしょう。

中小企業の人事担当者の方々や、これから育休取得を検討されている従業員の方々にとって、この記事が実践的な育休活用の知見を得るための確かな一歩となることを目指します。

育児休業の「分割取得」の基本 男女ともに利用可能になった柔軟な制度

育児休業の制度は、時代の変化と共に、働く人々の子育てを支援するために進化を続けています。

その中でも、2022年10月の育児介護休業法改正によって導入された「分割取得」は、育休の利用に大きな柔軟性をもたらしました。

分割取得とは?

2022年10月の改正以前は、原則1回までとされていた育児休業が、性別を問わず、2回に分割して取得できるようになりました。

これは、従業員の多様な働き方や家庭の事情に合わせ、育休をより柔軟に活用することを可能にする画期的な変更です。

「分割取得」には、大きく分けて二つの制度が関係します。

通常の育児休業における分割取得

  • 原則として子が1歳になるまで(特定の条件を満たせば最長2歳まで延長可能)の育児休業を、2回に分けて取得できます。
  • 例えば、出産直後に一度取得し、その後、配偶者の職場復帰に合わせて二度目の育休を取得するといった使い方が考えられます。

産後パパ育休(出生時育児休業)における分割取得

  • 子の出生後8週間以内に最大4週間取得できる「産後パパ育休」も、2回に分割して取得できます。通常の育児休業と異なり、事前に申し出れば分割ごとの期間に制限がありません。
  • これにより、例えば出産直後に数日間、退院後さらに数日間といった、よりきめ細やかなサポートが可能になります。

分割取得のメリット・デメリット

「分割取得」は非常に便利な制度ですが、導入・活用にあたってはメリットとデメリットの両方を理解しておくことが重要です。

メリット

  • ライフイベントに合わせた柔軟な取得
    • 出産直後、配偶者の職場復帰、保育園入園、あるいは子どもの看病が必要な時期など、本当に手が必要なタイミングにピンポイントで育休を取得できます。
  • 段階的な職場復帰準備期間の確保
    • 一度育休を終えて職場に復帰し、その後必要に応じて再度育休を取得することで、従業員が無理なく段階的に仕事に慣れていく時間を確保できます。
  • 夫婦間での育児分担の最適化と協力体制の強化
    • 夫婦でそれぞれの育休を分割して取得することで、時期をずらして育児を分担したり、必要な時に協力し合ったりと、それぞれの家庭の事情に合わせた最適な育児体制を築くことができます。

デメリット

  • 各申請手続きが複数回必要となる手間
    • 育休を分割して取得する分、会社への申請や、育児休業給付金に関する手続きなどが複数回必要になります。
    • これは、従業員、そして企業の人事・総務部門双方にとって負担となる可能性があります。
  • 職場への影響を事前に考慮する必要がある点
    • 短期間であっても職場を離れることになり、その都度業務の引き継ぎや代替要員の調整が必要になります。
    • 事前に職場と綿密なすり合わせを行い、業務が円滑に進むよう計画を立てることが重要です。
  • 育児休業給付金の申請タイミング調整
    • 複数回の取得に伴い、給付金の申請タイミングも複数になるため、従業員・企業双方で適切な申請スケジュール管理が求められます。

具体的なケーススタディ(分割取得単体での活用)

「分割取得」のメリットをより具体的にイメージできるよう、いくつかの活用事例を見ていきましょう。

例1 妻の職場復帰をスムーズにする「バトンタッチ」ケース

このケースでは、夫婦が協力して育児休業を柔軟に活用し、スムーズな職場復帰と切れ目のない育児サポートを実現します。

妻が育休を一度分割して取得する期間を設けつつ、夫が育児のバトンを受け取る流れです。

【フロー】

育休取得のフロー例:妻の分割取得と夫へのバトンタッチを併用する場合】

    • 1回目の育休取得
    • 例:産後0ヶ月〜6ヶ月目まで産後休業終了後、育児休業を取得。
    • 育休取得(バトンタッチ1回目)
    • 例:妻の職場復帰と入れ替わる形で、産後7ヶ月目から2ヶ月間、夫が育児休業を取得。
    • 2回目の育休取得(分割取得)
    • 例:夫の育休が終わり、妻が職場復帰して2ヶ月経ち、子どもの慣らし保育で手がかかる産後9ヶ月目から1ヶ月間、妻が再度育児休業を取得。
    • 育休取得(バトンタッチ2回目)
    • 例:妻の2回目の育休終了後、残りの期間や子どもの成長段階に合わせて、夫が再度育児休業を取得。
【メリット】
  • 夫婦で協力体制を構築し、育児の負担を分担できる。
  • 育児と仕事の両立を柔軟に進められる。
  • 妻の職場復帰時のストレスが減り、家庭と職場のバランスを取りやすくなる。
  • 子どもの成長段階や家庭の状況に合わせて、きめ細やかな育児対応が可能になる。

例2 男性が重要な時期に寄り添う「節目サポート」ケース

出産直後の忙しい時期と、子どもが成長して次の段階へ進む重要な節目に、男性が育休を分割して取得するパターンです。

フロー】
    • 1回目の育休(産後パパ育休)
    • 例:出産直後の慌ただしい時期に、まず2週間の産後パパ育休を取得。
    • 一度職場に戻る
    • 例:その後、一度職場に戻り、通常業務を行う。
    • 2回目の育休(産後パパ育休の分割取得)
    • 例:妻の退院後や、育児で特に手が必要になる産後1ヶ月目に、再度2週間の産後パパ育休を取得。
    • 再び通常業務に戻る
    • 例:しばらく通常業務を行う。(この間、妻が育休を取得していることが多い)
    • 3回目の育休(通常の育児休業の1回目)
    • 例:妻の職場復帰に合わせて、産後8ヶ月目から1ヶ月間、通常の育児休業を取得。
    • 再度通常業務に戻る
    • 例:その後、一度職場に戻り、通常業務を行う。(この間、妻が2回目の育休を取得していることが多い)
    • 4回目の育休(通常の育児休業の2回目の分割取得)
    • 例:子どもが1歳になる直前、保育園の慣らし保育をサポートするため、産後11ヶ月目から1ヶ月間、再度通常の育児休業を取得。
【メリット】
  • 出産直後の最も手が必要な時期から、子どもの成長の節目、保育園入園まで、切れ目なく父親が育児に関与できる。
  • 保育園探し、入園準備、慣らし保育期間など、子どもの新たな環境への適応期に夫が寄り添い、家庭のサポート体制を強化できる。
  • 重要なライフステージに夫が関わることで、家族の絆を深める。

例3 夫婦で育休とその他休暇を組み合わせる「複合型」ケース

夫婦がそれぞれの育児休業(分割含む)と、必要に応じて子の看護休暇年次有給休暇などを組み合わせることで、子どもの成長段階や突発的なニーズに合わせた、よりきめ細やかな育児サポートを実現します。

【フロー】
    • 産後に育児休業を取得します。
    • 例:産後0ヶ月〜6ヶ月目まで
    • 出生後8週間以内に、産後パパ育休を短期間で分割取得します。
    • 例:妻の体調が不安定な時期に1週間、退院時に10日間など。
    • その後、通常の育児休業を分割取得します(最大2回)。
    • 例:妻の育休終了後、子が7ヶ月になる時期に1ヶ月間取得し、その後、子の1歳の誕生日前に再度1ヶ月間取得するなど。
    • 夫が職場復帰するタイミングで2回目の育児休業を取得します。
    • 例:子が8ヶ月になる時期から11ヶ月の時期
  1. 夫婦
    • 子どもの成長段階や体調不良など、育児休業ではカバーしにくい短期・突発的なニーズが発生した際に、子の看護休暇や年次有給休暇を柔軟に活用します。
    • 例:子が離乳食を開始する産後6ヶ月目(夫の育休中か妻の育休終了後)や、予防接種の時期、急な発熱時などに子の看護休暇や有給休暇を利用。
【メリット】
  • 夫婦で協力して育児負担を分散し、どちらか一方に負担が集中するのを防ぐ。
  • 子どもの成長の節目や、体調を崩しやすい時期など、必要な時に育児に専念できる(育児休業、子の看護休暇、有給休暇などを組み合わせる)。
  • 夫婦ともに自身のキャリアを継続しやすくなり、ワークライフバランスを向上させる。

まとめ 男性育休「分割取得」で柔軟な両立の第一歩を

2022年の改正で導入された「分割取得」制度を含む男性の育児休業は、2025年改正によるさらなる環境整備でより一層活用しやすくなります。

今回解説した「分割取得」制度は、男性社員がキャリアを中断することなく育児に参加するための強力な土台となります。

法律に明文化された企業の義務と努力義務を理解し、この柔軟な働き方を最大限に活かすことは、従業員にとってはもちろん、企業の人材確保・定着においても大きなメリットをもたらします。

この改正を機に、企業は短時間勤務制度やテレワークといった既存・新規の制度を適切に組み合わせ、社員一人ひとりが安心して仕事と育児を両立できる環境を整備していきましょう。これが、育児とキャリアを両立させる「合わせ技」戦略の確かな第一歩となるはずです。

次回予告

次回の記事では、今回解説した「分割取得」の知識を土台に、「産後パパ育休」や「パパ・ママ育休プラス」といった他の育休制度を戦略的に組み合わせる「最強の合わせ技」について、具体的なフローと実践的な活用術を深掘りしていきます。

次回の記事は👉2025年最新版 男性育休「分割取得」と複数制度の「合わせ技」で、キャリアも育児も諦めない!

どうぞご期待ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご相談の際は、以下よりお気軽にお問い合わせください。☟

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