
執筆者:社会保険労務士 戸塚淳二
法改正対応のスペシャリスト。戸塚淳二社会保険労務士事務所 代表として、多岐にわたる労働関連法規の解説から、実践的な労務管理、人事制度設計、助成金活用まで、企業の「ヒト」と「組織」に関する課題解決をサポートしています。本記事では、事業主の皆さまが安心して法改正に対応できるよう、専門家の視点から最新情報をお届けします。
社会保険労務士登録番号:第29240010号
なぜ今、男性育休の「合わせ技」が重要なのか?
男性育児休業(以下、育休)は、今や企業と従業員双方にとって、キャリアと育児を両立させるための戦略的な一手です。
単に「男性も育休を取れる」という認識から一歩進んで、「どうすれば企業価値を高めながら、従業員がキャリアを諦めずに育児に積極的に参加できるか」という視点が、現代のビジネスシーンでは不可欠となっています。
前回までの記事では、男性育休を推進するための基本的な制度である「産後パパ育休(出生時育児休業)」と「パパ・ママ育休プラス」について解説しました。
これらは男性が育児に関わるきっかけを作り、夫婦での育休期間を柔軟にする大切な土台です。
しかし、今、私たちが本当に注目すべきは、これらの単一の育休制度を個別に利用するだけではありません。
むしろ、複数の育休制度を賢く組み合わせる「合わせ技」こそが、これからの育休活用の鍵を握ります。
この「合わせ技」を使いこなすことで、企業と従業員双方にとって、より柔軟で、かつ効果的な育休の活用が可能になるのです。
「育休制度は複雑そう」というイメージを抱かれている中小企業の人事担当者の方や、これから育休取得を検討されている従業員の方々にとって、この記事が実践的な知見を得るための第一歩となることを目指します。
育児休業の「分割取得」の基本 男女ともに利用可能になった柔軟な制度
育児休業の制度は、時代の変化と共に、働く人々の子育てを支援するために進化を続けています。
その中でも、2022年10月の育児介護休業法改正によって導入された「分割取得」は、育休の利用に大きな柔軟性をもたらしました。
分割取得とは?
2022年10月の改正以前は、原則1回までとされていた育児休業が、性別を問わず、2回に分割して取得できるようになりました。
これは、従業員の多様な働き方や家庭の事情に合わせ、育休をより柔軟に活用することを可能にする画期的な変更です。
「分割取得」には、大きく分けて二つの制度が関係します。
通常の育児休業における分割取得
- 原則として子が1歳になるまで(特定の条件を満たせば最長2歳まで延長可能)の育児休業を、2回に分けて取得できます。
- 例えば、出産直後に一度取得し、その後、配偶者の職場復帰に合わせて二度目の育休を取得するといった使い方が考えられます。
産後パパ育休(出生時育児休業)における分割取得
- 子の出生後8週間以内に最大4週間取得できる「産後パパ育休」も、2回に分割して取得できます。通常の育児休業と異なり、事前に申し出れば分割ごとの期間に制限がありません。
- これにより、例えば出産直後に数日間、退院後さらに数日間といった、よりきめ細やかなサポートが可能になります。
分割取得のメリット・デメリット
「分割取得」は非常に便利な制度ですが、導入・活用にあたってはメリットとデメリットの両方を理解しておくことが重要です。
メリット
- ライフイベントに合わせた柔軟な取得
- 出産直後、配偶者の職場復帰、保育園入園、あるいは子どもの看病が必要な時期など、本当に手が必要なタイミングにピンポイントで育休を取得できます。
- 段階的な職場復帰準備期間の確保
- 一度育休を終えて職場に復帰し、その後必要に応じて再度育休を取得することで、従業員が無理なく段階的に仕事に慣れていく時間を確保できます。
- 夫婦間での育児分担の最適化と協力体制の強化
- 夫婦でそれぞれの育休を分割して取得することで、時期をずらして育児を分担したり、必要な時に協力し合ったりと、それぞれの家庭の事情に合わせた最適な育児体制を築くことができます。
デメリット
- 各申請手続きが複数回必要となる手間
- 育休を分割して取得する分、会社への申請や、育児休業給付金に関する手続きなどが複数回必要になります。
- これは、従業員、そして企業の人事・総務部門双方にとって負担となる可能性があります。
- 職場への影響を事前に考慮する必要がある点
- 短期間であっても職場を離れることになり、その都度業務の引き継ぎや代替要員の調整が必要になります。
- 事前に職場と綿密なすり合わせを行い、業務が円滑に進むよう計画を立てることが重要です。
- 育児休業給付金の申請タイミング調整
- 複数回の取得に伴い、給付金の申請タイミングも複数になるため、従業員・企業双方で適切な申請スケジュール管理が求められます。
具体的なケーススタディ(分割取得単体での活用)
「分割取得」のメリットをより具体的にイメージできるよう、いくつかの活用事例を見ていきましょう。
例1 妻の職場復帰をスムーズにする「バトンタッチ」ケース
このケースでは、夫婦が協力して育児休業を柔軟に活用し、スムーズな職場復帰と切れ目のない育児サポートを実現します。
妻が育休を一度分割して取得する期間を設けつつ、夫が育児のバトンを受け取る流れです。
【フロー】
育休取得のフロー例:妻の分割取得と夫へのバトンタッチを併用する場合】
- 妻
- 1回目の育休取得
- 例:産後0ヶ月〜6ヶ月目まで産後休業終了後、育児休業を取得。
- 夫
- 育休取得(バトンタッチ1回目)
- 例:妻の職場復帰と入れ替わる形で、産後7ヶ月目から2ヶ月間、夫が育児休業を取得。
- 妻
- 2回目の育休取得(分割取得)
- 例:夫の育休が終わり、妻が職場復帰して2ヶ月経ち、子どもの慣らし保育で手がかかる産後9ヶ月目から1ヶ月間、妻が再度育児休業を取得。
- 夫
- 育休取得(バトンタッチ2回目)
- 例:妻の2回目の育休終了後、残りの期間や子どもの成長段階に合わせて、夫が再度育児休業を取得。
【メリット】
- 夫婦で協力体制を構築し、育児の負担を分担できる。
- 育児と仕事の両立を柔軟に進められる。
- 妻の職場復帰時のストレスが減り、家庭と職場のバランスを取りやすくなる。
- 子どもの成長段階や家庭の状況に合わせて、きめ細やかな育児対応が可能になる。
例2 男性が重要な時期に寄り添う「節目サポート」ケース
出産直後の忙しい時期と、子どもが成長して次の段階へ進む重要な節目に、男性が育休を分割して取得するパターンです。
【フロー】
- 夫
- 1回目の育休(産後パパ育休)
- 例:出産直後の慌ただしい時期に、まず2週間の産後パパ育休を取得。
- 夫
- 一度職場に戻る
- 例:その後、一度職場に戻り、通常業務を行う。
- 夫
- 2回目の育休(産後パパ育休の分割取得)
- 例:妻の退院後や、育児で特に手が必要になる産後1ヶ月目に、再度2週間の産後パパ育休を取得。
- 夫
- 再び通常業務に戻る
- 例:しばらく通常業務を行う。(この間、妻が育休を取得していることが多い)
- 夫
- 3回目の育休(通常の育児休業の1回目)
- 例:妻の職場復帰に合わせて、産後8ヶ月目から1ヶ月間、通常の育児休業を取得。
- 夫
- 再度通常業務に戻る
- 例:その後、一度職場に戻り、通常業務を行う。(この間、妻が2回目の育休を取得していることが多い)
- 夫
- 4回目の育休(通常の育児休業の2回目の分割取得)
- 例:子どもが1歳になる直前、保育園の慣らし保育をサポートするため、産後11ヶ月目から1ヶ月間、再度通常の育児休業を取得。
【メリット】
- 出産直後の最も手が必要な時期から、子どもの成長の節目、保育園入園まで、切れ目なく父親が育児に関与できる。
- 保育園探し、入園準備、慣らし保育期間など、子どもの新たな環境への適応期に夫が寄り添い、家庭のサポート体制を強化できる。
- 重要なライフステージに夫が関わることで、家族の絆を深める。
例3 夫婦で育休とその他休暇を組み合わせる「複合型」ケース
夫婦がそれぞれの育児休業(分割含む)と、必要に応じて子の看護休暇や年次有給休暇などを組み合わせることで、子どもの成長段階や突発的なニーズに合わせた、よりきめ細やかな育児サポートを実現します。
【フロー】
- 妻
- 産後に育児休業を取得します。
- 例:産後0ヶ月〜6ヶ月目まで
- 夫
- 出生後8週間以内に、産後パパ育休を短期間で分割取得します。
- 例:妻の体調が不安定な時期に1週間、退院時に10日間など。
- 夫
- その後、通常の育児休業を分割取得します(最大2回)。
- 例:妻の育休終了後、子が7ヶ月になる時期に1ヶ月間取得し、その後、子の1歳の誕生日前に再度1ヶ月間取得するなど。
- 妻
- 夫が職場復帰するタイミングで2回目の育児休業を取得します。
- 例:子が8ヶ月になる時期から11ヶ月の時期
- 夫婦
- 子どもの成長段階や体調不良など、育児休業ではカバーしにくい短期・突発的なニーズが発生した際に、子の看護休暇や年次有給休暇を柔軟に活用します。
- 例:子が離乳食を開始する産後6ヶ月目(夫の育休中か妻の育休終了後)や、予防接種の時期、急な発熱時などに子の看護休暇や有給休暇を利用。
【メリット】
- 夫婦で協力して育児負担を分散し、どちらか一方に負担が集中するのを防ぐ。
- 子どもの成長の節目や、体調を崩しやすい時期など、必要な時に育児に専念できる(育児休業、子の看護休暇、有給休暇などを組み合わせる)。
- 夫婦ともに自身のキャリアを継続しやすくなり、ワークライフバランスを向上させる。
最強の「合わせ技」:3つの育休制度を組み合わせる具体的なフロー
前回までの記事で解説した育休制度(「産後パパ育休」「パパ・ママ育休プラス」)と、今回解説した「分割取得」を組み合わせることで、育休の活用はさらに柔軟かつ戦略的になります。
これこそが、私が推奨する「最強の合わせ技」です。
なぜ「合わせ技」が効果的なのか?
「合わせ技」が効果的な理由は、以下の通りです。
- 切れ目ない育児サポート
- 出生直後の手厚いケアから、保育園入園までのつなぎ、そして子どもが成長してからのきめ細やかな育児対応まで、家庭のニーズに合わせて切れ目なくサポートを提供できます。
- 経済的メリットの最大化
- 2025年4月からの育児休業給付金拡充(両親がともに一定期間育休を取得した場合の手取り10割相当の給付金)を最大限活用することで、育休中の経済的な不安を軽減する方法としても非常に有効です。
- この給付金制度の拡充については、別の機会に詳しく解説する予定です。
- 柔軟なキャリア形成
- 従業員が自身のキャリアプランや職場の状況に合わせて、最適なタイミングと期間で育休を取得できるようになり、仕事と育児の両立をより高い次元で実現できます。
- これにより、従業員のエンゲージメント向上や離職率の低下にも繋がります。
「合わせ技」の具体的なフローと事例
この「合わせ技」を成功させるためには、夫婦間での綿密な計画が鍵となります。
いつ、どちらが、どのくらいの期間育休を取得するか、各制度の適用条件(期間、申請タイミングなど)を理解し、計画に反映させる必要があります。
例1 出生直後と1歳以降に分けて取得する基本パターン(経済的メリットも考慮)
このパターンでは、男性が複数回の育休を取得することで、出生直後の新生児ケアと、保育園入園前の重要な時期の両方をサポートできます。
また、夫婦で育休を取得するため、2025年4月からの育児休業給付金の手取り10割相当の条件を満たしやすくなり、経済的なメリットも享受できます。
【フロー】
- 夫
- 出生後8週間以内に産後パパ育休を取得(必要に応じて分割活用)。
- 例:出産直後に2週間取得し、手取り10割相当の給付金も狙う。
- 妻
- 出産後から子が1歳になるまで育休を取得。
- 夫
- 妻の育休終了直前(子が1歳になる前)に、通常の育休を取得。
- 例:子が1歳になる1ヶ月前から育休開始。
- 夫と妻
- パパ・ママ育休プラスを活用し、夫の育休期間を子が1歳2ヶ月になるまで延長。
- 例:子が1歳2ヶ月まで夫が育休を取得し、保育園入園の準備期間を確保。
【メリット】
- 夫婦で育休を取得することで、2025年4月からの育児休業給付金の手取り10割相当の給付金を狙える。
- 出生直後の最も手厚いケアが必要な時期に男性が育児に参加できる。
- 保育園入園前の準備期間や、入園の遅れにも柔軟に対応できる。
- 育児の切れ目なく夫婦で連携し、子どもへのサポートを継続できる。
- 夫婦が役割を交代することで、育児負担が一方に集中するのを防ぐ。
例2 夫婦で育休制度をフル活用し、きめ細やかな育児とキャリアを両立する戦略パターン
このパターンは、夫が「産後パパ育休」を2回(合計4週間⦅28日⦆以内での分割取得)、そして夫と妻それぞれが「通常の育休」を2回(回数制限内で柔軟に分割) を最大限に活用し、新生児期から子どもの成長の節目まで、切れ目なく、かつ柔軟に育児に関わることを目指します。
【フロー】
- 夫
- 出生直後に産後パパ育休の1回目を取得します。
- 例:出産日から2週間(妻の体調サポートや新生児ケアに集中)。
- この間、妻は産後休業または育休を取得しているのが一般的です。
- 妻
- 産後休業後、通常の育休の1回目を取得します。
- 例:産後2ヶ月目から6ヶ月目まで(子との絆を深め、生活リズムを確立)。
- 夫
- 出生後8週間以内(妻の育休期間中)、産後パパ育休の2回目を取得します。
- 例:退院後や、妻の体調が思わしくない時期に1週間(ピンポイントでサポート)。
- 夫
- 妻が職場復帰するタイミングに合わせて、通常の育休の1回目を取得します。
- 例:妻が職場復帰する産後6ヶ月目から2ヶ月間(家庭内の育児バトンタッチ)。
- 妻
- 夫婦で育児を分担しつつ、必要に応じて通常の育休の2回目を取得します。
- 例:子が8ヶ月になる時期から3ヶ月間、離乳食の進捗に合わせて。
- 夫
- 子どもが1歳に近づき、保育園入園を検討する時期に、通常の育休の2回目を取得します。
- 例:子が11ヶ月目から1歳0ヶ月目まで(保育園準備や入園後の慣らし保育サポート)。
- パパ・ママ育休プラスを適用し、子が1歳2ヶ月になるまで育休期間を延長することも可能です。
【ポイント】
- 最大限の柔軟性
- 夫は「産後パパ育休」の2回(合計最大4週間⦅28日⦆以内)と「通常の育休」の2回(回数制限内で柔軟に分割)を取得出来ます。
- 妻は「通常の育休」の2回(回数制限内で柔軟に分割)を取得できます。
- そのため、新生児期から1歳以降まで、きめ細やかな育児サポートを連続的、または断続的に提供できます。
- 戦略的な育児分担
- 夫婦のキャリアプランや、子どもの成長段階(離乳食開始、はいはい、歩行など)に合わせて、育休の「山」を夫婦で計画的に分散・集中させることが可能です。
- 企業への影響分散
- 育休を細かく分割することで、一度に長期離脱する影響を軽減し、業務の引き継ぎや人員配置の調整を分散させやすくなります。
【留意点】
- 綿密な計画と企業への相談
- これほど複雑な育休取得を行うには、夫婦間での詳細な計画と、企業の人事・総務部門との密な連携が不可欠です。事前の意思疎通と情報共有を徹底しましょう。
- 各取得期間のルール厳守
- 通常の育休も2回まで分割可能であり、その取得回数に上限があることを理解しましょう。
- また、「産後パパ育休は出生後8週間以内に最大4週間(28日)まで取得できる」など、各制度の期間や回数のルールを正確に理解し、遵守しましょう。
- 給付金申請の手間
- 取得回数が多い分、育児休業給付金の申請手続きも複数回必要になります。企業の人事・総務部門と連携し、漏れなく手続きを進めることが重要です。
企業側が把握すべき実務上の注意点
複数の育休制度が絡み合う「合わせ技」は、企業側も実務上の注意点を把握し、適切に対応することで、従業員支援と業務円滑化を両立できます。
申請手続きの複雑化への対応
- 複数の制度が絡むため、従業員が申請手続きに戸惑う可能性があります。
- 企業は、複雑になりがちな申請フローを従業員に事前に周知し、人事・総務部門が丁寧にサポートする体制を構築しましょう。
- 分かりやすい申請ガイドやQ&Aを用意することも有効です。
育児休業給付金申請のサポート
- 育休中の従業員が経済的な不安なく育休を取得できるよう、育児休業給付金申請のサポート体制を整備しましょう。
- 必要書類のリストアップ、ハローワークとの連携を密に行い、手続きがスムーズに進むよう支援することが求められます。
休業中の業務体制の構築
- 育休中の業務運営を滞らせないため、計画的な人員配置と、代替要員の確保、業務引き継ぎの徹底が不可欠です。
- 業務の属人化を解消し、誰でも対応できるようなマニュアル作成や、多能工化を進めることも有効です。
- 「育児休業取扱通知書」の適切な交付と就業規則への明記
- 育休に関する規定を就業規則に明確に記載し、変更があれば速やかに更新しましょう。
- また、育休を取得する従業員には「育児休業取扱通知書」を適切に交付することで、育休期間や条件に関する双方の誤解を防ぎ、スムーズな運用に繋がります。
育児休業取扱通知書とは、従業員から育児休業(または産後パパ育休)の申し出があったときに、会社がその従業員に対し、育児休業に関する大切な情報を正式に伝えるための書類です。
これは、従業員が「いつからいつまで休めるの?」「休業中、お給料や社会保険はどうなるの?」「職場復帰後はどうなるの?」といった不安を解消し、安心して育児に専念できるようにするための、いわば「育休の利用ガイド」のようなものです。
この書類の交付は、ただの慣習ではなく、育児介護休業法で会社に義務付けられている重要な手続きです。これを怠ると、会社は法律に違反する可能性があります。
絶対に通知しなければならない内容(法律上の義務)
これは、育児介護休業法の施行規則で会社に通知が義務付けられている項目です。これらの事項を適切に書面で通知しない場合、会社は法律違反となります。
- 育児休業(または産後パパ育休)の申し出を受けたこと
- 従業員からの育休の申し出を会社が正式に受け付けた、という事実の通知です。
- 育児休業(または産後パパ育休)の開始予定日と終了予定日
- 従業員がいつから育休に入り、いつ職場に戻る予定なのかを明確に伝えます。
- もし育児休業の申し出を拒否する場合、その旨と理由
- (特別な事情があり、育休の申し出を拒否できる場合に限りますが)拒否する際は、その理由も具体的に通知する必要があります。
通知が推奨される内容(従業員の安心とトラブル防止のため)
これらは法律で通知が義務付けられているわけではありませんが、従業員が安心して育休を取得し、スムーズに職場復帰するために、会社が積極的に伝えるべき非常に重要な情報です。
これを通知しないことで、従業員との間で誤解が生じたり、不安を与えたりする可能性があります。
- 休業期間中の給与の取り扱い
- 育休中は基本的に給与は支払われないこと、または会社から独自の手当がある場合はその旨を明確に伝えます。
- 社会保険料の取り扱い
- 育休中は社会保険料(健康保険、厚生年金保険)が従業員負担分・会社負担分ともに免除されることなどを説明します。
- 育児休業給付金について
- 育児休業給付金の申請手続きや、給付金を受け取れる可能性があることなどを案内し、従業員が経済的な不安なく育休を過ごせるようサポートします。
- 休業中の連絡方法や連絡の頻度
- 休業中に会社から連絡が必要な場合(例:重要な業務連絡、社内制度変更の通知など)の連絡方法や、従業員から会社への連絡方法を定めておくと、双方にとって安心です。
- 職場復帰後の労働条件(配属先、業務内容、勤務時間、給与など)
- 育休後、従業員が安心して復帰できるよう、復帰後の部署、業務内容、給与や勤務時間などがどうなるのか、可能な範囲で具体的に伝えます。
- 育児のための短時間勤務制度など、関連制度の案内
- 育休後も利用できる短時間勤務制度や子の看護休暇など、育児支援のための社内制度を合わせて案内することで、従業員は復帰後の働き方を具体的にイメージしやすくなります。
これらの情報を通知書に含めることで、会社は法律上の義務を果たすだけでなく、従業員に対する配慮を示し、結果的に従業員の満足度向上や離職防止にも繋がります。
育休の「合わせ技」で、企業も従業員も未来をデザインしよう
今回の記事では、男性育休の「分割取得」の柔軟な活用方法から、複数の育休制度を組み合わせる「合わせ技」の具体的なフローまでを解説しました。
育休制度は複雑に見えるかもしれませんが、その本質は、働く皆さんが安心して子育てとキャリアを両立できるようにするための強力なツールです。
「分割取得」によって、従業員は必要なタイミングで柔軟に育児に参加できるようになり、企業は業務への影響を分散させやすくなります。
さらに、「合わせ技」を駆使することで、出生直後の大切な時期から、子どもの成長の節目まで、切れ目のない育児サポートを実現できるでしょう。
これは、従業員の満足度向上や定着に繋がり、ひいては企業の持続的な成長を後押しします。
制度を最大限に活用するには、夫婦間での綿密な計画と、企業の人事・総務部門との密な連携が不可欠です。
本記事で解説したフローや事例が、皆さんの育休プランニングや社内制度設計の一助となれば幸いです。
水町詳解労働法 第3版 公式読本 単行本 – 2024/6/16
水町 勇一郎 (著)
この本は、『詳解 労働法〔第3版〕』をテキストとした全16回のセミナー(2023年11月から2024年3月に日本法令にて開催)で、毎回参加者から提起された質問にその場で答えたものを原稿化し、Q&Aにまとめたものであります。非常に参考になります。👉Amazonより
次回予告
次回は、今回の記事でご紹介した男性育休の「合わせ技」を実際に活用する際に、企業側と従業員側がそれぞれどのような手続きを行い、どんな書類を準備する必要があるのかを、時系列で詳しく解説します。
複雑に思われがちな育休の申請プロセスなど、実践的な側面からスムーズな運用をサポートする情報をお届けする予定です。
中小企業の人事担当者の方も、育休取得を検討中の従業員の方も、ぜひ次回の記事を参考にしてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご相談の際は、以下よりお気軽にお問い合わせください。☟
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