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2025年・改正育児介護休業法【実務対応編】(27)男性育休「合わせ技」徹底ガイド【第2回】育児休業給付金の申請手続きを徹底解説!【企業・従業員向け】

育児休業給付金の支給申請フロー 2025年改正育児介護休業法
育児休業給付金の支給申請フローをしっかり押さえましょう
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社会保険労務士 戸塚淳二

執筆者:社会保険労務士 戸塚淳二

法改正対応のスペシャリスト。戸塚淳二社会保険労務士事務所 代表として、多岐にわたる労働関連法規の解説から、実践的な労務管理、人事制度設計、助成金活用まで、企業の「ヒト」と「組織」に関する課題解決をサポートしています。本記事では、事業主の皆さまが安心して法改正に対応できるよう、専門家の視点から最新情報をお届けします。

社会保険労務士登録番号:第29240010号

この「2025年改正育児介護休業法」シリーズでは、ここ数回にわたって、男性育休の柔軟な取得を可能にする「合わせ技」戦略に焦点を当てています。

前回の【第1回】では、育休取得の検討から会社への正式な申出までの初期ステップを解説しました。

綿密な事前準備と会社への早期相談がいかに重要か、再確認できたことと思います。

さて、育休取得の意向が固まり、会社への申出も済ませた段階で、多くの方が気になるのは「育休中のお金はどうなるの?」という経済的な側面ではないでしょうか。

【第2回】となる今回は、まさにその疑問にお答えします。

育休取得中の経済的な側面、特に「育児休業給付金」の申請手続きとその具体的なフローについて、企業側と従業員側の双方の視点から、詳細かつ時系列で解説していきます。

育休中の生活の不安を解消し、スムーズな経済的支援を受けるための実践的な情報をお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。

育児休業給付金の申請手続き 休業中の経済的サポート

育児休業給付金は、育児休業期間中の家計を支える重要な制度です。

雇用保険から支給されるもので、育休中の生活費の心配を軽減してくれます。

育児休業給付金の概要

この給付金は、雇用保険の被保険者で、育児休業開始前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あることなどが支給要件となります。

  • 支給期間
    • 原則として子どもが1歳になるまで(保育園に入れないなど特定の事情がある場合は最長2歳まで延長可能)。
  • 支給額の算出方法
    • 休業開始時賃金日額に基づき、休業開始から180日間は賃金の約67%、それ以降は約50%が支給されます。
  • 「合わせ技」での分割取得の場合も給付金は支給されます。 各育休期間について、定められた申請手続きをきちんと行えば問題ありません。

【従業員側】申請に必要な情報の準備と会社を通じての申請

育児休業給付金の申請は、原則として会社がハローワークに対して行います

従業員自身が直接ハローワークに出向く必要はほとんどありません。

  • 申請に必要な情報の準備
    • 会社から給付金申請のために必要な情報の提供を求められる場合があります。
    • 例えば、振込口座の通帳の写しなどが個人で準備を求められる主な書類です。
    • 会社からの指示があった際は、速やかに正確な情報を提供するよう心がけましょう。
  • 会社が用意した申請書への記入と提出
    • 会社が用意してくれる「育児休業給付金支給申請書」に、必要な事項を記入し、会社から指示された期日までに提出します。
    • 記入漏れや誤りがないか、提出前にはしっかり確認してください。

【企業側】申請書類の作成とハローワークへの提出

企業は従業員からの情報をもとに、ハローワークへの申請手続きを進めます。

  • 申請書類の作成とハローワークへの提出
    • 従業員が育児休業を開始した後、給付金申請に必要な書類を作成します。
    • 具体的には「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」などを事業主が作成し、従業員から提出された申請書や必要書類(賃金台帳の写し、出勤簿の写し、住民票記載事項証明書など)とともに、管轄のハローワークへ提出します。
      • 初回申請
        • 育休開始から4ヶ月以内に行う必要があります。
      • 2回目以降
        • 原則として2ヶ月ごとに支給申請を行います。
  • 「合わせ技」で分割取得の場合の申請
    • 「合わせ技」で育休を分割取得した場合も、それぞれの育休期間について給付金の申請を行う必要があります。
    • 期間ごとに申請期限や手続きが必要になるため、計画的に対応しましょう。
  • 従業員への給付金に関する情報提供
    • 給付金の支給はハローワークから従業員の口座へ直接振り込まれるため、企業は給付金支給の進捗状況や、おおよその支給日などについて、従業員に適切に情報共有を行うと、従業員は安心して過ごせるでしょう。

【事例で解説】夫婦で「パパママ育休プラス」利用時の給付金申請フロー

ここでは、女性従業員が2025年7月10日に出産し、夫婦で「パパママ育休プラス」を活用して育児休業を取得する場合の、育児休業給付金申請の具体的な流れを見ていきましょう。

登場人物

  • 妻Aさん
    • 2025年7月10日出産。産後休業を経て育児休業を取得予定。
  • 夫Bさん
    • 「産後パパ育休」と「パパママ育休プラス」を利用して育休を取得予定。

妻Aさんの出産・産後休業・育児休業期間

  • 出産日
    • 2025年7月10日
  • Aさんの産後休業期間
    • 2025年7月11日 〜 2025年9月7日(出産日の翌日から8週間=56日間)
      • ポイント: 産後休業中は健康保険からの出産手当金が支給され、育児休業給付金とは別の制度です。
  • Aさんの育児休業開始予定日
    • 2025年9月8日(産後休業明けの翌日)
  • Aさんの育児休業終了予定日
    • 2026年7月9日(子が1歳になる前日まで)

夫Bさんの「パパママ育休プラス」による育児休業取得期間

  • 育休期間①(産後パパ育休)
    • 2025年7月10日 〜 2025年7月16日(出生日を含む7日間)
    • 2025年7月25日 〜 2025年8月8日(15日間)
  • 育休期間②(通常の育児休業 / パパママ育休プラス適用)
    • 2026年7月10日 〜 2026年9月9日(子が1歳から1歳2ヶ月になる前日まで)
      • ポイント: Aさんが子が1歳になるまで育休を取得しているため、Bさんは「パパママ育休プラス」の適用により、子が1歳2ヶ月になる前日まで育休を取得できます。

妻Aさんの育児休業給付金 申請フロー

夫婦それぞれが育児休業の要件を満たしていれば、夫Bさんが給付金を受け取っていても、妻Aさんが給付金をもらえないことはありません。

ステップ1 Aさんの育児休業給付金申請(初回)

  1. 育休期間
    • 2025年9月8日 〜 2026年7月9日
  2. 給付対象期間
    • 2025年9月8日 〜 2025年11月7日(育休開始から最初の2ヶ月間)
      • ポイント: 育児休業給付金は、基本的に2ヶ月単位で支給されます。
  3. 会社から従業員(Aさん)への「育児休業給付金支給申請書」配布・指示
    • 時期
      • Aさんの育休開始後、この給付対象期間(2025年9月8日〜11月7日)が終了し、内容が確定する頃(例: 2025年10月下旬〜11月上旬頃)。
      • これは、正確な支給額算出に必要な情報が確定するためです。
  4. 従業員(Aさん)から会社へ必要書類提出
    • 期限
      • 会社指定の期日(例: 2025年11月中旬頃まで)
    • 提出物
      • 記入済みの育児休業給付金支給申請書
      • 振込口座の通帳の写し
      • 母子手帳の写しなど(会社によって初回申請時に確認)
  5. 会社からハローワークへの給付金申請(初回)
    • 申請期限
      • 育休開始日の翌日から4ヶ月以内
    • つまり、Aさんの育休開始日(2025年9月8日)から遅くとも2026年1月8日までに、会社がハローワークへ初回申請を提出します。
  6. 給付金の支給(初回)
    • ハローワークでの審査後、通常、申請から1〜2ヶ月程度でAさんの指定口座に給付金が振り込まれます。(例: 2025年12月下旬〜2026年2月上旬頃)

ステップ2 Aさんの育児休業給付金申請(2回目以降)

育児休業が続く限り、原則として2ヶ月ごとに申請と支給が繰り返されます。

1:給付対象期間 2025年11月8日 〜 2026年1月7日
  • 会社からの申請書配布・指示
    • この給付対象期間(2025年11月8日〜2026年1月7日)が終了し、内容が確定する頃(例: 2026年1月上旬頃)。
  • 従業員から会社への提出
    • 2026年1月下旬頃
  • 会社からハローワークへの申請
    • 2026年2月上旬頃(前回の支給対象期間の末日の翌日⦅2026年1月7日の翌日⦆から2ヶ月以内、つまり遅くとも2026年3月7日が期限)
  • 給付金の支給: 2026年3月上旬〜下旬頃
2:給付対象期間 2026年1月8日 〜 2026年3月7日
  • 会社からの申請書配布・指示
    • この給付対象期間が終了し、内容が確定する頃(例: 2026年3月上旬頃)
  • 従業員から会社への提出
    • 2026年3月下旬頃
  • 会社からハローワークへの申請
    • 2026年4月上旬頃(前回の支給対象期間の末日の翌日⦅2026年3月7日の翌日⦆から2ヶ月以内、つまり遅くとも2026年5月7日が期限)
  • 給付金の支給
    • 2026年5月上旬〜下旬頃
3:給付対象期間 2026年3月8日 〜 2026年5月7日
  • 会社からの申請書配布・指示
    • この給付対象期間が終了し、内容が確定する頃(例: 2026年5月上旬頃)
  • 従業員から会社への提出
    • 2026年5月下旬頃
  • 会社からハローワークへの申請
    • 2026年6月上旬頃(前回の支給対象期間の末日の翌日⦅2026年5月7日の翌日⦆から2ヶ月以内、つまり遅くとも2026年7月7日が期限)
  • 給付金の支給
    • 2026年7月上旬〜下旬頃
4:給付対象期間 2026年5月8日 〜 2026年7月9日(Aさんの育休終了日まで)
  • 会社からの申請書配布・指示
    • この給付対象期間が終了し、内容が確定する頃(例: 2026年7月上旬頃)
  • 従業員から会社への提出
    • 2026年7月下旬頃
  • 会社からハローワークへの申請
    • 2026年8月上旬頃(前回の支給対象期間の末日の翌日⦅2026年7月9日の翌日⦆から2ヶ月以内、つまり遅くとも2026年9月9日が期限)
  • 給付金の支給
    • 2026年9月上旬〜下旬頃

夫Bさんの育児休業給付金 申請フロー(パパママ育休プラス利用時)

夫Bさんの育休期間が「パパママ育休プラス」により、子が1歳2ヶ月となる前日まで延長される点が主なポイントです。

ステップ1 育休期間①(産後パパ育休)の給付金申請

重要ポイント

出生時育児休業給付金(産後パパ育休の給付金)は、子の出生後8週間以内に「通算14日以上」育児休業を取得していないと支給されません。

これに満たない場合、残念ながら給付金は受け取ることができませんのでご注意ください。

育休期間①(7日間)の取得
  1. 育休期間
    • 2025年7月10日 〜 2025年7月16日(7日間)
      • ポイント
        • この時点ではまだ「通算14日以上」の要件を満たしていません。
        • そのため、この期間だけで単独申請はせず、次の育休期間と合わせて申請準備を進めます。
育休期間②(15日間)の取得
  1. 育休期間
    • 2025年7月25日 〜 2025年8月8日(15日間)
      • ポイント
        • この期間の取得完了により、産後パパ育休の合計取得日数が22日間となり、給付金支給の「通算14日以上」という要件を確実に満たします。
両期間を合わせた給付金申請

2回の育休期間が終了した後、これらの期間分の給付金をまとめて申請します。

  1. 給付対象期間
    • 2025年7月10日 〜 2025年7月16日 および 2025年7月25日 〜 2025年8月8日(合計22日間)
      • ポイント
        • 給付金は、これら合計22日間分がまとめて支給されます。
  2. 会社から従業員への「出生時育児休業給付金支給申請書」配布・指示
    • 育休期間②が終了し、全ての給付対象期間の内容が確定する頃(例: 2025年8月中旬頃)。
    • 給付金の支給額算出に必要な情報が確定するため、この時期に申請準備が始まります。
  3. 従業員(夫Bさん)から会社へ必要書類提出
    • 期限
      • 会社指定の期日(例: 2025年8月下旬頃まで)
    • 提出物
      • 記入済みの出生時育児休業給付金支給申請書、振込口座の通帳の写し など
  4. 会社からハローワークへの給付金申請(初回申請)
    • 申請期限
      • 産後パパ育休の初回開始日(2025年7月10日)の翌日から4ヶ月以内
      • つまり、遅くとも2025年11月10までに、会社がハローワークへ申請を提出します。
  5. 給付金の支給
    • ハローワークでの審査後、通常、申請から1〜2ヶ月程度で夫Bさんの指定口座に給付金が振り込まれます。(例: 2025年9月下旬〜11月上旬頃)

ステップ2 育休期間②(通常の育児休業 / パパママ育休プラス適用)の給付金申請

この期間は、夫Bさんにとって独立した新たな育児休業期間となるため、給付金申請上も「初回申請」として扱われます。

  1. 育休期間
    • 2026年7月10日 〜 2026年9月9日
  2. 給付対象期間
    • 2026年7月10日 〜 2026年9月9日(この2ヶ月間分)
      • ポイント
        • 育児休業給付金は、基本的に2ヶ月単位で支給されます。
        • この「パパママ育休プラス」によって延長された期間も、給付金の支給対象です。
  3. 会社から従業員への「育児休業給付金支給申請書」配布・指示
    • 育休開始後、この給付対象期間(2026年7月10日〜9月9日)が終了し、内容が確定する頃(例: 2026年9月中旬〜下旬頃)。
  4. 従業員(夫Bさん)から会社へ必要書類提出
    • 会社指定の期日(例: 2026年10月上旬頃まで)
    • 提出物
      • 記入済みの育児休業給付金支給申請書
      • 振込口座の通帳の写し など
      • パパママ育休プラスの適用を示す情報
        • 夫婦の育休取得状況が分かる情報(例:妻Aさんの育休期間を示す書類の写しなど)を会社に提供します。
  5. 会社からハローワークへの給付金申請(初回申請)
    • 育休期間②の開始日(2026年7月10日)の翌日から4ヶ月以内
    • つまり、遅くとも2026年11月10日までに、会社がハローワークへ申請を提出します。
  6. 給付金の支給
    • ハローワークでの審査後、通常、申請から1〜2ヶ月程度で夫Bさんの指定口座に給付金が振り込まれます。(例: 2026年10月下旬〜12月上旬頃)

フローの共通ポイント

  • 「通算14日以上」の要件
    • 出生時育児休業給付金は、子の出生後8週間以内に通算14日以上の休業が必要です。これに満たない場合は給付金は支給されません。
  • 申請は原則会社経由
    • 従業員は会社に必要書類を提出し、会社がまとめてハローワークへ申請を行います。
  • 申請期限の厳守
    • 出生時育児休業給付金の申請は、最初に取得した育休の開始日を起算日として4ヶ月以内が期限です。
    • 分割取得で後からまとめて申請する場合も、この期限を過ぎないように注意が必要です。
  • 給付対象期間の確定後
    • 申請書配布や会社からの申請は、給付対象となる期間が終了し、その間の状況(出勤の有無など)が確定した後に開始されます。
  • 支給時期
    • 給付金の支給は、ハローワークでの審査があるため、申請から実際に振り込まれるまでには通常1〜2ヶ月程度の時間がかかります。

まとめと次回予告

今回の【第2回】では、育児休業中の経済的なサポート、特に「育児休業給付金」の申請手続きと、企業・従業員双方の視点からの具体的なフローについて解説しました。

  • 育児休業給付金は、休業中の家計を支える重要な制度であり、雇用保険から支給されます。
  • 「合わせ技」で育休を分割取得した場合も給付金は支給されますが、特に産後パパ育休(出生時育児休業給付金)については、「通算14日以上の取得」が支給要件となるため、取得期間と申請タイミングを計画的に考える必要があります。
  • 申請は原則として会社を通じてハローワークに行い、初回申請は育休開始日の翌日から4ヶ月以内、2回目以降の申請は原則として2ヶ月ごと(ただし産後パパ育休はまとめて1回が一般的)という期限を守ることが重要です。
  • 支給までには1〜2ヶ月程度の時間を要するため、事前の情報収集と準備が、育休中の経済的不安を解消する鍵となります。

これで、育休中の「お金の心配」が少しでも和らぎ、安心して育児に専念できる道筋が見えたのではないでしょうか。

次回予告

【第3回】では、育休中の経済的サポートのもう一つの大きな柱である「社会保険料の免除」について、その仕組みと注意点を詳しく解説します。育休中の負担をさらに軽減するための重要な情報ですので、ぜひご期待ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご相談の際は、以下よりお気軽にお問い合わせください。☟

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