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介護離職を防ぐ!中小企業向け「介護離職防止支援コース」助成金の制度概要と基礎知識

両立支援等助成金|介護離職防止支援コース 2025年改正育児介護休業法
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本記事は「2025年改正育児介護休業法シリーズ」の第47弾です。他のシリーズの記事はコチラから👉2025年育児介護休業法改正|企業がすべき対応と助成金情報

前回までの「両立支援等助成金制度」に関する記事においては、主に「育児」に関する助成金を解説してきました。

しかしながら、従業員の「仕事と家庭の両立」に関する課題は「育児」だけではありません。

超高齢社会を迎えた今、次に企業が直面する重要な課題は「介護」です。

家族の介護のために、仕事を辞めざるを得ない「介護離職」は、従業員本人だけでなく、企業にとっても貴重な人材を失う深刻な問題となっています。

しかし、この課題を解決するために国が企業を支援する助成金があります。それが、今回ご紹介する「介護離職防止支援コース」です。

この助成金を活用することで、企業は従業員が安心して働き続けられる環境を整え、人材流出を防ぐことができるのです。

この記事で分かること

  • 介護離職が「個人の問題」ではなく「企業の経営リスク」である理由
  • 介護離職防止支援コースの対象となる事業主の範囲(中小企業限定)
  • 「介護休業」「介護両立支援制度」「業務代替支援」「介護休暇制度有給化支援」4つの支給区分の内容
  • 各区分の具体的な支給額と支給条件(令和8年度版)
  • 申請に必須となる「介護支援プラン」の策定と就業規則整備のポイント
  • 令和8年度に新設された「介護休暇制度有給化支援」の概要

介護離職防止支援コースとは?企業が従業員の介護と仕事の両立を支援する方法

介護離職防止支援コースは、従業員が仕事と介護を両立できるよう企業が環境を整備し、その結果、介護を理由とした離職を防ぐことを目的とした助成金です。

この助成金は、介護休業や仕事と介護の両立支援制度などを整え、従業員がスムーズに制度を利用できるような支援を行う事業主を対象としています。

ここで注意していただきたいのは、介護離職防止支援コースは中小企業事業主のみを対象とした助成金だという点です。

両立支援等助成金には、出生時両立支援コースのように常時雇用労働者300人以下の企業全体(特定事業主)まで対象が広がっているコースもありますが、介護離職防止支援コースは令和8年度時点でも中小企業限定の制度であり、大企業は支給対象になりません。

両立支援等助成金における「中小企業」の区分基準

業種資本金の額または出資の総額常時雇用する労働者数
小売業(飲食店を含む)5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他(製造業、建設業、運輸業など上記以外全て)3億円以下300人以下
補足事項
  • 「常時雇用する労働者数」とは、2か月を超えて雇用される者であり、かつ、週当たりの所定労働時間が、その事業主に雇用される通常の労働者と概ね同等(概ね40時間)である者を指します。パートタイマーやアルバイトであっても、上記の要件を満たせば「常時雇用する労働者」に含められます。
  • 資本金がない場合(一般社団法人、NPO法人)は、常時雇用する労働者数のみで判断されます。
  • ご自身の会社が上記の「中小企業」の定義に当てはまらない場合、自動的に「大企業」として扱われ、介護離職防止支援コースの対象外となります。
  • いわゆる「みなし大企業」(中小企業の条件を満たしていても、実質的に大企業の子会社や関連会社である場合)の扱いについては、助成金の種類や詳細な状況によって判断が異なる場合がありますので、具体的な申請時には管轄の労働局や専門家にご確認いただくのが確実です。

介護離職防止支援コース|4つの支給区分と受給のポイント

この助成金には、企業の取り組みに応じて4つの区分が用意されています(令和8年度から1区分が新設され、3区分から4区分になりました)。

①介護休業|休業の取得と職場復帰を支援

「介護支援プラン(仕事と介護の両立支援プラン)」を策定し、プランに基づいて対象労働者が連続5日以上の介護休業を取得し、原職等に復帰した場合に支給されます。

なお、令和6年度までは「休業取得時」と「職場復帰時」の2段階に分けて支給されていましたが、令和7年度の制度見直しにより、職場復帰後にまとめて1回で支給される形に簡素化されています。

②介護両立支援制度|柔軟な勤務制度の利用を支援

短時間勤務やテレワークなど、仕事と介護を両立しやすくする制度を導入し、対象労働者が利用した場合に支給されます(対象制度・支給額の詳細は後述)。

③業務代替支援|休業者の業務をカバーする体制を支援

従業員が介護休業を取得したり短時間勤務をしたりする際、その期間中の業務をカバーする体制(代替要員の新規雇用、または既存従業員への手当支給による対応)を整備した場合に支給されます。

これにより、従業員が介護に専念している間も、企業は業務を円滑に継続できます。

④介護休暇制度有給化支援|令和8年度新設

法定の介護休暇に加えて、有給の介護休暇制度を整備した場合に支給される、令和8年度に新設された区分です(詳細は後述)。

介護休業のような長期離脱だけでなく、通院の付き添いなど短時間の介護対応もカバーできる点が特徴です。

介護離職防止支援コースの具体的な助成金額と支給条件

令和8年度における各区分の支給条件と助成金額は、以下の通りです。

1. 介護休業

介護支援プランを策定し、プランに基づいて対象労働者が介護休業を取得・原職等に復帰した場合に助成金が支給されます。

  • 連続5日以上の介護休業を取得し、復帰した場合:40万円
  • 連続15日以上の介護休業を取得し、復帰した場合:60万円

2. 介護両立支援制度

短時間勤務、テレワーク、法を上回る介護休暇、介護のためのフレックスタイム制度、介護サービス費用補助制度など、仕事と介護を両立しやすくする制度を導入し、対象労働者が利用した場合に助成金が支給されます。

  • 制度を1つ導入し、対象者が合計20日以上利用:20万円
  • 制度を1つ導入し、対象者が合計60日以上利用:30万円
  • 制度を2つ以上導入し、対象者が合計20日以上利用:25万円
  • 制度を2つ以上導入し、対象者が合計60日以上利用:40万円

令和8年度から、対象制度メニューのうち「所定外労働の制限制度」と「深夜業の制限制度」は対象外となっています。

3. 業務代替支援

介護休業や短時間勤務を行う労働者の業務をカバーする体制を整備した場合に助成金が支給されます。

  • 新規雇用により代替要員を確保(介護休業が連続5日以上15日未満):20万円
  • 新規雇用により代替要員を確保(介護休業が連続15日以上):30万円
  • 既存従業員へ手当を支給(介護休業の代替、15日未満):5万円
  • 既存従業員へ手当を支給(介護休業の代替、15日以上):10万円
  • 既存従業員へ手当を支給(短時間勤務の代替、15日以上利用の場合のみ):3万円

4. 介護休暇制度有給化支援(令和8年度新設)

法定の介護休暇に加えて、有給の介護休暇制度を就業規則等に規定し、労働者に利用させた場合に支給される、令和8年度に新設された区分です。

  • 有給の介護休暇制度を導入し、労働者が利用:30万円
  • 年10日以上の有給休暇を付与する制度を導入し、労働者が利用:50万円

支給は1事業主につき1回限りです。

加算措置

  • 「雇用環境整備加算」:1.介護休業、2.介護両立支援制度、3.業務代替支援について、研修の実施や相談窓口の設置などの雇用環境整備を行った場合に10万円が加算されます(1事業主1回限り)。
  • 「有期雇用労働者加算」:1.介護休業または2.介護両立支援制度の対象労働者が有期雇用労働者である場合に10万円が加算されます。
  • 支給される人数の上限
    • 1.介護休業、2.介護両立支援制度、3.業務代替支援は、それぞれ1事業主あたり5人まで支給対象となります。
    • 4.介護休暇制度有給化支援は、1事業主1回限りの支給です。

介護離職防止支援コース|助成金申請の重要ポイントと注意点

「介護離職防止支援コース」の概要と支給額を理解したら、いよいよ申請に向けた準備に入りましょう。

助成金を確実に受け取るためには、手続きの流れを把握し、必要な書類を正確に揃えることが何よりも重要です。

介護離職防止支援コースの助成金申請フロー

申請は、大きく分けて4つのステップで進みます。

この流れを事前に把握しておけば、スムーズに手続きを進めることができます。

  1. 就業規則等の整備
    • 介護休業、介護両立支援制度、介護休暇制度有給化支援などについて、就業規則や育児・介護休業規程に明確に規定し、社内に周知します。
  2. 面談と介護支援プランの作成
    • 家族の介護に直面した労働者と面談を実施し、その結果を記録した上で、対象労働者ごとに介護支援プラン(仕事と介護の両立支援プラン)を作成します。
    • このプランは社内文書であり、労働局へ事前に提出する義務はありません。
    • プランは原則として、介護休業や制度利用の開始前に作成する必要があります。
  3. 制度の実施
    • プランに基づいて業務の引き継ぎを行い、実際に介護休業の取得、介護両立支援制度の利用、業務代替体制の整備、介護休暇の有給化などを実施します。
  4. 支給申請
    • 制度の実施後、必要な書類を揃えて労働局に支給申請を行います。

介護離職防止支援コース|申請時に用意すべき主な必要書類

申請する区分(介護休業・介護両立支援制度・業務代替支援・介護休暇制度有給化支援)によって必要な書類が異なります。以下に主な書類をリストアップしました。

  • 介護支援プラン(仕事と介護の両立支援プラン)
    • 従業員の介護休業取得・職場復帰や、介護両立支援制度の利用を円滑にするための具体的な計画書。
  • 就業規則・育児介護休業規程
    • 介護休業や介護両立支援制度、介護休暇制度有給化支援に関する規定が記載されているもの。
  • 賃金台帳・出勤簿
    • 従業員の賃金や勤務時間を証明する書類。
  • 雇用契約書
    • 業務代替のために新規雇用した従業員の雇用契約書など。
  • 面談記録
    • 介護休業や介護両立支援制度の利用開始前に実施した面談の記録です。介護支援プランの一部として作成されることもあります。
  • 対象労働者の家族が要介護状態であることを確認できる書類
    • 医師の証明や要介護認定通知など。

これらの書類を漏れなく揃え、いつでも提示できるようにしておくことが大切です。

申請時に特に注意すべき3つのポイント

  1. 就業規則の明確な規定
    • 助成金の支給要件として、就業規則に介護休業や介護両立支援制度、介護休暇制度有給化支援に関する規定が明確に盛り込まれていることが必須です。
    • 規定が不十分な場合、申請が認められない可能性があるため、事前に必ず確認・整備しておきましょう。
  2. 証明できる「事実」の確保
    • 助成金は、単に制度があるだけでなく、「労働者が実際に介護休業を取得した、あるいは制度を利用した」という事実に基づいて支給されます。
    • 面談記録や業務代替の記録など、申請内容を客観的に証明できる資料をきちんと保管しておく必要があります。
  3. 書類の正確な保管と提出
    • 必要書類の記入漏れや添付書類の不足があると、審査が遅れたり、最悪の場合、不支給になったりすることがあります。
    • すべての書類が揃っているか、記載内容に誤りがないかを提出前に何度もチェックしましょう。

介護離職防止支援コースは、従業員と企業双方にとってメリットのある制度です。これらのポイントを押さえて、スムーズに申請手続きを進めてください。

まとめ|介護離職防止支援コースを賢く活用して企業と従業員の未来を守る

ここまで、「介護離職防止支援コース」の概要から具体的な支給額、そして申請時の注意点までを詳しく解説しました。

この助成金は、単なる資金援助ではなく、従業員が介護と仕事を両立できる環境を整え、貴重な人材の離職を防ぐための強力な支援策です。

超高齢社会において、介護はどの企業にとっても他人事ではありません。

この助成金を活用することは、従業員が安心して働き続けられる環境を整える「社会的責任」を果たすことにつながります。

結果として、従業員のモチベーション向上や企業への信頼感が高まり、企業の生産性維持、ひいては持続的な成長に貢献する、有効な経営戦略と言えるでしょう。

この機会に、ぜひ貴社の両立支援制度を見直し、助成金の活用を検討してみてください。

次回予告|介護離職防止支援コースの実践編を徹底解説

次回は、この「介護離職防止支援コース」を「机上の空論」で終わらせないための「実践編」です。

実際に助成金を活用した企業の成功事例を交えながら、申請の各段階で具体的に何をすべきかを徹底解説します。

  • 計画段階
    • どのような書類を、いつまでに、どうやって作成するのか?
  • 実施段階
    • 介護休業中の業務を円滑に回すための具体的な方法とは?
  • 申請段階
    • 複雑な書類を漏れなく揃え、確実に申請を成功させるためのフローは?

次回記事を読めば、あなたの会社もスムーズに助成金を受け取り、介護離職を防ぐための具体的な一歩を踏み出せるはずです。

次回の記事は👉介護離職防止支援コース|申請方法・フローと助成金活用の事例

どうぞご期待ください。

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戸塚淳二
この記事を書いた人
  • 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
  • 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

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