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2025年・改正育児介護休業法【実務対応編】(29)男性育休「合わせ技」徹底ガイド【第4回】育児休業中の社会保険料は免除?手続き方法・必要書類を徹底解説

健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届 2025年改正育児介護休業法
健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届について解説します
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社会保険労務士 戸塚淳二

執筆者:社会保険労務士 戸塚淳二

法改正対応のスペシャリスト。戸塚淳二社会保険労務士事務所 代表として、多岐にわたる労働関連法規の解説から、実践的な労務管理、人事制度設計、助成金活用まで、企業の「ヒト」と「組織」に関する課題解決をサポートしています。本記事では、事業主の皆さまが安心して法改正に対応できるよう、専門家の視点から最新情報をお届けします。

社会保険労務士登録番号:第29240010号

育児休業中の経済的な不安を軽減する上で欠かせない社会保険料の免除制度。

この制度をしっかり活用するためには、従業員と会社、双方の連携が非常に重要です。

本記事では、育児休業中の社会保険料免除に関する具体的な手続きに焦点を当てていきます。

特に、免除に欠かせない『育児休業等取得者申出書』の役割とその手続きを、従業員が行うべきこと、会社が行うべきこと、そして育休期間の変更や分割取得といったケースごとの注意点を詳細に解説します。

複雑に感じる手続きも、ポイントを押さえればスムーズに進めることができます。

ぜひ本記事を参考に、安心して育児に専念できる環境を整えましょう。

社会保険料免除の手続き

育児休業給付金と同様に、社会保険料の免除もまた、従業員と会社が連携して手続きを進める必要があります。

ここからは、それぞれの立場での具体的な手続きと、押さえておくべき注意点を解説します。

従業員が行うこと

社会保険料免除の手続きは、基本的に会社が主導してくれますが、従業員側もいくつか対応すべきことがあります。

  • 会社への申し出
    • 通常、育児休業の取得を会社に申し出る際に提出する「育児休業申出書」の中に、社会保険料免除に関する項目が含まれていることがほとんどです。
    • この項目にチェックを入れるなどして、育休期間中の社会保険料免除を希望する旨を会社に伝えましょう。
  • 特に追加で書類を求められた場合の対応
    • 会社によっては、手続きのために追加で書類の提出を求められる場合があります。
    • 例えば、母子健康手帳の写しや住民票記載事項証明書など、育児休業給付金の申請と共通する書類もあります。
    • 会社からの指示があった際は、速やかに正確な情報を提供するようにしてください。

会社(企業)が行うこと

従業員からの申し出を受け、会社は以下の手続きを速やかに行う必要があります。

「育児休業等取得者申出書」の作成と日本年金機構への提出

  • 会社は、従業員の育児休業開始後、「育児休業等取得者申出書」を作成し、従業員に代わって管轄の年金事務所へ提出します。
  • この申出書によって、社会保険料免除の手続きが開始されます。
    • 提出期限
      • この申出書には明確な提出期限が定められているわけではありませんが、速やかに提出することが重要です。
      • 提出が遅れると、免除開始月が遅れたり、従業員が医療機関を受診する際の保険証利用に影響が出たりする可能性があります。

必須の書類「育児休業等取得者申出書」とは?

この「育児休業等取得者申出書」 は、正確には「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」という名称の書類です。

これは、従業員が育児休業を取得する際に、その期間中の社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)を免除してもらうために、会社が日本年金機構に提出する、非常に重要な公的書類です。

これは、各会社が独自に作成するものではなく、日本年金機構が定めている全国共通の様式を使用します。

従業員自身が直接提出するものではありません。従業員からの育児休業の申し出を受けて、会社が従業員に代わって作成します。そして、管轄の年金事務所へ提出します。

この書類を提出することで、育児休業期間中の社会保険料が、従業員本人と会社の両方の負担分ともに免除されます。

社会保険料の免除は、育児休業中の家計の経済的負担を大きく軽減する制度です。

免除された期間も将来の年金受給資格期間にはきちんと算入されます。そのため、年金額が減る心配はありません。

どのような育児休業が対象になるの?

この申出書の提出対象となるのは、以下の法に基づいた育児休業全般です。

  • 1歳(または延長された場合は1歳6ヶ月、2歳)に満たない子を養育するための育児休業
  • 3歳に達するまでの子を養育するための育児休業の制度に準ずる措置による休業
  • 産後パパ育休(出生時育児休業)

提出はいつ?どこに?

会社は、従業員の育児休業開始後、速やかにこの申出書を年金事務所に提出する必要があります。

明確な提出期限が定められているわけではありません。

しかし、提出が遅れると社会保険料の免除開始月が遅れたり、場合によっては従業員が医療機関を受診する際の保険証利用に影響が出たりする可能性があります。

記載する内容は?

申出書には、主に以下の情報が記載されます。

  • 従業員の氏名、生年月日
  • 育児休業の開始日と終了予定日
  • 子の情報(氏名、生年月日、従業員との続柄など)

育休期間の変更があったら?

もし育児休業の期間が当初の予定から短縮されたり、延長されたりした場合は、会社は別途「育児休業等取得者変更届」を速やかに年金事務所に提出する必要があります。

また、育児休業が終了した際には「育児休業等取得者終了届」を提出します。

これらの変更届をきちんと提出することで、適切な期間の社会保険料が免除され、トラブルを防ぐことができます。

「育児休業等取得者申出書」のダウンロード先

この書類の様式は、以下の日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。

このページには、申出書の様式のほか、記入例や関連する手続きについての情報も掲載されていますので、参考にしてください。

従業員への制度説明と情報提供

  • 従業員が安心して育休を取得できるよう、社会保険料免除の仕組みや、免除される期間、免除後の年金への影響などについて、改めて丁寧に説明を行いましょう。

給与計算における社会保険料の控除処理

  • 社会保険料が免除された期間の給与計算では、健康保険料と厚生年金保険料を控除しない処理が必要になります。
  • 漏れがないよう正確に処理してください。

手続きの注意点

育児休業の期間が変更になったり、分割して取得したりする場合には、追加の手続きが必要になることがあります。

育休期間の変更があった場合の対応

  1. 育児休業期間が短縮された場合
    • 会社は「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届(終了にチェック)」を速やかに年金事務所へ提出する必要があります。
    • これにより、実際の育児休業終了日までの社会保険料免除となります。
  2. 育児休業期間が延長された場合
    • 会社は「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届(延長にチェック)」を速やかに年金事務所へ提出する必要があります。
    • これにより、新たな終了予定日まで社会保険料免除が継続されます。
  3. 最初に申請した終了日通りに育児休業が終了し、復職した場合
    • 「育児休業等取得者申出書」で届け出た予定通りに育児休業が終了した場合は、「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」の提出は不要です。

産後パパ育休と通常の育休を連続して取得する場合の手続き

  • 夫が産後パパ育休と通常の育児休業を、間に就労期間を挟まず連続して取得する場合、社会保険料免除の手続き上は、これらをまとめて1回の育児休業として申し出ることが可能です。
  • 会社が年金事務所に提出する「育児休業等取得者申出書」には、産後パパ育休の開始日から通常の育休の終了予定日までを一連の期間として記載します。
  • これにより、年金事務所はこの一連の期間に基づいて社会保険料免除を判断するため、手続きを簡略化できます。

「合わせ技」で育休を分割取得する場合の取り扱い

  • 育休を複数回に分けて取得する「合わせ技」の場合、社会保険料の免除は各育休期間ごとに判断されます。
    • 月々の社会保険料の免除は、「月の末日時点で育児休業を取得しているか」または「同月内に14日以上育児休業を取得しているか」が要件となります。どちらか一方の要件を満たせば免除されます
    • 賞与にかかる社会保険料の免除は「同月内に連続して14日を超える(15日以上)育休を取得しているか」が要件となります。
    • 会社は、それぞれの育休開始時と終了時に合わせて、必要に応じて「育児休業等取得者申出書」や「育児休業等取得者変更届」を提出する必要があります。
    • 特に、最初の育休期間と次の育休期間の間に間隔が空く場合は、その都度、申出が必要になる場合がありますので、事前に年金事務所や社会保険労務士に確認すると良いでしょう。

まとめと次回予告

今回の【第3回】では、育児休業中の家計を支えるもう一つの重要な柱である「社会保険料の免除」制度に焦点を当て、その仕組みと具体的な手続きについて詳しく解説しました。

制度のポイントと「合わせ技」への適用

育児休業期間中の健康保険料と厚生年金保険料が、従業員・会社双方の負担分ともに免除されるこの制度は、育休中の経済的負担を大きく軽減します。

特に、「月末時点での育休取得」が月々の保険料免除の重要な要件となること、そして賞与に関しては「同月内に連続して14日を超える(15日以上)育休取得」という独自の条件があることをご理解いただけたかと思います。

また、産後パパ育休と通常の育休を連続して取得する場合や、いわゆる「合わせ技」で分割取得する場合の手続き上の注意点も確認しました。

社会保険料の免除は、育児休業給付金と合わせて活用することで、育休期間中の経済的な不安を大幅に解消し、安心して育児に専念できる環境を整える上で不可欠な制度です。

企業側も従業員側も、これらの制度を正しく理解し、適切な手続きを行うことで、スムーズな育休取得・運用の実現につながります。

次回予告

次回の【第5回】では、この社会保険料免除制度について、さらに重要なポイントを深掘りします。特に、今回のシリーズでは深く触れてこなかった「産前産後休業中の社会保険料免除」 に焦点を当て、その具体的な内容と手続きについて解説する予定です。

育児休業と密接に関連する産前産後休業中の免除制度は、見落とされがちですが、経済的な準備をする上で非常に重要です。

この「2025年改正育児介護休業法シリーズ」の文脈からは少し外れるかもしれませんが、育児に臨むすべての方にとって必須の知識となるでしょう。

ぜひ次回の記事にもご期待ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご相談の際は、以下よりお気軽にお問い合わせください。☟

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