本記事は「2025年改正育児介護休業法シリーズ」の第33弾です。他のシリーズの記事はコチラから👉2025年育児介護休業法改正|企業がすべき対応と助成金情報
前回の記事では雇用保険法改正による育児関連給付金の拡充内容と育児休業給付金の基本的な仕組みを解説しました。
前回の記事は👉2025年改正雇用保険法|育児休業給付金の支給要件と計算方法を解説
本記事では「出生後休業支援給付金」の支給要件・手取り10割の仕組み・具体的なシミュレーションを人事担当者向けに解説します。
従業員への案内に必要な知識を網羅しています。
この記事で分かること
- 出生後休業支援給付金の支給対象と要件(出生後8週間以内・父母合計14日以上の休業)
- 給付率が従来の67%から約80%へ引き上げられる仕組み
- 給付金の非課税と社会保険料免除が手取り実質10割を実現する仕組み
- 専業主婦家庭・ひとり親家庭でも単独受給が可能な例外要件
- 具体的なシミュレーションで見る手取り額の試算方法
出生後休業支援給付金の創設背景と制度の狙い|育児休業給付金との違いも解説
2025年4月の雇用保険法改正により創設された「出生後休業支援給付金」は、少子化対策と共働き・共育て社会の推進を目的とした制度です。
人事担当者として制度の背景と目的を把握しておくことが従業員への適切な案内につながります。
出生後休業支援給付金が創設された背景|従来制度の課題と改正の目的
従来の育児休業給付金は休業開始時賃金の67%(181日目以降は50%)が支給される仕組みでした。
社会保険料免除や給付金の非課税というメリットはあったものの、育休前の手取り額と比べると収入減は避けられず、特に男性の育休取得を躊躇させる要因となっていました。
本制度はこの経済的な不安を解消し、従業員が育休を取得しやすい環境整備を目的として創設されました。
少子化対策における出生後休業支援給付金の位置づけ
少子化対策の中核の一つとして「男性育休取得の促進」が掲げられています。
関連記事👉男性育休取得率公表義務の拡大と企業のメリットと課題
育児への男性参画により女性の産後ケア・キャリア継続支援・夫婦間の育児負担の公平化が期待されていますが、経済的懸念から男性の育休取得率は依然として低水準にとどまっています。
出生後休業支援給付金はこの課題に対応するための経済的支援を強化した制度です。
企業としても本制度を正確に把握し従業員へ積極的に案内しましょう。
出生後休業支援給付金が生み出す効果と企業への影響
出生後休業支援給付金により手取り実質10割が実現することで、男性の育休取得促進が期待されています。男性の育休取得は以下の効果をもたらします。
- 女性の職場復帰支援
- 男性が育児を分担することで女性が安心して職場復帰できる環境が整います。
- 育児負担の公平化
- 夫婦間の育児負担が公平になることで従業員の離職リスク低減につながります。
企業としても本制度を活用した男性育休取得の推進が人材確保・定着率向上に寄与します。
出生後休業支援給付金の支給要件|従業員への案内ポイント
出生後休業支援給付金には明確な支給要件が定められています。
従業員への案内時に正確に伝えられるよう以下のポイントを把握しておきましょう。
原則的な支給要件|父母ともに休業取得が必要
子の出生後8週間以内に父母合計で14日以上の休業取得が原則要件です。
父親は産後パパ育休、母親は産後休業がそれぞれカウントされます。
会社員の母親は産後休業を確実に取得するため合計14日以上の要件はほぼ満たされます。したがって給付金支給の鍵は父親が出生後8週間以内に短期間でも産後パパ育休を取得するかどうかです。
父母それぞれが14日以上取得する必要はなく合計14日以上であれば対象となります。
従業員への案内時にこの点を明確に伝えましょう。
例外的な支給要件|配偶者が雇用保険未加入の場合など
以下の場合は配偶者の育休取得を要件とせず本人の育休のみで給付金の対象となります。従業員への案内時に合わせて確認しておきましょう。
- 配偶者が雇用保険の被保険者でない場合(専業主婦・夫、自営業者、フリーランスなど)
- ひとり親家庭の場合
- その他、夫婦ともに育休取得が困難と認められる特定の事情がある場合
雇用保険の被保険者要件
受給者自身が以下の雇用保険の要件を満たしている必要があります。
関連記事👉2025年改正雇用保険法|育児休業給付金の支給要件と計算方法を解説
- 休業開始前2年間で賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること
- 従来の育児休業給付金と同様の雇用保険被保険者としての要件を満たすこと
休業期間中の就業制限
産後パパ育休期間中の就業は認められていますが、就業日数が10日以下(10日を超える場合は80時間以下)であることが条件です。
この制限を超えると給付金が支給されない可能性があります。就業により賃金が支払われた場合は給付額が調整されることもあるため従業員への事前案内が重要です。
出生後休業支援給付金の支給条件|ケース別確認
給付金が支給されるかどうかは夫婦それぞれの雇用保険加入状況と出生後8週間以内の休業取得状況で決まります。
従業員への案内時に参考となるケース別の判断基準を以下に示します。
1. 夫婦ともに雇用保険に加入している場合
夫婦ともに会社員で、雇用保険に加入している場合のパターンです。
この場合、母親は出産後に必ず労働基準法に基づく「産後休業」を取得します。この産後休業期間も、給付金の要件である「休業」としてカウントされるため、夫婦合計14日以上の休業期間はほぼ確実に満たされます。
したがって、このケースで給付金が支給されるかどうかの最も重要なポイントは、父親が子の出生後8週間以内に、短期間でも「育児休業(出生時育児休業=産後パパ育休)」を取得するかどうか、です。
- ケースA:父親が育休を取得した場合(〇 支給される)
- 父親が2日間育休を取得し母親が産後休業(約56日間)を取得した場合、夫婦合計58日となり14日以上の要件を満たします。
- 父親の育休取得という条件も満たすため給付金が支給されます。
- ケースB:父親が育休を取得しなかった場合(× 支給されない)
- 父親が育休を取得せず母親のみが産後休業(約56日間)を取得した場合、合計日数は満たしていても父母ともに休業するという原則要件を満たさないため給付金は支給されません。
2. 夫婦のどちらかが雇用保険に加入していない場合(例外的な要件)
原則は「父母ともに休業」ですが、配偶者が雇用保険の被保険者ではない場合など、例外的に本人の育児休業のみで給付金の対象となることがあります。
- ケースC:父親が会社員・母親がフリーランスの場合(〇 支給される)
- 父親が14日間育休を取得し母親がフリーランス(雇用保険未加入)の場合、例外要件に該当するため父親の単独育休取得のみで給付金の対象となります。
- ケースD:父親がフリーランスもしくは無業者である場合(× 支給されない)
- 父親がフリーランス(雇用保険未加入)で母親のみが産後休業を取得した場合、父親が雇用保険の被保険者でないため給付金の対象となりません。
出生後休業支援給付金で実現する手取り実質10割の仕組み
出生後休業支援給付金を含む育児休業給付金制度を活用することで手取り実質10割相当が実現します。
これは給付率の引き上げだけでなく複数の要素が組み合わさった仕組みによるものです。従業員への案内時に以下の3つのポイントを正確に伝えましょう。
支給額の計算方法|給付率67%から約80%にアップした出生後休業支援給付金
「出生後休業支援給付金」は、単体で支給されるわけではありません。
まず、通常の育児休業給付金(または出生時育児休業給付金)がベースとなり、それに上乗せされる形で支給されます。
具体的には、以下の合計額が支給されます。
- 従来の育児休業給付金(または出生時育児休業給付金)
- 休業開始時賃金日額の67%相当額が支給されます(育児休業開始から180日間)。
- 出生後休業支援給付金
- 上記に加えて、休業開始時賃金の約13%相当額が上乗せ支給されます。
- この上乗せは最大28日間が対象です。
これにより、給付金自体の合計額は、従来の給付率67%と新給付金約13%で、合計約80%の支給率になります。
手取り実質10割を実現する3つの要素
給付率が約80%でも実質10割が実現する理由は以下の3つの要素によるものです。
- 育児休業期間中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の免除
- 育休期間中は会社・従業員双方の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されます。
- 通常給与から約14〜15%天引きされるこの負担がなくなることが実質10割実現に最も大きく寄与します。
- 育児休業給付金が非課税であること
- 育児休業給付金は所得税法上の非課税所得です。給付金に所得税・住民税がかからないため手取り額が増加します。
具体的なシミュレーションで見る「手取り実質10割」
これらの要素が組み合わさることで育休前の手取り額とほぼ同水準になります。以下のシミュレーションで確認しましょう。
【シミュレーション例1:1ヶ月間(例えば30日)フルで育児休業を取得した場合】
- 休業開始前の月給(額面)
- 30万円
- 社会保険料(約15%と仮定)
- 4.5万円
- 税金(所得税・住民税、約5%と仮定)
- 1.5万円
- 育休前の手取り月収(概算)
- 30万円 – 4.5万円 – 1.5万円 = 24万円
- 育休取得中の本人の手取り額(「出生後休業支援給付金」支給期間中)
- 従来の給付金(67%)
- 30万円 × 67% = 20.1万円
- 新給付金(約13%)
- 30万円 × 13% = 3.9万円
- 給付金自体の合計額(約80%)
- 20.1万円 + 3.9万円 = 24万円
- 社会保険料の免除額
- 4.5万円
- 税金の免除額
- 1.5万円
- 育休中の手取り月収(概算)
- 24万円(給付金)+ 4.5万円(社会保険料免除分)+ 1.5万円(税金免除分) = 30万円
- 従来の給付金(67%)
上記のシミュレーションでは、育休前の手取り月収が約24万円だったのに対し、育休中は給付金自体は24万円ですが、社会保険料と税金の免除により、実質的な手取り額は約30万円となり、育休前の額面月収(30万円)とほぼ同水準になります。
【シミュレーション例2 2日間のみ育児休業を取得した場合】
この場合も、「手取り実質10割」の仕組み自体は適用されますが、実際に受け取る給付金の総額は休業日数に応じた日割り計算となります。
- 休業開始前の本人の月給(額面)
- 30万円
- 休業開始前の本人の賃金日額(概算)
- 30万円 ÷ 30日 = 1万円
- 2日間の育児休業で支給される給付金(概算)
- 1日あたりの給付金(約80%)
- 1万円 × 80% = 8,000円
- 2日間の給付金合計
- 8,000円 × 2日 = 16,000円
- 1日あたりの給付金(約80%)
- 社会保険料の免除
- 育児休業期間が月をまたがず、かつその月の末日を含む育児休業であれば、その月の社会保険料は免除されます(例:月の途中で2日間育休を取り、その月の末日まで育休が続く場合)。
- ただし、2日間だけの育休で月の途中に終了する場合、その月の社会保険料は免除されない可能性があります。
- 一般的には、社会保険料免除の恩恵を最大限に受けるためには、月末を含む形での育休取得が推奨されます。
育児休業中の社会保険料免除の詳細はこちら
- 税金
- 支給された給付金16,000円は非課税です。
この例のように、短期間の育児休業でも給付金は支給されますが、その額は日割り計算となり、社会保険料の免除についても注意が必要です。
休業期間の長短にかかわらず給付率の高さと非課税のメリットは適用されます。従業員への案内時に合わせて伝えておきましょう。
まとめ|出生後休業支援給付金の支給要件と手取り実質10割の仕組み
本記事では出生後休業支援給付金の支給要件と手取り実質10割を実現する仕組みを解説しました。
給付率の約80%への引き上げ・社会保険料免除・給付金の非課税という3つの要素が組み合わさることで実質10割が実現します。
次回予告|出生後休業支援給付金の受給タイミングと手続きのポイント
次回は出生後休業支援給付金の支給期間・申請手続き・実務ポイントについて解説します。総務・人事担当者が押さえるべき情報をお届けします。
次回の記事は👉2025年4月新設「出生後休業支援給付金」徹底解説 総務担当者が知るべき申請手続きと実務ポイント
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- 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
- 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

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