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職場の熱中症対策 WBGT測定から休憩ルールまで実務チェックリスト

企業のための熱中症対策講座vol3 労務の基礎知識
チェックリストで職場の安全性をチェックしましょう
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「対策はしている。でも、本当にこれで十分なのか?」

そう感じている経営者は少なくありません。

WBGT値の測定、休憩時間の確保、水分補給の指示。

やるべきことはわかっていても、「どこまでやれば義務を果たしたと言えるか」の基準が曖昧なまま運用している会社がほとんどです。

この記事では、現場で今すぐ使えるチェックリスト形式で、熱中症対策の具体的な実務ポイントを整理します。

前回の記事は👉職場の熱中症対策|法改正と現場での実務ギャップを徹底解説

この記事で分かること

  • 気温だけではなく湿度や日射を考慮したWBGT値で見えない暑さを可視化すること
  • 測定値に応じて休憩時間の延長や作業の中断などの具体的な行動ルールを定めること
  • 決められた休憩以外にも本人の体調に応じた臨時休憩を積極的に奨励すること
  • 涼しい休憩場所の確保や水分と塩分の提供により休憩の質を向上させること
  • 測定値に基づいた行動ルールを定め、記録として残すことで企業の義務を果たせること

気温だけでは危ない|WBGTで見えない暑さを数値化する

WBGT計を導入しても、正しく使えていない職場が多いのが現実です。よくある3つのミスと、その対処法を整理します。

WBGT測定でよくある3つのミスと、その対処法

WBGT計を導入しても機能しない職場に共通する問題は、

  • 設置場所が不適切
  • 一時的な測定のみ
  • 数値を行動に結びつけない

の3つです。

詳しくは第2話で解説しています。👉職場の熱中症対策|義務化で変わったこと、現場対応が追いつかない理由

ここでは、これらの問題を解決するための具体的な対処法を整理します。

測定値が出たら何をするか|具体的な行動ルールの作り方

せっかく測定したWBGT値や気温が、具体的な行動に結びつかなければ意味がありません。

測定結果に基づいて「何を」「いつ」「誰が」行うのか、あらかじめ明確な行動基準を定めておくことが非常に重要です。

厚生労働省は、WBGT値に応じた作業中止や休憩取得の目安を提示しています。これらを参考に、自社の作業内容や現場の特性に合わせて、具体的なルールを策定しましょう。

WBGT値と推奨される行動基準

WBGT値(℃)熱中症の危険度と推奨される行動の目安
31以上危険
運動は原則中止。特別の場合以外は運動を中止すべき。特に子どもの場合は中止。高齢者は安静状態でも危険性が大きい。
28以上31未満厳重警戒
熱中症の危険性が高い。激しい運動や持久走など、体温が上昇しやすい運動は避ける。頻繁に休憩をとり、水分・塩分を補給する。
25以上28未満警戒
熱中症の危険が増す。積極的に休憩を取り、適宜、水分・塩分を補給する。激しい運動では30分おきくらいの休憩が目安。
21以上25未満注意
熱中症による死亡事故が発生する可能性もある。熱中症の兆候に注意し、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。
21未満ほぼ安全
通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分補給は必要。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生することがある。

行動基準の具体的な策定と周知

この基準を基に、「WBGT値が〇℃を超えたら、〇分休憩を〇回追加する」「〇℃以上になったら、屋外作業を〇時間に短縮する」といった具体的な指示を明文化し、関係者全員に周知徹底しましょう。

さらに、体調不良者が出た際の連絡フローや、応急処置の手順も併せて明確にしておくことで、迅速かつ適切な対応が可能になります。

WBGT値の測定と、それに基づく具体的な行動基準の策定・実行は、熱中症から労働者を守るための強力なツールとなります。

休憩は「取るだけ」では不十分|質と頻度の管理方法

高温多湿な環境下での作業は、労働者の身体に大きな負担をかけます。

熱中症予防のためには、作業内容や環境に応じた適切な作業時間・休憩時間の運用が不可欠です。

単に休憩を取るだけでなく、その質を高めることが重要になります。

現場で使える!WBGT値に応じた効果的な休憩・作業スケジュール

労働安全衛生法では休憩時間に関する一般的な規定がありますが、熱中症リスクが高い時期・場所においては、よりきめ細やかな配慮が必要です。

WBGT値や気温、湿度などの測定結果に基づき、作業負荷や環境に応じた休憩時間の設定を検討しましょう。

  • WBGT値に応じた休憩の目安
    • 厚生労働省が示すWBGT値の基準を参考に、例えば「WBGT値が28℃を超えたら、作業30分ごとに10分以上の休憩を義務付ける」といった具体的なルールを設けることが有効です。
  • 作業負荷の考慮
    • 重労働や集中力を要する作業など、身体的・精神的負荷が高い作業の場合は、WBGT値が比較的低くても休憩頻度を増やす、または作業時間を短縮するなどの調整が必要です。

「まだ大丈夫」が危ない|臨時休憩を取りやすい職場の作り方

休憩は、あらかじめ決められた時間だけでなく、作業員自身の体調変化に応じて柔軟に取得できる環境が重要です。

「まだ大丈夫」という過信や、周囲への遠慮から休憩をためらうことがないよう、企業として積極的に臨時休憩の取得を奨励しましょう。

  • 自己申告の徹底
    • 作業員が少しでも体調に異変を感じたら、すぐに作業を中断し、管理者に報告できる体制を整えましょう。
    • そのためには、日頃から「無理はしない」というメッセージを伝え、安心して申告できる雰囲気作りが不可欠です。
  • 管理者の声かけと観察
    • 管理者は、定期的に作業員に声かけを行い、顔色や動き、発汗の様子などから体調の変化を早期に察知するよう努めましょう。
    • 異変が見られた場合は、積極的に休憩を促す、または作業から離脱させる判断が求められます。

熱中症対策の休憩環境|涼しい場所と水分・塩分補給の整備方法

休憩は、単に作業を中断するだけでなく、熱を効果的にクールダウンできる場所で行うことが重要です。

  • 涼しい休憩場所の確保
    • 日陰や空調の効いた屋内、送風機やミストシャワーを設置した場所など、体温を下げられる環境を確保しましょう。
    • 屋外作業の場合は、移動式の休憩所やテントの設置も検討が必要です。
  • 水分・塩分補給の提供
    • 冷たい水やスポーツドリンク、塩飴などを、作業員がいつでも自由に補給できる場所に十分に用意しましょう。
    • 自動販売機の設置や、定期的な巡回による提供も有効です。
  • 冷却グッズの活用
    • 首元を冷やすタオル、冷却ベスト、携帯扇風機など、個人で利用できる冷却グッズの導入や推奨も、休憩時のクールダウンを助けます。

作業そのものを見直す|負荷軽減と人員配置の工夫

作業環境や休憩時間の調整だけでなく、作業そのものの負荷を軽減することも、熱中症予防には欠かせません。

  • 作業内容の見直し
    • 炎天下での作業や重労働は、可能な限り涼しい時間帯(早朝や夕方)に移行する、または屋内で実施できる作業に切り替えるなどの工夫をしましょう。
  • 人員配置の調整
    • 一人あたりの作業負荷を減らすため、人員を増やす、または交代制を導入して、連続作業時間を短縮することを検討しましょう。
  • 機械化・自動化の推進
    • 人力に頼る作業を機械やロボットに代替することで、労働者の身体的負担を軽減し、熱中症リスクを低減できます。

現場で今すぐ使える|熱中症対策チェックリスト

  • WBGT測定

□ WBGT計を作業環境を代表する地点に設置している

□ 午前・午後・夕方など時間を決めて定期的に測定している

□ 測定値を毎日記録している

  • 行動基準

□ WBGT値ごとに「何を」「誰が」「いつ」行うかを明文化している

□ 基準値を超えた際の休憩・作業中断ルールが現場に周知されている

  • 休憩管理

□ WBGT値に応じた休憩時間・頻度のルールが定められている

□ 高齢者・体調不良者など高リスク従業員への個別配慮ができている(詳しくは👉第4話:高齢者・体調不良者の熱中症対策|現場で使える個別配慮のポイント

□ 涼しい休憩場所が確保されている

  • 水分・塩分補給

□ 冷水・スポーツドリンク・塩飴をいつでも補給できる環境がある

□ 管理者が定期的に補給を促す声かけをしている

  • 記録・証明

□ 記録管理の体制が整っている(詳しくは👉熱中症予防教育と記録管理|安全配慮義務を果たす実務ガイド

まとめ|測定して、記録して、動く。それが熱中症対策の実務です。

WBGT値を測るだけでは不十分です。

測定値に基づいて行動ルールを定め、その記録を残す。

この3つが揃って初めて、企業としての安全配慮義務を果たしたと言えます。

チェックリストを活用して、自社の対策に抜け漏れがないか今すぐ確認してください。

次回は、高齢者や体調不良者など、個別配慮が必要な労働者への具体的な対応方法を解説します。

次回予告|高リスク労働者への熱中症対策チェックリストを解説

次の記事では、高齢者・体調不良者・暑さに慣れていない新人など、個別配慮が必要な労働者への具体的な対応方法を解説します。

ぜひ続けて読んでみてください。

次回の記事は👉高齢者・体調不良者向け|現場で実践|熱中症リスク管理の最小化

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戸塚淳二
この記事を書いた人
  • 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
  • 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

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