副業社労士の戸塚淳二です。今の世の中のトレンドの中で非常に気になった案件があり、書きなぐっています。ちょっと堅い話になってますが、お付き合いください。
前回は、「静かな退職」が何を意味するのか、そしてなぜ今、この現象がこれほどまでに広まっているのかを深く掘り下げてきました。
個人的な経験や「やりがい搾取」の問題にも触れ、この現象が単なる個人の「やる気の問題」ではないことをご理解いただけたかと思います。
では、この「静かな退職」は、実際に働く私たち個人に、そして組織である企業に、どのような影響をもたらすのでしょうか?
一見すると、頑張りすぎないことで心身を守れるメリットがあるように見えますが、その裏側には、見過ごせない「影」の部分も存在するのではないでしょうか。
ここでは、個人と企業の双方に与える具体的な影響について、光と影の両側面から考察していきます。
「静かな退職」がもたらす影響 企業と個人の両側面
インターネット上のさまざまな情報を見ると、この「静かな退職」に共感し実践している人々は、Z世代やミレニアル世代に非常に多く、さらに45歳以上の中高齢層にもかなり見られると言われています。
「今の若い奴らは、責任を背負いたがらず、出世を望んでいない」「働かないおじさんが……」といった話はよく聞きますよね。しかし、これらの言説が指し示す現象と「静かな退職」を重ね合わせると・・・・ふと疑問に思いませんか?
「それってつまり、20代から50代、60代まで、ほぼ全世代にわたってこの現象が起きているということなのでは?」
「静かな退職」は、特定の世代に限定されるものではなく、現代社会を生きる多くの働く人々が直面し、それぞれに独自の理由で選択している、普遍的な働き方の変化を示しているのかもしれません。
若手世代は「やりがい搾取」や過労への反発から、中高齢層は「先が見えた」キャリアと人生の再設計から、それぞれこの「静かな退職」という選択肢を選んでいる、のかもしれません。
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1. 個人への影響 手に入れる「平穏」と失う「機会」
「静かな退職」を選ぶ個人にとって、それは自身の心身を守り、より健全な働き方を手に入れるための合理的な選択である側面があります。
しかしながら、合理的な選択の裏側には、時に不合理な結果が伴うこともあります。
ポジティブな側面
- 精神的安定とワークライフバランスの改善
- 過度なプレッシャーや責任から距離を置くことで、精神的な負担が減り、燃え尽き症候群に陥るリスクを回避できます。無理に頑張りすぎないことで、心身の健康を保つことにつながります。
- また、仕事に費やす時間とエネルギーを必要最低限に抑えることで、プライベートな時間や趣味、家族との時間をより充実させることが可能です。
- これは、多様な価値観を持つ現代人にとって、幸福度を高める重要な要素と言えるでしょう。
- さらに、不当な評価や「鶴の一声」のような理不尽な状況から自分自身を守るための自己防衛策としても機能します。会社に過度に依存せず、自身の人生の主導権を取り戻す感覚を得られることもあります。
- 私自身も、本業で「必要最低限のことはやっている」と認識しており、会社にとって実害があるとは考えていません。
- これは、会社に依存せず、自身の人生を主体的にコントロールするための戦略であり、副業として社会保険労務士の活動に時間を割くことで、精神的な安定と自己成長を図れています。
ネガティブな側面
- スキルアップの停滞とキャリアの頭打ち
- 「静かな退職」は、自ら積極的に新しい業務に挑戦したり、困難なプロジェクトを乗り越えたりする機会を失うため、スキルアップや専門性の向上が停滞する可能性があります。
- これは長期的に見て、自身の市場価値の低下や、将来のキャリアにおける選択肢が狭まるリスクをはらんでいます。
- また、昇進や昇給への意欲が薄いため、必然的に社内でのキャリアパスは限定的になります。
- 仕事への感情的なコミットメントを意図的に下げることで、仕事そのものから得られる充実感や達成感が薄れ、「単なる作業」と化してしまうことで虚無感に襲われることもあり得ます。
- 将来的に「あの時もっと頑張っていれば」と後悔する可能性もゼロではありません。特に、本業以外の活動で十分に自己実現ができていない場合、この感情は強くなるでしょう。
2. 企業への影響 見えない損失と組織の活力低下
従業員が「静かな退職」状態に陥ることは、企業にとって見過ごせない深刻な影響をもたらします。多くの場合、その影響はすぐに表面化しないため、「見えない損失」として組織の活力を蝕んでいきます。
生産性・イノベーションの低下
- 従業員が最低限の業務しか行わなくなるため、チーム全体の生産性や効率が低下します。
- また、新しいアイデアや改善提案が生まれにくくなり、組織全体のイノベーションも停滞します。与えられたことだけをこなす集団からは、未来を切り開く力は生まれません。

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組織全体の士気低下と負の連鎖
- 「静かな退職」は、確かに大々的に宣言されるわけではないため、すぐに周りが気づくわけではありません。しかし、その影響は水面下で、そして「静かに」確実に広がっていきます。
- 具体的には、一部の従業員が最低限の業務しか行わなくなると、その分の業務のしわ寄せが、真面目に頑張っている他の従業員に回ってくることがあります。
- また、特定のメンバーのパフォーマンス低下が、プロジェクトの遅延や目標未達に繋がれば、頑張っている従業員ほど「なぜ自分だけがこんなに大変なんだ?」「なぜ達成できないんだ?」という不公平感や不満を募らせることになります。
- このような状況が続けば、「頑張っても報われないなら、自分も必要最低限に抑えよう」という考えが、組織全体にじわじわと伝播していく「負の連鎖」を生み出しかねません。これは、組織の士気というよりは、「モチベーションの相対的な低下」を引き起こし、組織全体の活力を静かに削いでいくことになります。
潜在的な人材流出リスク
- 「静かな退職」は、従業員が会社に嫌気がさしている兆候でもあります。今は辞めていなくても、より良い条件や魅力的な環境があれば、優秀な人材から「静かに」去っていく可能性があります。企業がその根本原因を突き止め、改善しない限り、人材流出は避けられないでしょう。
- 隠れたコストの発生と育成の非効率化
- 従業員のエンゲージメントが低いため、新しいスキル習得や研修への意欲も低下します。
- 結果として、教育投資が非効率になったり、補充のための採用コストが増大したりするなど、目に見えない形で企業にコストが発生します。
行き着く先は天国か地獄か?
「静かな退職」は、過剰な働き方から距離を取り、自分の時間や心を守るという点で、個人にとっては一種の自衛手段であり、時にはポジティブな選択肢とも言えます。
確かに、長期的にキャリアの選択肢を狭める可能性はあるものの、目の前のストレスや消耗を避け、心身の健康を守るという意味では理にかなった行動です。

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しかし、企業側にとっては「静かな退職」は確実にマイナスです。主体性の低下、生産性の停滞、組織活力の鈍化といった影響は見過ごせず、いわば「組織のサイレントクライシス」とも言えます。
今のこの状況をこのまま放置しておいていいのでしょうか?もし放置した場合どうなるのでしょうか?
また、長くなってしまいました。続きは次回。
では、また。ご拝読ありがとうございました。
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