本記事は「2025年改正育児介護休業法シリーズ」の第32弾です。他のシリーズの記事はコチラから👉2025年育児介護休業法改正|企業がすべき対応と助成金情報
前回の記事では育休中・産前産後休業中の社会保険料免除を実例で解説しました。
前回の記事は👉育休・産前産後の社会保険料免除を実例で解説|企業手続きとQ&A
2025年4月1日に「改正育児介護休業法」と「改正雇用保険法」が同時施行され、育児関連制度が大きく変更されました。
本記事では雇用保険法改正による育児関連給付金の拡充内容と、従来の育児休業給付金の基本的な仕組みを人事担当者向けに解説します。
この記事で分かること
- 2024年に統計史上初めて70万人を割り込んだ出生数が示す少子化の現状と2025年改正の背景
- 2025年4月施行「改正雇用保険法」による共働き・共育て支援の強化ポイント
- 育児休業給付金の受給資格(前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間)の基本
- 給付額の基準となる「休業開始時賃金日額」の計算方法と上限・下限の仕組み
- 新設された「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」の概要
なぜ2025年育児関連法制は大改正されたのか?背景と目的を解説
日本の少子化は社会全体の喫緊の課題です。出生数の推移は以下の通りです。
| 年 | 出生数(速報値) | 備考 |
| 2023年 | 75万8,631人 | ※確定値は72万7,288人 |
| 2024年 | 68万6,061人 | 統計史上初めて70万人を下回る |
| 2025年 | 70万5,809人 | 前年より約2万人増加 |
2025年は前年より増加したものの2023年と比べると依然として低水準です。
このままでは社会保障制度の持続可能性や経済活力の低下が避けられないと懸念されており、政府は「異次元の少子化対策」を掲げ強力な施策を打ち出しています。
深刻化する少子化問題と政府の異次元の少子化対策の全体像
少子化は労働力人口の減少・社会保障制度の持続可能性・地域社会の活力低下など多岐にわたる問題を引き起こします。
政府が掲げる「異次元の少子化対策」は経済的支援の強化・働き方改革の推進・子育て支援の充実など包括的なアプローチで対応するものです。
企業としても従業員の育休取得を支援する体制整備が求められています。
育児とキャリアの両立支援が急務|企業に求められる対応
少子化対策の柱の一つが「育児とキャリアの両立支援」の強化です。
共働き世帯が主流となる中、育休取得は女性のキャリア停滞や男性の経済的懸念から依然として高いハードルが存在しています。
企業には従業員が安心して育休を取得できる環境整備と、制度の正確な案内が求められます。その法的基盤となるのが2025年4月1日施行の「育児介護休業法」の大改正です。
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給付金申請手続きの詳細はこちら👉育児休業給付金の申請フローガイド|分割取得時の給付条件と期限を解説
2025年改正雇用保険法の全体像|育児関連給付金の変更点を解説
2025年4月1日施行の改正雇用保険法は育児関連支援の強化にとどまらず、少子化・労働力不足・多様な働き方への対応など複合的な課題に対応するための広範な見直しを含んでいます。
雇用保険制度全体を「人への投資」を強化し持続可能なものとすることを目的としています。
雇用保険法改正の目的|社会変化に対応するセーフティネットの強化
雇用保険法改正は、主に以下の2つの大きな目的を掲げています。
- 少子化対策・人への投資・多様な働き方への対応
- 育児支援の強化に加え、教育訓練や転職支援の給付を拡充し、短時間労働者など多様な働き方をする人々へのセーフティネット機能も強化しています。
- 制度の持続可能性の確保
- 少子高齢化が進む中で雇用保険制度が将来にわたって安定的に機能し続けるよう、財政的な見直しも行われています。
2025年改正における育児関連給付金の位置づけと役割
育児関連給付金の拡充は今回の改正の重要な柱です。
育休取得促進は法律で定めるだけでは不十分で、休業中の経済的不安の解消が不可欠です。
今回の給付金拡充はその経済的支援を強化し、従業員が育休を取得しやすい環境整備につながります。
企業としても給付金制度を正確に把握し従業員に適切に案内することが重要です。
2025年育児関連給付金改正の主要ポイントと概要
2025年4月1日に施行された雇用保険法の改正では、育児関連給付金に関して、特に以下の2つの画期的な制度が創設されました。
詳細については次話以降で詳しく解説しますが、ここではその概要をご紹介します。
「出生後休業支援給付金」の創設
出生後休業支援給付金は、父母がともに一定期間育児休業を取得することを条件に、従来の育児休業給付金に上乗せして支給される新しい給付金です。
具体的には子の出生後8週間以内に父母それぞれが14日以上育休を取得した場合に適用されます。
社会保険料の免除や給付金の非課税を含めると休業前の手取り賃金とほぼ同額(実質10割相当)が支給されます。
従業員への案内時に「手取りがほぼ変わらない」という点を強調することで育休取得の後押しになります。
「育児時短就業給付金」の創設
育休から復帰後に2歳未満の子を養育するために時短勤務を選択した場合、賃金低下分の一部を補填する給付金です。
育休期間だけでなく復帰後の働き方も経済的に支援することで、従業員が無理なく職場復帰しやすい環境整備につながります。
時短勤務を希望する従業員への案内時に合わせて伝えておきましょう。
育児関連給付金以外の主な改正点
育児関連給付金以外にも以下の改正が行われています。
高年齢雇用継続給付の見直し
- 60歳以上65歳未満の労働者に対する給付率が段階的に引き下げられます。
- 自己都合離職者の給付制限期間の短縮
- 自己都合で会社を辞めた場合の基本手当の支給制限期間が、原則2ヶ月から1ヶ月に短縮されます(一部例外あり)。
これらの改正は雇用保険制度が失業給付の枠を超え、より包括的なセーフティネットへと進化していることを示しています。
育児休業給付金の改正前制度の基本と支給ルール
新制度を正確に把握するために、まず従来の育児休業給付金の基本的な仕組みを確認しておきましょう
育児休業給付金とは?定義と法的根拠
育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者が子の養育のために育児休業を取得した場合に支給される給付金です。
育休期間中の収入を補填し従業員の職場復帰を支援することを目的としています。
法的根拠は雇用保険法第61条の4で、産後パパ育休に対応する「出生時育児休業給付金」は同法第61条の6に定められています。
育児休業給付金の支給要件と受給条件
育児休業給付金を受給するためには、以下の基本的な要件をすべて満たす必要があります。これらは2025年4月の改正前からの主要な要件であり、新制度の基礎にもなっています。
雇用保険の被保険者期間
育休開始日の前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12ヶ月以上あることが原則です。
【例外】被保険者期間の算定期間の延長
疾病・負傷・産前産後休業など本人の責めに帰すことのできない理由で継続して30日以上賃金の支払いを受けられなかった期間がある場合は、その日数分(最長2年分)を加算し最長4年間まで遡って被保険者期間を計算できます。
育児休業の取得
原則として1歳未満の子を養育するための育休取得が必要です。
保育所入所不可など一定の理由がある場合は1歳6ヶ月・2歳まで延長可能です。
パパ・ママ育休プラスも対象となります。
休業期間中の就業制限
育休期間中の一時的な就業は認められていますが、支給単位期間ごとに就業日数が10日以下または就業時間が80時間以下であることが条件です。
この基準を超えると給付金が減額または支給停止となるため従業員への事前案内が重要です。
育児休業給付金の支給額・支給期間の計算方法
支給額・支給期間の算定は以下の方法で計算されます。
基準となる「休業開始時賃金日額」
支給額は「休業開始時賃金日額×支給日数×給付率」で計算されます。
休業開始時賃金日額とは育休開始前6ヶ月間の賃金総額を180日で割った1日あたりの平均賃金です。
賃金総額の範囲と計算上の注意点
- 賃金総額の範囲
- 所得税・社会保険料控除前の額面金額です。基本給・通勤手当・役職手当・残業手当など毎月支払われる全ての手当が含まれます。
- 含まれない賃金
- 賞与など3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金・退職金・結婚祝い金などは対象外です。
- 180日で割る理由
- 雇用保険法に定められた固定的な日数であり実際の稼働日数や暦日数に関わらず一律に適用されます。
上限額と下限額
- 休業開始時賃金日額には毎年8月1日に見直しが行われる上限額と下限額が設定されています。
- 上限額:高収入者の給付額が青天井にならないよう制度の公平性と財源維持のために設定されています。この上限額を超える賃金日額は、給付金算定の基礎とはなりません。
- 下限額:賃金が比較的低い従業員でも一定の給付額が確保されるよう設定されています。
- 上限額・下限額の最新情報は毎年8月1日に更新されるため、給付額の試算や申請書類作成の際は厚生労働省が公開している最新資料を確認しましょう。
給付率の段階的変化
給付率は育休取得期間によって以下の通り変化します。
- 育児休業を開始してから180日目まで:休業開始時賃金日額の67%
- 181日目以降:休業開始時賃金日額の50%
- 支給期間
- 支給期間は原則として子が1歳になる前日までです。
- 保育所入所不可など法定要件を満たす場合は1歳6ヶ月・最長2歳まで延長可能です。
- 延長申請に必要な書類や手続きについても事前に把握しておきましょう。
本記事で解説した基本的な仕組みを正確に把握しておくことが、次回解説する「出生後休業支援給付金」や「育児時短就業給付金」の理解と従業員への適切な案内につながります。
まとめ|育児休業給付金の基本と2025年改正のポイント
本記事では2025年改正の背景にある少子化の現状と、育児休業給付金の支給要件・支給額の計算方法を解説しました。
特に「休業開始時賃金日額」の算定方法は給付額の試算と申請書類作成において重要なポイントです。
次回予告|出生後休業支援給付金の詳細解説
次回は「出生後休業支援給付金」の具体的な内容・支給条件・従来の育児休業給付金との連携・申請手続きについて解説します。
従業員への案内に備えて制度の全体像を把握しておきましょう。
次回の記事は👉出生後休業支援給付金とは?2025年新設で「手取り実質10割」を実現するカラクリを徹底解説!
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- 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
- 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

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