本記事は「2025年改正育児介護休業法シリーズ」の第30弾です。他のシリーズの記事はコチラから👉2025年育児介護休業法改正|企業がすべき対応と助成金情報
前々回・前回の記事では育児休業中の社会保険料免除の条件・要件・申請手続きを解説しました。
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本記事では育児休業の前段階に位置する「産前産後休業中の社会保険料免除制度」について人事担当者向けに解説します。
産前産後休業中の社会保険料免除は育児休業中の免除とは別の仕組みで、産前産後休業期間に特化して適用されます。
免除期間も将来の年金受給額に影響しません。本記事では制度の全体像・申請手続き・育児休業との違いを解説します。
この記事で分かること
- 産前産後休業中(産前6週・産後8週)も社会保険料が本人・会社分ともに全額免除される仕組み
- 育休免除との最大の違い:月の途中で開始・終了してもその月がまるごと免除になる点
- 免除手続きは「会社の義務」であり、従業員からの申し出がなくても進めるべき実務
- 出産予定日と実際の出産日がズレた場合に必須となる「変更届」の重要性
- 産休からそのまま育休へ移行する際の、手続きの連続性と書類の整理
産前産後休業とは|制度の基本と企業が押さえるべきポイント
産前産後休業は労働基準法に基づく制度で、出産前後の女性の就業を制限しています。
企業は原則としてこの期間中に従業員を働かせてはなりません。
産前休業の期間と取得条件
産前休業は従業員が請求した場合に取得できる休業です。強制ではありませんが、取得を希望する従業員には積極的に案内しましょう。
- 通常の妊娠:出産予定日前6週間(42日間)
- 多胎妊娠(双子以上):出産予定日前14週間(98日間)
産後休業の期間と就業制限
産後休業は労働基準法により企業が原則として女性を就業させてはならない期間です。
- 期間:出産日の翌日から8週間(56日間)
ただし産後6週間を経過し医師が認めた業務であれば、本人が希望した場合に限り就業が可能です。
産前産後休業の法的根拠と企業の義務
産前産後休業は労働基準法第65条に定められた企業の法的義務です。
母体の保護と育児環境の確保を目的としており、企業は制度の内容を正確に把握し従業員に適切に案内する必要があります。
産前産後休業中の社会保険料免除の仕組みと企業側のメリット
育児休業中と同様に、産前産後休業期間中も社会保険料が免除されます。
従業員の経済的負担を軽減するとともに、企業側も会社負担分の保険料が免除されるため、従業員の産前産後休業取得を支援しやすくなります。
産前産後休業で免除される社会保険料の種類と範囲
健康保険料と厚生年金保険料の本人負担分・会社負担分ともに全額免除されます。
育児休業中の免除と同様の範囲です。
会社負担分も免除されるため、企業にとっても産前産後休業の取得を支援しやすくなります。
産前産後休業の社会保険料免除期間|育児休業との重要な違い
産前産後休業中の社会保険料免除で最も重要な点は免除期間の考え方です。
育児休業中の免除との大きな違いとして、従業員への案内時に特に強調しておきましょう。
- 育児休業の場合
- 月末時点で育休を取得していることが原則的な免除要件です。
- 月の途中で育休が終了するとその月は免除されないケースがあります(同月内14日以上の要件を除く)。
- 産前産後休業の場合
- 月末時点での休業の有無は関係ありません。
- 産休がある月はその月の社会保険料が全額免除されます。
- 月の途中で産休が始まり途中で終わる場合でもその月はまるごと免除となります。
- 従業員への案内時に育児休業との違いとして明確に伝えておきましょう。
産前産後休業中の社会保険料免除|申請手続きの流れと注意点
産前産後休業中の社会保険料免除を受けるためには所定の手続きが必要です。
育児休業と同様に従業員と会社が連携して進めます。
以下では企業側の対応を中心に解説します。
産前産後休業中の社会保険料免除申請の担当者と会社の義務
免除手続きは会社が管轄の年金事務所へ書類を提出します。
従業員が直接年金事務所に出向く必要はありません。
従業員からの申し出がなくても会社には「産前産後休業取得者申出書」を提出する義務があります。
手続きを怠ると本来免除されるべき保険料が徴収されトラブルの原因となるため、休業の事実を把握したら速やかに手続きを進めましょう。
妊娠・出産を控えた従業員には制度の内容を事前に案内しておくことが重要です。
産前産後休業中の社会保険料免除申請に必要な書類
免除申請に必要な書類は「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」です。
日本年金機構が定めた全国共通の様式を使用します。日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。
産前産後休業中の社会保険料免除の申請手順
申請手続きは以下の流れで進みます。
- 従業員からの休業申し出の確認
- 従業員から産前産後休業取得の申し出を受けたら、社会保険料免除希望の意思も合わせて確認しましょう。
- 申出書の作成
- 従業員からの申し出や休業の事実に基づき「産前産後休業取得者申出書」を作成します。
- 日本年金機構への提出
- 健康保険の種類(協会けんぽ・健康保険組合)に関わらず、すべて管轄の年金事務所へ提出します。
- 個別に健康保険組合へ提出する必要はありません。
- 年金事務所への提出により健康保険・厚生年金保険双方の保険料免除が適用されます。
育児休業中の社会保険料免除の申請先との比較
産前産後休業・育児休業ともに社会保険料免除の申請先は同じです。
会社が加入している健康保険の種類に関わらず管轄の年金事務所へ提出します。
この点を従業員への案内時に合わせて伝えておくと混乱を防げます。
産前産後休業中の社会保険料免除申請の提出期限と注意点
明確な提出期限は設定されていませんが、産前産後休業期間中または休業終了後1ヶ月以内に提出することが求められています。
提出が遅れると以下の影響が出る可能性があります。
- 免除開始が遅れその間の保険料が一時的に徴収される
- 還付手続きや追加書類(理由書など)の提出が必要になる
- 従業員の保険証利用に影響が出る可能性がある
これらのトラブルを防ぐため、休業開始後速やかに手続きを進めましょう。
産前産後休業中の社会保険料免除申請書の主な記載内容
申出書には以下の情報を記載します。
- 従業員の氏名・生年月日・基礎年金番号
- 出産予定日
- 出産年月日(出産後に判明したら、速やかに「産前産後休業取得者変更届」を提出しましょう)
- 産前産後休業の開始日・終了予定日
- 子の氏名・生年月日・続柄
期間変更・終了時の手続きと注意点
産前産後休業の期間変更や終了時には適切な手続きが必要です。
手続きを怠ると免除期間に影響が出たり追加の保険料を請求されたりする可能性があります。
以下の3つのケースを事前に把握しておきましょう。
出産日が変わった場合の変更届の対応
出産予定日と実際の出産日がずれ休業期間に変更が生じた場合は「産前産後休業取得者変更届」を速やかに年金事務所へ提出しましょう。
この届け出により実際の出産日に基づいて休業期間が確定し社会保険料の免除期間も正しく調整されます。
産前産後休業終了時の手続き|復帰・育休移行のケース別対応
産前産後休業終了時は届け出が必要なケースと不要なケースがあります。
- 産後8週間を満了して復帰する場合
- 終了届の提出は不要です。
- 年金事務所側も期間満了での復帰を把握しているためです。
- 産後8週間を満了する前に復帰する場合
- 「産前産後休業取得者変更届」を提出しましょう。
- 当初の休業終了予定日が変わるためです。
- 産後休業後に間を置かずに育休へ移行する場合
- 終了届は不要です。
- 育児休業等取得者申出書の提出により一連の休業として扱われます。
- なお詳細は年金事務所に確認しておきましょう。
届出を怠った場合のリスク
届け出を怠ると以下の問題が発生する可能性があります。
- 社会保険料の追徴金
- 免除期間が実際より長く適用され後から保険料をまとめて請求されるケースがあります。
- 事務手続きの煩雑化
- 遡って手続きが必要になり会社側の事務処理が複雑になります。
正確な情報に基づき速やかに届け出を行いトラブルを未然に防ぎましょう。
産前産後休業と育児休業の社会保険料免除制度の比較
ここまで産前産後休業中の社会保険料免除について詳しく見てきましたが、育児休業中の社会保険料免除制度と混同されがちです。
両者には似ている点も多いですが、重要な違いがあります。ここではそのポイントを簡潔にまとめてみましょう。
免除対象期間の違い|産前産後休業と育児休業を比較
- 産前産後休業
- 免除の対象となるのは、出産前後の法律で定められた特定の期間(産前6週間・産後8週間など)です。
- 育児休業
- 原則として、子どもが1歳になるまで(特別な事情がある場合は最長2歳まで延長可能)の期間が対象となります。
社会保険料免除の要件比較|産前産後休業と育児休業の違い
社会保険料が免除されるための条件が、両者で大きく異なります。
- 産前産後休業
- 休業期間中に該当する月の社会保険料は、原則としてすべて免除されます。
- 月の途中で休業が開始・終了しても、その月はまるごと免除の対象となるのが特徴です。
- 育児休業
- 「月末時点で育児休業を取得していること」が原則的な免除要件です。
- また、同じ月内で育児休業を開始・終了し、その日数が14日以上である場合も免除対象となる「同月内14日以上要件」も免除要件です。
社会保険料免除の申請書|産前産後休業と育児休業で異なる提出書類
それぞれの休業に対する社会保険料免除には、異なる申請書が必要です。
- 産前産後休業
- 「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」を提出します。
- 育児休業
- 「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」を提出します。
社会保険料免除の対象|産前産後休業・育児休業の給与・賞与対応
産前産後休業も育児休業も、社会保険料免除の対象となる保険料の範囲は同じです。
どちらの期間中も、月々の給与にかかる社会保険料だけでなく、休業期間中に支払われる賞与にかかる社会保険料も免除の対象となります。
この点は、両制度に共通する大きなメリットです。
産前産後休業と育児休業はそれぞれ異なる制度ですが、いずれも社会保険料の免除が適用されます。
人事担当者として両制度の違いを正確に把握し、従業員への案内と適切な手続きを進めましょう。
まとめ|産前産後休業中の社会保険料免除で押さえるべき実務ポイント
産前産後休業中の社会保険料免除制度は従業員・会社双方の負担を軽減する重要な制度です。
育児休業中の免除とは異なり月末要件が不要で、産休がある月はまるごと免除となる点を従業員に事前に案内しておきましょう。
申請は会社の義務であるため、休業の事実を把握したら速やかに手続きを進めましょう。疑問点は年金事務所や社会保険労務士に確認することをおすすめします。
次回予告|男性育休・産前産後休業の社会保険料免除を実例で徹底解説
次回は産前産後休業から育休へ移行するケースと夫婦でパパママ育休プラスを活用するケースを例に、各期間の社会保険料免除の適用と企業側の手続きを時系列で解説します。
次回の記事は👉実例付き|育休中と産前産後の社会保険料免除の制度完全ガイド
最後までお読みいただきありがとうございました。ご相談の際は、以下よりお気軽にお問い合わせください。☟
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- 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
- 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

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