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2025年 改正育児・介護休業法(13)育児期社員へのテレワーク対応 中小企業が押さえるべき実務対応ポイント 助成金編➁

人材確保等支援助成金(テレワークコース) 法律・労務・業界のインサイト
助成金は積極的に活用しましょう
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前回の記事では、テレワーク導入をサポートする主な助成金制度をいくつか紹介しました。

その中でも、「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」は、特に中小企業にとって活用しやすく、実務的な支援が期待できる制度です。

この助成金にスポットを当てて、2回にわたって、制度の全体像や申請の流れ、さらに申請時に押さえておくべき実務的なポイントを、社労士の視点からわかりやすく解説します。

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人材確保等支援助成金(テレワークコース)の助成金の金額

まず、この助成金が支給されると、以下のように定額で支給額が決まっています。

  • 制度導入助成:1企業あたり 20万円
  • 目標達成助成:1企業あたり 10万円
    • ※ただし、「賃金5%以上アップ」の要件を満たす場合は 15万

つまり、最大で合計35万円の助成金が受けられる仕組みになっています。

以下、「制度導入助成」「目標達成助成」ってなんですか?を見ていきます。

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制度を作り、活用する

人材確保等支援助成金(テレワークコース)は、厚生労働省が所管する助成金制度の一つです。以下の3つの要素が揃った取組みに対して、企業が受けられる支援制度です。

  • テレワーク制度の整備
  • 実際のテレワーク実施
  • 雇用定着の成果(離職率の改善)

つまり、「制度をつくって終わり」ではなく、「制度を活用して成果につなげる」までを支援する、実効性の高い仕組みになっています。

3つの要素に関して1つづつ見ていきましょう。

今回の記事では「テレワーク制度の整備」について解説していきます。(要は制度導入助成のこと)「実際のテレワーク実施」と「雇用定着の成果(離職率の改善)」(要は目標達成助成のこと)に関しては次回の記事で解説する予定です。

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テレワーク制度の整備(制度導入助成)

テレワーク制度の整備と言われても具体的内は?という疑問があってしかるべきだと思います。

以下3つの項目について見ていきましょう。

  1. テレワーク用の就業規則・テレワーク規程の整備
  2. テレワーク機器(パソコン、ルーター、Webカメラ等)の購入(VPNやウイルス対策ソフト等の情報セキュリティ対策も含む)
  3. クラウド型勤怠管理システムや人事評価システムの導入

いずれも「テレワークの実施に直接関係するもの」であることが必要です。たとえば、単なるオフィスリフォームや従業員の福利厚生には使えません。

よくある誤解

「機器を買えば出る助成金」と思われがちですが、実際は “テレワークを会社の制度として整備・運用している” という証拠がないと、機器購入費だけでは対象外になります。

「テレワークの導入に資する取り組み」を、制度(ルール)面と環境(設備)面の両方で行うことが条件です。

つまり、助成金をもらうためには

  • 制度導入(ルール整備)と
  • 環境整備(機器・システム導入)

この 両方の取り組みを行う必要があります。

テレワーク用の就業規則・テレワーク規程の整備

まずは、ルール作りになります。例えば以下のようなを就業規則等で整備します。

  1. テレワーク勤務の対象者と適用条件
    • 「小学校3年生以下の子を育てる社員」「要介護家族を持つ社員」など、誰がテレワークの対象になるか
    • 原則出社勤務とするが、特定の事情がある場合は申請により在宅勤務を認める等のルール
  2. テレワークの勤務時間・労働時間の管理方法
    • 始業・終業時の報告方法(例:チャットや勤怠システムでの打刻)
    • 休憩の取得時間のルール(例:12時〜13時を休憩時間とする 等)
  3. 業務報告・連絡の手段
    • 進捗報告は毎日チャットで実施/週1回のオンライン面談 など
    • 急な連絡は電話・チャット等で対応するルール
  4. 情報セキュリティの確保
    • 業務用PCのみを使用し、個人端末は使用しない
    • データ保存は会社指定のクラウドのみ、USB等での持ち出しは禁止
  5. 費用負担の取り決め
    • 通信費・光熱費等の負担はどうするか(会社が一部支給/自己負担 など)
  6. テレワーク時の労災対応
    • 就業時間中の在宅中事故について、業務との関連性がある場合は労災対象になることなど

テレワーク勤務に関する就業規則や規程を整備することは、企業にとって重要な一歩です。助成金の支給を受けるためには、これらの規則・規程の整備が不可欠です。しかし、それだけでなく、明確なルールを定めておくことは、従業員がテレワークをスムーズに実施できる土台を作ります。これにより業務の効率化や円滑なコミュニケーションが促進され、トラブルを未然に防ぐこともできます。規程の整備は、単なる助成金申請のためではなく、企業運営における大切な基盤となるのです。

テレワーク機器(パソコン、ルーター、Webカメラ等)の購入

続いては、環境整備になります。助成対象になり得るテレワーク機器の具体例は以下の通りです。

ハードウェア機器類(テレワークに必要な物理的機器)

  • ノートパソコン(業務用)
    • テレワーク用に新たに購入するPC(Windows/Mac いずれも可)
    • スペックは「業務遂行に支障がない程度」が求められる
  • Wi-Fiルーター(ポケットWi-Fi含む)
    • 在宅勤務時のネット環境整備のための通信機器
  • Webカメラ・マイク・スピーカー付きヘッドセット
    • Web会議や業務連絡のために必要な周辺機器
  • プリンター・スキャナー(複合機)
    • 在宅でも資料の印刷やスキャンが必要な業務向け
  • モニター(ディスプレイ)
    • 作業効率向上のためのサブディスプレイ(1人1台を超える場合は用途説明が必要)
  • 助成金における注意点
    • 中古品は原則対象外(新品購入が原則)
    • 個人所有機器の使用は対象外(会社が購入・貸与するものに限る)
    • 助成対象外となるものの例:スマートフォン、家具(椅子や机)など

セキュリティ関連機器

  • VPNルーター、VPN接続用アカウント契約
    • 社外からの安全な接続環境を構築するための機器やサービス 
      • ※例:Cisco AnyConnect、FortiClient、IIJセキュアモバイルアクセス など
  • ウイルス対策ソフト(ライセンス費用含む)
    • PCにインストールして使用するソフトウェア。クラウド型も可 
      • ※例:ウイルスバスター ビジネスセキュリティ、ESET PROTECT、Microsoft Defender for Business など
  • その他の情報セキュリティ対策
    • 多要素認証(MFA)導入(例:Google Authenticator, Microsoft Authenticator)
    • BitLockerやFileVaultでのハードディスク暗号化(Windows/Mac)
    • クラウドストレージ利用時のアクセス制限設定(例:Google Workspace, Dropbox Business)
  • 助成金における注意点
    • 単なる個人向け無料セキュリティソフトは対象外
    • 法人契約・業務利用目的での導入が前提
    • 「導入計画書」等に、なぜその対策が必要なのかの理由を記載する必要あり

クラウド型勤怠管理システムや人事評価システムの導入

クラウド型勤怠管理システムや人事評価システムについて、助成対象となり得る具体的な例を以下に示します。ここでは、それぞれの名称例示に留めます。具体的な内容につきましては、各自にてお調べください。

クラウド型勤怠管理システムの具体例

テレワークにおいて「出退勤の記録」や「労働時間の管理」を適正に行うためのクラウドシステムです。

  • KING OF TIME(キンタイム)
  • ジョブカン勤怠管理
  • HRMOS勤怠(ハーモス)
  • freee人事労務

人事評価システムの具体例

テレワーク下でも「目標管理」「業績評価」などを透明かつ効率的に行うクラウドサービスです。

  • カオナビ
  • HRBrain(エイチアールブレイン)
  • あしたのクラウドHR(旧:あしたのチーム)

助成対象となるには…

  • IT導入支援事業者経由の導入が原則(※人材確保等支援助成金以外では特に重要)
  • 単なるExcelやGoogleスプレッドシートの利用は対象外
  • 料金体系は「クラウド利用料(月額/年額)」が助成対象になることが多い

このようなシステムを導入することで、テレワーク環境下でも「勤怠の見える化」「評価の透明性」が実現できます。
導入にあたっては、運用フローとセットで整備することが、助成金の審査でも重要になります。

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制度導入助成の申請に必要な書類(令和7年5月1日現在)

人材確保等支援助成金(テレワークコース)の申請先は都道県労働局です。

以下の書類が必要です。

  1. 助成金交付申請書(様式第1号)
    所定の様式に必要事項を記入してください。
  2. 事業計画書(様式第2号)
    テレワーク導入の目的、実施方法、対象者、導入スケジュールなどを記載します。
  3. 就業規則またはテレワーク規程の写し
    テレワークに関する規定が明記された就業規則や別途作成した規程の写しを提出してください。
  4. 導入予定機器の見積書または購入契約書の写し
    パソコン、ルーター、Webカメラなど、テレワークに必要な機器の購入に関する見積書や契約書の写しを提出してください。
  5. 外部専門家によるコンサルティング契約書の写し(該当する場合)
    外部の専門家にコンサルティングを依頼する場合、その契約書の写しを提出してください。
  6. 振込先口座の通帳の写しまたはキャッシュカードの写し
    助成金の振込先となる口座の情報を確認するため、通帳の写しまたはキャッシュカードの写しを提出してください。

これらの書類は、申請時に必要となります。​申請手続きや書類の提出方法については、最寄りの都道府県労働局または厚生労働省の公式サイトをご確認ください。​

なお、申請に際しては、各書類の記入漏れや不備がないよう、十分に確認してください。​不備がある場合、申請が受理されない可能性がありますので、ご注意ください。

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まとめ

テレワーク制度を整えるための「制度導入助成(20万円)」は、定額支給で経費証明が基本的に不要(全く要らないというわけではない)であるため、比較的ハードルは低いといえます。ただし、実際には就業規則の整備や研修実施、申請書類の準備、労働局とのやりとりなど、一定の手続きや運用体制が求められます。そのため、「簡単に誰でももらえる」というわけではありません。

それでも、初めてテレワークを導入する企業にとっては、導入初期費用の一部を補助してくれる心強い支援制度です。まずはこの制度を活用して環境を整え、助成金活用の第一歩として検討する価値は十分にあります。

次回の記事では、さらに進んだ助成金である「目標達成助成」(10万円~15万円)について詳しく解説します。どうぞお楽しみに。

前回の記事へ⇩

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