2025年・改正育児介護休業法【実務対応編】(12)育児期社員へのテレワーク対応 中小企業が押さえるべき実務対応ポイント 助成金編①

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テレワーク制度を“整える”次の一手──使える助成金、ちゃんと知ってますか?

前回の記事では、2025年改正育児・介護休業法における「テレワーク選択肢の提供(努力義務)」に対応するために、就業規則や社内制度をどのように整備すべきかについてお伝えしました。

しかし、制度を整えるだけでは終わりません。

実際にテレワーク環境を整備しようとすれば、ICTツールの導入やシステムの構築、社内運用の仕組みづくりなど、費用や工数の壁が立ちはだかります。特に中小企業にとっては「費用面の壁」が大きく立ちはだかる場面も少なくありません。

そんなときに、ぜひ知っておきたいのがテレワーク関連の助成金制度です。

今回は、中小企業でも活用しやすい「今使える助成金」を中心に、導入・整備の後押しとなる支援策をご紹介します。今回はあくまで概要を整理してお伝えし、次回以降、各助成金について深掘りしていこうと考えてます。最後までお付き合いください。

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直接的に制度導入を支援する主な助成金はこの2つだけ(2025年4月時点)

2025年4月現在、テレワークに直接関連し、企業の制度導入を支援する助成金制度は次の2つです。

  • 人材確保等支援助成金(テレワークコース)
  • IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)

それぞれの概要とポイントを、実務的な視点から解説します。

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人材確保等支援助成金(テレワークコース)

厚生労働省が所管する助成制度で、就業規則などの制度整備+テレワークの実施+雇用定着の成果を支援するものです。

対象企業

中小企業を含むすべての事業主(※業種・従業員数等による中小企業要件あり)

中小企業の定義は、「中小企業基本法」に基づく定義が適用されます。本助成金を申請するためには、まず自社が中小企業事業主に該当する必要があります。具体的な範囲は業種によって異なり、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

業種資本金の額または出資の総額常時雇用する労働者の数
小売業(飲食店を含む)5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種3億円以下300人以下

対象となる取組内容

  • テレワーク用規程の整備、就業規則の改定
  • テレワーク機器(PC、Wi-Fiルーター、Webカメラ等)の購入
  • クラウド勤怠管理システム・人事管理システム等の導入
  • 情報セキュリティ対策(VPN、ウイルス対策等)

支給額

  • 制度整備助成:20万円
  • 目標達成助成:10万円(※賃金を5%以上引き上げた場合は 15万円)

→ 最大で35万円の助成が可能

ポイント

  • 「制度整備助成」は就業規則やツール整備など“導入の初期段階”を支援
  • 「目標達成助成」は制度導入後、離職率が改善された等の成果に応じて支給
  • 申請前に着手した取り組みは対象外となるため、スケジュールには要注意
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IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)

経済産業省が所管する補助金制度で、業務のデジタル化やテレワークに資するITツール導入に対して補助が行われます。

対象企業

中小企業・小規模事業者(製造業・卸売業・サービス業など)

人材確保等支援助成金の対象中小企業とは少し違います。こちらは、「中小企業基本法に準拠した、中小企業庁の定める定義(経産省)」を使用します。

業種資本金常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業など3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下

対象となる取組内容

  • クラウド型勤怠管理・労務管理システム
  • Web会議システム、グループウェア
  • ファイル共有・業務コミュニケーションツール(例:Google Workspace, Microsoft Teams)

※「IT導入支援事業者」を通じた導入が必須条件です。

補助額・補助率

  • 補助額:5万円~350万円未満
  • 補助率:2/3(小規模事業者は3/4)

ポイント

  • 「パソコンなどのハード」は対象外(原則)
  • システム利用料や設定費用などの「ソフトウェア」に対する補助
  • 年に複数回の公募があるが、事前準備と公募スケジュールの確認が必須
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助成金申請時に注意すべき実務ポイント

ここで紹介した助成金制度は、非常に有益な支援策ですが、次の点に注意が必要です。

①申請前に着手しないこと
多くの助成金制度では、「申請前に契約・購入・導入したもの」は対象外となります。
導入検討中の段階で社労士や支援事業者に相談しておくのがベストです。

②定着率や活用実績が問われる場合がある
テレワーク制度を作って終わりではなく、「実際に利用された」「定着につながった」ことが重要です。
人事・労務の運用面も含めた準備が必要です。

③書類整備・労務管理体制がカギ
特に人材確保等支援助成金では、労働条件通知書、勤怠記録、就業規則、制度説明資料など、整備された記録類が必要となります。

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助成金を活用して「働き方改革」を前進させる

2025年改正育児・介護休業法によって、テレワーク制度整備の重要性が再認識されつつあります。
制度の整備には一定の労力とコストがかかるものの、今回ご紹介した助成金制度を活用すれば、その負担を軽減しながら持続可能な制度運用を実現することが可能です。

特に中小企業では、テレワーク制度の整備が人材定着や採用力の強化にも直結します。

本記事が、自社の制度整備や助成金活用のヒントとなれば幸いです。

今回は、テレワーク導入を後押しする主な助成金制度について、全体像をざっくりご紹介しました。
次回は、その中でも特に注目したい「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」を取り上げて、申請のポイントや実務での活用法を詳しく掘り下げていきます。

「うちの会社でも使えるの?」と思われた方は、ぜひ次回もチェックしてみてくださいね。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご相談の際は、以下よりお気軽にお問い合わせください。☟

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