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令和8年度版|熱中症対策に「働き方改革推進支援助成金」を活用

企業のための熱中症対策 実践講座vol9 労務の基礎知識
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「助成金を使いたいが、どの制度が使えるのかわからない」

そう感じている中小企業の経営者は少なくありません。

熱中症対策に直接使える助成金は限られていますが、「働き方改革推進支援助成金」を活用することで、空調設備・休憩所・省力化機械などの導入費用を最大80%補助してもらえる可能性があります。

この記事では、制度の仕組みから具体的な活用事例まで整理します。

前回の記事は👉熱中症対策の社内教育を内製化する|助成金も活用して低コストで実現

この記事でわかること

  • 働き方改革推進支援助成金が熱中症対策と結びつく理由
  • 熱中症対策の設備導入で補助される金額と対象設備の具体例
  • 助成金を受けるために必要な「制度改善」と「設備導入」のセットの考え方
  • 対象となる中小企業の規模と業種の一覧
  • 実際に助成金を活用した製造業・建設業の具体的な事例

働き方改革が熱中症対策と結びつく理由

職場での熱中症リスクは年々高まっており、特に空調設備が整っていない中小企業の現場では、労働災害として認定されるケースも増えています。

厚生労働省の統計を見ても、毎年多くの労働者が熱中症によって命を落としたり、重篤な健康被害を受けたりしていることは、目を背けてはならない現実です。2024年(令和6年)「職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」

熱中症対策に不可欠な「労働環境の根本改善」

このような喫緊の状況下で、企業に求められるのは、単に「暑いから休憩を増やす」といった一時的・対症療法的な対策だけではありません。

より根本的に、労働環境そのものを改善し、熱中症リスクを構造的に、そして継続的に低減していく視点が不可欠なのです。

そこで、今、注目されているのが、国が推進する「働き方改革」です。

働き方改革は、長時間労働の是正、多様な働き方の推進、年次有給休暇の取得促進などを主な柱としています。

これらの取り組みは、従業員の疲労蓄積を防ぎ、十分な休息を確保し、暑熱にさらされる時間を削減するなど、熱中症対策に繋がる「間接的な効果」をもたらします。

制度改善と設備導入の両面を支援する助成金

しかし、この「働き方改革推進支援助成金」は、単に労働時間や休暇制度といった「働き方の制度改善」を支援するだけではありません。

実は、これらの働き方改革の目標達成に資するものであれば、「生産性向上に繋がる設備・機器等の導入」も助成対象となり得るのです。

これにより、熱中症対策のための空調設備や換気設備の導入、冷房付き休憩所の整備、さらには暑熱環境下での作業負担を軽減する省力化設備の導入など、直接的な「設備投資」も視野に入れることが可能になります。

助成金を使えば、コストを抑えながら対策を加速できる

多くの中小企業にとって、働き方改革の推進も、新たな熱中症対策設備の導入も、コストや人材面での負担が大きいと感じられるかもしれません。

だからこそ、国が用意しているこの「働き方改革推進支援助成金」を賢く活用することの重要性が増します。

この助成金を活用することで、自社の負担を軽減しながら、熱中症対策に資する労働環境改善を、よりスムーズに、そして加速的に進めることができるでしょう。

「暑いから仕方ない」では済まされない時代に、私たちは生きています。

従業員の命と健康を守り、ひいては企業の持続的な成長を実現するためにも、今こそ働き方改革と熱中症対策を一体的に捉え、助成金を賢く活用していくことが、中小企業にとって喫緊の課題であり、同時に大きなチャンスと言えるでしょう。

働き方改革推進支援助成金とはどんな制度か

この助成金は、中小企業が「もっと働きやすい会社に変わろう!」と頑張ることを、国がお金で応援してくれる制度です。

具体的には、今回の熱中症対策に関して、大きく二つのことを目指します。

  1. 残業を減らしたり、有給休暇を取りやすくしたりする「制度の改善」
  2. 制度改善を後押しし、暑熱環境における従業員の負担軽減や作業効率向上によって労働時間の短縮にもつながる「熱中症対策設備の導入」

この二つをセットで取り組むことで、従業員が健康で快適に働ける環境を整え、結果的に熱中症のリスクを低減することが目的です。

熱中症対策の設備導入でいくら補助されるか

「働き方改革推進支援助成金」は、単なる制度変更だけでなく、熱中症対策のための設備投資にも使えます。

なぜなら、快適な職場環境は、従業員の負担を減らし、結果的に労働時間を短縮することにも繋がるからです。

特に「労働時間短縮・年休促進支援コース」では、次のような熱中症対策に役立つ設備を導入した際に、助成金がもらえます。

  • もらえる金額
    • 最大4/5(かかった費用の80%)上限200万円
    例えば、熱中症対策の設備に100万円かかった場合、最大で80万円が助成される可能性があります。
  • 対象になる設備(例)
    • エアコンや冷風機など、職場の温度を下げる空調設備
    • 工場や作業場の熱気を外に出す換気設備
    • 休憩所を涼しくするための冷房設備(冷房付き休憩所の整備)
    • 暑い中での作業負担を軽減し、労働時間を短縮できる機械(例:重いものを運ぶロボットなど、作業効率を上げる省力化設備)

ココが重要!

ただ「エアコンを設置したから助成金をくれ」というだけでは、助成金は支給されません。

この助成金は、「残業を減らす」「有給休暇をもっと取れるようにする」といった会社の目標と、設備導入がしっかり繋がっていることが大切です。

単に設備を入れるだけでなく、それをきっかけに働き方全体を改善する具体的な計画が必要になります。

つまり、「この設備を導入することで、働き方がこう改善され、結果的に熱中症のリスクも減らせます」という一貫したストーリーが求められるのです。

どんな会社が対象になるの?

この助成金の対象は、日本の中小企業です。あなたの会社が当てはまるか、下の表で確認してみましょう。

業種資本金の額または出資の総額常時雇用する労働者数
小売業(飲食店を含む)5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他(製造業、建設業、運輸業など上記以外全て)3億円以下300人以下

補足事項

  • 上記の「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する従業員の数」のどちらか一方でも要件を満たしていれば、中小企業として扱われます。
  • 個別の助成金コースによっては、上記に加えて特定の要件が求められる場合もありますので、申請を検討する際には、必ず厚生労働省の最新の公募要領を確認するようにしてください。

実際に助成金を活用した中小企業の事例

ここまで、「働き方改革推進支援助成金」が熱中症対策のための設備導入にも活用できること、そして「制度改善」と「設備導入」の両面からのアプローチが重要であることをお伝えしてきました。

しかし、実際に「本当にそんなことができるの?」と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、ここでは実際に「働き方改革推進支援助成金」を活用し、熱中症対策と働き方改革を成功させた中小企業の事例を具体的に見ていきましょう。

これらの事例は、あなたの会社が助成金を活用する上での大きなヒントになるはずです。

事例1|製造業A社(工場内の温度改善と残業削減)

製造業A社は、夏場の工場内の過酷な暑さが長年の課題でした。

特に、精密な作業を要する製造ラインでは、高温による従業員の集中力低下や疲労が顕著で、それが熱中症リスクを高めるだけでなく、残業時間の増加にも繋がっていました。

そこでA社が活用したのが、この「働き方改革推進支援助成金」です。

導入内容

  • A社は、酷暑の中での従業員の作業負担を軽減するため、高性能な大型空調設備と効率的な換気システムを工場内に設置しました。
  • これにより、工場全体の温度と湿度を大幅に改善。
  • これにかかった費用は約250万円でした。
  • 同時に、従業員が夏季に計画的に有給休暇を取得できるよう、事前に年間休日計画を立てる制度改善も推進しました。

助成金の活用

  • この設備導入と制度改善により、A社は「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」を申請。
  • 設備費用の最大4/5が助成対象となり、約200万円(上限額)の助成金を受け取りました。
  • 熱中症対策効果
    • 空調・換気設備の導入により、作業環境が劇的に快適になりました。
    • 結果として、従業員の身体的疲労が大幅に軽減され、作業中の集中力も維持できるようになり、熱中症による体調不良者や緊急搬送の発生が激減しました。

働き方改革効果

  • 快適な労働環境が実現したことで、従業員の士気が向上し、作業効率が大きく改善。
  • これにより、同じ生産量でもより短い時間で達成できるようになり、残業時間が大幅に削減されました。
  • 有給休暇の計画的取得も進み、従業員のワークライフバランスが向上し、定着率にも良い影響が出始めています。

事例2|建設業B社(休憩環境の改善と業務効率化)

建設業B社は、夏場の屋外作業がメインであり、熱中症のリスクが非常に高い業種でした。

特に、炎天下での作業は従業員の体力を著しく消耗させ、休憩中のクールダウンも十分にできないことが課題でした。

B社も「働き方改革推進支援助成金」を有効活用し、この課題に取り組みました。

導入内容

  • 夏場の屋外作業が多い特性を踏まえ、現場に冷房完備の「移動式休憩所」を導入しました。
  • これにより、従業員はいつでも涼しい場所でしっかりと休憩を取り、体を冷やすことが可能に。
  • これにかかった費用は約100万円。
  • さらに、暑熱環境での肉体労働を減らすため、手作業で行っていた一部の作業を代替する小型の省力化機械も導入しました。
  • この小型省力化機械にかかった費用は約25万円です。

助成金の活用

  • 移動式休憩所と省力化機械の導入により、B社は「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」を申請。
  • 合計約125万円(休憩所100万円+機械25万円)の設備費用に対し、約100万円(最大4/5)の助成金を受け取りました。

熱中症対策効果

  • 冷房付き休憩所のおかげで、従業員は確実に体を深部から冷やすことができるようになり、熱中症による体調不良者が減少しました。
  • また、省力化機械の導入により、高温下での肉体的な負担が軽減され、作業員一人ひとりの熱中症リスクが大幅に低減しました。

働き方改革効果

  • 休憩環境の改善は従業員の満足度を高め、作業効率が向上した結果、現場の労働時間が短縮され、特に暑い時間帯の過重労働が解消されました。
  • 従業員の負担軽減は、離職率の低下にも繋がり、人材確保の面でも好影響が出ています。

これらの事例からもわかるように、「働き方改革推進支援助成金」は、単なる労働時間削減の支援にとどまらず、熱中症対策のための具体的な設備投資と結びつけることで、企業の労働環境を劇的に改善し、従業員の健康と安全、そして企業の生産性向上を同時に実現する強力な制度だと言えるでしょう。

まとめ|制度と設備をセットで考えることが成功の鍵

働き方改革推進支援助成金は、制度改善と設備導入をセットで取り組むことで、熱中症対策の費用を最大80%補助してもらえる制度です。

「エアコンを設置したいだけ」では対象になりません。

残業削減や休暇取得促進といった働き方改善の計画と組み合わせることが成功の鍵です。

次回は、実際の申請手順と必要書類について解説します。

次回予告|働き方改革推進支援助成金の申請手順について深掘り

次回は、今回学んだ「働き方改革推進支援助成金」を実際に申請する際の、より実践的な情報に焦点を当てます。

助成金をスムーズに受け取るための申請の具体的なポイントや、忘れずに確認しておきたい必要書類、そして最も重要な申請期限についても詳しく解説します。

次回の記事は👉中小企業の熱中症対策|働き方改革推進支援助成金の活用法

ぜひ続けて読んでみてください。

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戸塚淳二
この記事を書いた人
  • 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
  • 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

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