副業社労士の日常vol4(副業社労士の静かな退職に関する考察1)

スポンサーリンク
副業社労士の日常vol4 副業社労士の日常
静かな退職についての考察
スポンサーリンク
スポンサーリンク

こんにちは。副業社労士の戸塚淳二です。

今回は、「ちょっと『副業社労士の日常』ですか?これは」という話なのです。

というのも、駅の売店の雑誌の見出しなど、その他どこで?と聞かれても、どこでだっけ?としか答えられないような言葉なのですが、「静かな退職」について書きたいのです。

気になってしょうがないのです。おそらく、私自身がそうだからなのかもしれません。

1話では終わりそうにありません。ちょっと堅苦しい話になるかもしれませんが、お付き合いください。

スポンサーリンク

巷でささやかれる「静かな退職」とは?

最近、SNSやニュースで「静かな退職(クワイエット・クィッティング)」という言葉を目にする機会が増えました。

この耳慣れない言葉が何を意味するのか、漠然とした不安を感じたり、「もしかして、自分もそうかも?」「周りに当てはまる人がいる?」と心当たりがあったりする人もいるのではないでしょうか。

「退職」と聞くと、会社を辞めること、つまり職場から完全に去ることを想像しませんか?

しかも、「静かな退職」というくらいだから「いつの間にか会社からいなくなる」という物理的な意味合いで、最初は皆さんもとらえた方も多いのではないでしょうか。

しかしながら、従来の「退職」とはまったく異なる、現代の働き方に潜む、より複雑な現象を指しています。実際に会社を辞めるわけではないのに、なぜ「退職」という言葉が使われるのか、疑問に感じるかもしれません。

「静かな退職」はアメリカ発、TikTokで世界に拡散

この「静かな退職」という概念は、実はアメリカで生まれます。そして、特に2022年頃から動画投稿アプリ「TikTok」を通じて世界中に広まりました。若者を中心に「Quiet Quitting」というハッシュタグが使われた動画が多数投稿され、共感を呼び、瞬く間に社会現象となります。

あなたは「静かな退職」の渦中にいますか?

実を言うと、私自身もこの「静かな退職」という現象に深く関心を持っています。ですからこの記事を書こうと思ったわけですが・・・

「頑張って認めてもらいたい」「そして給料を上げてもらいたい」以前は当然のようにそのように考えて日々仕事をしておりました。しかし、ある出来事をきっかけに、その考えははっきりと自分の中から消え去りました。

このことは別の記事(社会保険労務士試験合格体験記シリーズ)を読み進めていただければ、と思います。

本業は日々一生懸命こなしていますが、正直なところ、以前のように出世や昇給のためにがむしゃらに頑張ろうという気持ちは、もはやありません。

同時に、副業として社会保険労務士として活動する中で、多くの働く人たちの声を聞き、この現象が単なる個人の問題ではないことを痛感しています。

この記事では、「静かな退職」が具体的に何を意味するのか、そしてなぜ今、これほど多くの人がこの状態に陥っているのかを深掘りしていきます。そして、この現象が私たちの働き方や企業に何をもたらし、私たちはどう向き合っていくべきかについても、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

スポンサーリンク

「静かな退職」の定義と、従来の働き方との決定的な違い

「静かな退職」という言葉を聞いて、「結局、仕事をサボっていること?」とか、「無気力な状態を正当化しているだけでは?」と感じる人もいるかもしれません。

しかし、その本質は、そう単純なものではありません。まずは、この現象が具体的に何を指し、従来の働き方や他の一般的な労働問題とどう異なるのかを明確にしていきましょう。

「静かな退職」の明確な定義

「静かな退職」とは、従業員が与えられた業務はこなし、責任も果たしますが、それ以上の自発的な努力や貢献はしない状態を指します。

具体的には、以下のような特徴が見られます。

  • 最低限の業務遂行
    • 自分の職務記述書(ジョブディスクリプション)に書かれたこと、あるいは指示されたことだけを忠実に実行します。
  • 「それ以上」の努力の拒否
    • 昇進のための過度な努力、残業による貢献、自発的なスキルアップ、職務範囲外のヘルプ、会社のイベントへの積極的な参加など、「期待されるが義務ではない」とされる行動は行いません。
  • 昇進や評価への意欲の欠如
    • 出世や高評価、それに伴う給与アップへの強いモチベーションを持たず、現状維持で満足します。
  • 仕事への感情的なコミットメントの低さ
    • 会社や仕事に対して情熱や強い愛着、使命感を持たず、あくまで「生活のための手段」と割り切ります。

重要なのは、実際に会社を辞めるわけではないという点です。従業員は会社に籍を置き続け、給与を受け取りながら、自身の「割り切り」の中で仕事を続けます。

👆社労士試験時代のテキスト・問題集はLECにお世話になりました。

「燃え尽き症候群」や「大退職時代」との決定的な違い

この「静かな退職」は、過去に話題になった他の労働問題と混同されがちですが、その根底にある心理や行動は大きく異なります。

「燃え尽き症候群(バーンアウト)」との違い

  • 燃え尽き症候群は、1970年代前半、アメリカの精神科医フロイデンバーガーにより提唱された概念です。これは仕事への過度な情熱や努力が報われず、心身が極度に疲弊した結果、意欲を完全に失い、精神的な問題に陥る状態を指します。
  • いわば、「頑張りすぎた結果、心身が壊れてしまった」という、コントロール不能な側面が強い現象です。
  • 対して「静かなる退職」は、自らの意思で「これ以上は頑張らない」と線引きをする、意識的な選択や自己防衛策としての側面が強いのが特徴です。心身が壊れる前に、自らペースを落とすことで、持続可能な働き方を模索していると言えます。

「大退職時代(グレートレジグネーション)」との違い

  • 「大退職時代」は、特にパンデミック中にアメリカなどで見られた、多くの従業員が実際に会社を辞めて転職したり、キャリアチェンジしたりする動きを指します。
  • 不満やより良い労働条件を求めて、具体的な「離職」という行動に出るのが特徴です。しかし「静かな退職」は、会社に籍を置き続けることを前提としています。
  • 彼らは「辞める」のではなく、「会社でできるだけ労力を費やさずに、生活の基盤を維持する」という選択をしています。これは、「現状維持」をしながら、自身の幸福や精神的安定を優先するという、より繊細なアプローチと言えるでしょう。

要するに、「静かな退職」とは、過度な競争や期待から距離を置き、自身の心身の健康とワークライフバランスを守るために、「あえて頑張りすぎない」という個人の選択なのです。それは、現代の働く人々が、仕事と自身の人生に対する向き合い方を根本的に見直している証拠とも言えるでしょう。

スポンサーリンク

なぜ「静かな退職」は起きるのか?~多角的な背景要因と「やりがい搾取」の問題

では、なぜ「静かな退職」を選ぶ人がこれほど増えているのでしょうか? この現象は、決して個人の「やる気の問題」だけで片付けられるものではありません。企業、個人、そして社会全体の複数の要因が複雑に絡み合って生まれる、現代社会のひずみが表れたものだと考えられます。

1. 企業側の要因 従業員の熱意を削ぐ「慢性的な病」

従業員が「静かな退職」に至る背景には、企業の側に存在する構造的な問題が深く関係しています。

👆自宅以外の仕事場に◎ 今話題のレンタルオフィスはこちら

不適切な労働環境と評価制度への不満

  • 長時間労働が常態化しているにもかかわらず、それが正当に評価されない、あるいは報酬に結びつかないという状況は、従業員のモチベーションを著しく低下させます。
  • 不透明な評価基準や、頑張っても報われないと感じる環境では、「どうせ頑張っても無駄だ」という諦めの感情が芽生えやすくなります。

閉塞感のあるキャリアパス

  • 企業内で明確なキャリアビジョンを描けない、あるいは成長の機会が見出せない場合、従業員は仕事への意欲を失いやすくなります。
  • 昇進のポストが限られていたり、スキルアップのための支援が不足していたりすると、目標を失い、与えられた業務をこなす以上の意欲が湧きにくくなります。

マネジメントの課題

  • 上司とのコミュニケーション不足、部下の意見に耳を傾けない姿勢、心理的安全性の低い職場環境、あるいはハラスメントの放置なども、従業員のエンゲージメントを低下させる大きな要因です。
  • 信頼関係が築けない環境では、従業員は自ら進んで貢献しようとは考えにくくなります。

【特に重要視】「やりがい搾取」の蔓延

  • これは「静かな退職」を引き起こす、近年特に顕著な要因の一つです。企業が「やりがい」や「成長」という言葉を都合よく利用し、従業員の熱意や善意に付け込んで、低賃金・長時間労働を強いる風潮が広がっています。
  • 「好きでやっているんだから残業は当然」「経験になるから多少の無償労働は仕方ない」といった言葉で、本来支払われるべき対価や、労働時間外の努力を軽視する傾向が常態化しているケースも少なくありません。
  • 従業員は、初めは「やりがい」を感じて頑張っていても、それが適切な評価や報酬に結びつかないと、「もう、これ以上は報われない」「自分の熱意が利用されているだけだ」と見切りをつける結果、「静かな退職」へと至るのです。

👆副業見つけるなら!スキルコンシェルジュで、あなたに合う理想の働き方へ。

2. 個人の価値観の変化 「仕事=人生のすべて」ではない時代

現代の若い世代を中心に、個人の働き方や幸福に対する価値観が大きく変化していることも、「静かなる退職」を後押ししています。

ワークライフバランスの絶対的な重視

  • かつてのように仕事が人生の中心であり、プライベートを犠牲にすることに抵抗がないという人は減りました。
  • 心身の健康や自由な時間を何よりも大切にし、仕事のために過度なストレスや負担を抱えることに強い抵抗を感じるようになっています。

自己実現の場の多様化

  • 会社内での出世や昇給だけが、唯一の成功軸ではありません。インターネットやSNSの普及により、副業でのスキルアップ、趣味の深掘り、地域活動への参加、あるいは別のスキル習得など、自己実現の場が無限に広がりました。
  • 私自身も、本業以外に社会保険労務士としての副業で自己成長や社会貢献の場を見出しています。本業は安定的な生活基盤と割り切り、情熱や時間を副業やプライベートに注ぐという選択は、まさにこの多様な自己実現の一例です。

「鶴の一声」への嫌悪感と主体性の回復

  • これは私の個人的な経験とも深く結びついています。「とある人の思いついたような鶴の一声ですべてが決まってしまう」という、理不尽で不透明な決定に嫌気がさしたのが大きなきっかけです。
  • 自分の努力やキャリアが、個人の気分や都合で簡単に左右される現実に直面したとき、「こんなことで自分の人生が左右されるのは馬鹿馬鹿しい」と感じるようになります。
  • 会社へのロイヤルティはもはやなくなり、「いつでも自分から組織から飛び降りれる状態にしておきたい」と考えるに至ります。
  • これはまさに、会社に依存せず、自身の人生の主導権を取り戻そうとする、極めて合理的な自己防衛策であり、「静かな退職」を選ぶ大きな動機となるでしょう。

3. 社会全体の変化 不確実な時代を生き抜く戦略

経済の不確実性の高まりや、終身雇用神話の崩壊も、「静かなる退職」の背景にある要因です。

会社への過度な依存の回避

  • いつ会社が倒産したり、リストラが行われたりするかわからない時代において、一つの会社に過度に依存することはリスクであるという認識が広がっています。
  • であれば、会社のために身を粉にして尽くすよりも、自分のスキルを高めたり、複数の収入源を持ったりして、個人の市場価値を高める方が賢明だと考えるのです。

パンデミックによる価値観の変化の加速

  • 新型コロナウイルスのパンデミックは、多くの人々に働き方や人生について深く考えるきっかけを与えました。
  • リモートワークの普及などで、仕事と生活の境界線が曖昧になる中で、改めて自身の健康やプライベートの重要性を再認識し、「静かな退職」という選択肢が浮上しました。

「静かな退職」は、これらの多岐にわたる要因が絡み合い、決して個人の怠惰や無気力だけで説明できるものではありません。むしろ、現代の企業が抱える課題と、それに適応しようとする個人の賢明な選択が融合した結果として捉えるべきでしょう。

思っていたより、かなり長くなりました。続きは次回。

では、また。ご拝読ありがとうございました。

コメント