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4週4休で「48連勤」は適法?――連続勤務の労災リスクと2026年法改正動向

4週4休で48連勤 社労士の視点・コラム
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「4週4休(変形休日制)を導入し、振替休日の手続きも万全。休日割増賃金も発生していない。だから、どれだけ連勤が続いても法的には『問題ない』はずだ」

現場の切実な人手不足を背景に、こうした解釈でなんとかシフトを回している中小企業の経営者は少なくありません。

しかし今、この「法的な隙間」に依拠した労務管理が、大きな転換点を迎えています。

※本記事は、2026年5月時点で厚生労働省の審議会・研究会等で議論されている内容をもとに構成しています。実際の法改正の有無・施行時期・具体的内容については、今後の法案審議等により変更される可能性があります。

この記事で分かること

  • 4週4休でも理論上「48連勤」が成立するカラクリ
  • 「適法」でも労災認定される具体的な事例と理由
  • 2026年以降に議論されている連続勤務規制の動向
  • 中小企業経営者が今すぐ取り組むべき3つのリスク回避策

動き出し、いま足踏みする「40年ぶり」の労働基準法改正議論

厚生労働省の有識者研究会「労働基準関係法制研究会」は、労働基準法の抜本的な見直しに向けた議論を進め、2025年に報告書をまとめました。

ただし2025年12月、政府は2026年通常国会への改正案提出を見送る方針を固めたと報じられており、議論は現在「調整局面」に入っています。

その中心的なトピックとして注目されているのが、昭和62年の改正以来、約40年間維持されてきた「休日規定」のアップデートです。

具体的には、従来の「4週4休」の運用を見直し、連続勤務日数の制限を含む仕組みの導入が提言されています。

「適法」と「安全」はイコールではない

たとえ現在の条文上で形式的に適法と解釈される運用であっても、従業員が健康を害した際、裁判所や労災認定の現場では全く別の物差しで判断されます。

労災認定基準において、連続勤務は「強い身体的・精神的負荷」として評価される重要な指標です。

法令上の体裁を整えるだけで長期連勤を常態化させることが、発症時には企業の存続を揺るがす「安全配慮義務違反」という甚大なリスクを招きかねません。

「知らなかった」では済まされない、連続勤務に潜む真実と、2026年以降の改正動向を見据えたリスク管理の要諦を解説します。

法律上はギリギリ白でも、労災的にはほぼ黒――その現実を直視してください。

理論上の「48連勤」が成立するカラクリとその危うさ

なぜ、現代の労働法下で「48連勤」などという耳を疑うような数字が飛び出すのでしょうか。

そこには、労働基準法第35条が定める休日の原則と、その「特例」が作り出す構造的な隙間があります。

労働基準法第35条の「特例」とは

労働基準法第35条第1項では、「毎週少なくとも1回の休日」を与えることが原則とされています。

しかし、第35条第2項には、変形休日制という特例が設けられています。

4週間を通じ4日以上の休日を与えること

この規定を導入している場合、4週間(28日間)の枠内で合計4日の休みがあれば、どのタイミングで休ませても法的には「休日を与えた」とみなされます。

理論上の極端例|なぜ「48連勤」という数字が生まれるのか

この特例を極限まで活用し、2つの「4週間ブロック」を連結させると、以下の図のようなスケジュールが理論上は成立してしまいます。

※以下は、労働基準法第35条の構造を説明するための「理論上の極端な例」です。実際の運用では、安全配慮義務・長時間労働規制・労災リスク等から、現実的に推奨されるものではありません。

第1ブロック|最初の4週

まずは最初の4週間。ここで「4日の休日」を冒頭に固めてしまいます。

1週目
2週目
3週目
4週目

第2ブロック|後半の4週

次に、続く第2ブロックの4週間。今度は「4日の休日」を最後に持っていきます。

5週目
6週目
7週目
8週目

48連勤が発生する仕組み

2つの表を繋げて確認すると、第1ブロック後半の24日間と、第2ブロック前半の24日間が連続することで、合算して「48日間」の休日がない期間が出現します。

それぞれの「4週間」という枠内(ブロック内)で見れば、いずれも4日の休日が確保されているため、形式上の計算においては法に抵触しないという理屈が成り立ちます。

しかし、このパズルのような運用を現場で維持するためには、極めて緻密な労務管理が求められることになります。

【実務的注意点】その運用、実は「薄氷の上」ではありませんか?

「条文の計算上は可能」という点だけに依拠してこの運用を継続するのは、実務的にはリスクが高いと言わざるを得ません。

この状態を適法に維持するためには、以下の条件を完璧に満たし続ける必要があるからです。

  1. 就業規則への明記と起算日の特定(総務担当者に確認すべきポイント)
    • 「4週間を通じ4日」とする変形休日制を就業規則に定め、さらに「4週間の起算日」を明確に特定していなければなりません。
    • これが曖昧なままでは、単なる「毎週1休」の原則違反となります。
  2. 振替手続きの厳格な運用
    • 休日を労働日に振り替える場合、原則として「前日まで」に振り替えるべき日を特定して通知する必要があります。
    • 事後的に「忙しかったから後で休ませる(代休)」という処理をしてしまえば、その瞬間に法定休日未付与の違法状態が確定します。
  3. 他の法規制との衝突
    • 休日数はクリアできても、36協定の上限時間(残業時間)や、深夜労働の割増賃金、さらには安全配慮義務といった「別の法律・基準」によって、結局は立ち行かなくなるケースがほとんどです。

「48連勤」という数字は、あくまで条文上の極端な解釈を可視化したものです。

この状態を現場で実践することは、組織管理において極めて不安定なリスクを抱え続けることを意味します。

「形式的な適法」を打ち消す、労基署と労災のリアル

「48連勤」のようなスケジュールは、あくまで条文上のパズルを解いたに過ぎません。

実務において最も恐ろしいのは、書類上の計算で「白」であっても、現場の実態や結果(健康障害)によっては「黒」と判断されるリスクが厳然と存在することです。

労基署の是正勧告|形式が正しくても「実態」が見られる

「4週4休の枠内だから問題ない」という主張は、必ずしも労働基準監督署に通じるわけではありません。

監督署は、形式的な休日数だけでなく、労働の実態を総合的に判断します。

例えば、連勤によって長時間労働が常態化していたり、振替休日の運用が場当たり的で「休息として機能していない」と判断されたりすれば、指導や是正勧告の対象となります。

「条文の文言通りに運用している」という形式論だけでは、行政の厳しい監督から会社を守り切ることはできないのが現実です。

労災認定基準との決定的なズレ

さらに深刻なのが、万が一に従業員が脳・心臓疾患などを発症した際の「労災認定基準」との乖離です。

厚生労働省が定める「脳・心臓疾患の労災認定基準」においても、休日の欠如や長期間の連続勤務は、業務による身体的・精神的負荷を判断する重要要素として位置づけられています。

※参考:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準」

厚生労働省の有識者研究会「労働基準関係法制研究会」がまとめた報告書でも、14日以上の連続勤務を禁止する案が盛り込まれています。

ただし、これは研究会の報告書段階での提言であり、法改正として確定した内容ではありません(詳細は後述)。

  • 適法かどうかの物差し: 労働基準法(4週4休ならセーフ)
  • 命を守る物差し: 労災認定基準(長期連続勤務は強い負荷要因として評価されやすい)

この2つの物差しには大きなズレがあります。

実例|連続勤務が決め手となった労災認定事例

厚生労働省が公表している「脳・心臓疾患の労災認定に係る参考事例集」(令和5年)には、連続勤務が認定の決め手となった事例が複数収録されています。

そのうちの一例として、警備員として勤務していた労働者が心停止(心室細動)を発症したケースがあります。発症日は連続勤務11日目であり、それ以前も1日の休日を挟んで15日間の連続勤務に従事していました。所定の時間外労働時間数は「過労死ライン」を大幅には超えていなかったものの、「休日のない連続勤務」が業務の過重性を評価する重要な要素として認定の根拠となりました。

また別の事例では、ネットワークエンジニアが急性心筋梗塞で死亡したケースで、発症前1週間を含む12日間の連続勤務が認定の重要な判断材料となっています。

これらはいずれも、時間外労働時間数だけでは「過労死ライン」に届かないケースです。にもかかわらず、連続勤務という事実が業務の過重性を押し上げ、労災認定につながっています。

「4週4休の枠内だから問題ない」という形式論が、こうした場面では全く通用しないことがわかります。

※出典:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定に係る参考事例集」(令和5年3月、脳・心臓疾患の労災認定に係る参考事例集の活用について/事務連絡 2023(令和5)年3月29日(別添・脳・心臓疾患の労災認定に係る参考事例集) | 全国労働安全衛生センター連絡会議

安全配慮義務の重み|民事賠償リスクは回避できない

労災が認定される事態となれば、次に問われるのが企業の「安全配慮義務違反」です。

裁判所は、会社が労働基準法を遵守していたかどうかだけで判断を下すわけではありません。

「これほどの連勤が続けば、健康を害するリスクがあることを予見できたはずだ」と判断されれば、多額の損害賠償を命じられることになります。

過去の判例を見ても、「法的には適法な運用だった」という反論が、民事上の賠償責任を免れる盾になることはほとんどありません。

「法適合(コンプライアンス)」と「リスク管理(健康経営)」は、全く別次元の話として捉える必要があるのです。

2026年以降の法改正議論|「14日連勤制限」は導入されるのか

厚生労働省の研究会報告書で示された労働基準法改正の論点の中でも、実務に最も直結すると予想されるのが「連続勤務日数の制限」です。

なお、2025年12月にはこの改正案について2026年通常国会への提出が見送られたと報じられており、施行時期は当初の想定より後ろ倒しになる可能性があります。ただし議論自体が撤回されたわけではなく、2026年夏頃にまとめられる政府方針を踏まえて、改めて法案提出のタイミングが検討される見通しです。

長年、現場では「4週4休」の枠内であれば、前述したような長期連勤が事実上の管理外に置かれてきました。

しかし、過労死防止や従業員の健康確保(休息権)の観点から、この「ルールの隙間」を埋めるための検討が進められてきました。

検討されている論点|連続勤務日数の制限強化

研究会の報告書では、長期間の連続勤務を抑制する方向性が論点の一つとなっており、その中で「14日以上の連続勤務」を問題視する考え方が示されています。

仮にこの方向で制度化された場合、振替休日の手続きが正しくても36協定の範囲内であっても、14日以内の休日確保が求められ、「繁忙期だから後でまとめて休ませる」といった従来型の調整は見直しを迫られます。

「スライド14日間」という厳格な管理の可能性

経営判断として特に注目すべきは、その管理手法です。

単に「1週間に1日」といった固定された枠での判断ではなく、「どの14日間を切り取っても、その中に必ず休日が含まれていなければならない」という、いわばスライド方式(ローリング方式)の考え方が浮上しています。

この方式が採用された場合、特定の「起算日」から計算する現在の管理手法だけでは不十分です。

常に「今日から遡った14日間」をチェックし続ける必要があり、シフト作成の難易度は飛躍的に高まるでしょう。

実務家としての視点|現在は「注視すべきフェーズ」

ただし、一点強調しておかなければならないのは、これらの内容はあくまで現時点での「改正に向けた議論・提言」の段階であるということです。

実際の法文としてどのような表現になるのか、あるいは業種別の猶予期間や特例が設けられるのかなど、詳細は今後の国会審議や指針の策定を待つ必要があります。

現段階では焦って制度変更する必要はありませんが、現在のシフト管理体制が将来の規制強化に対応できるか、今から確認しておくべきフェーズです。

企業が今から取り組むべき「リスク回避」の3ステップ

法改正の足音が近づく今、経営者や総務担当者が取るべき行動は「施行を待つ」ことではありません。

改正が現実のものとなった際、現場がパニックに陥らないよう、今から段階的に進めるべき3つの具体的なリスク回避策を提案します。

ステップ1|連勤アラートの「先行導入」

法律で義務化される前に、社内ルールとして「13連勤以内」でシフトを回す仕組みを先行して導入しましょう。

  • システムの活用
    • 勤怠管理システムにアラート機能を設定し、10連勤を超えた時点で本人と管理者に通知が飛ぶようにします。
  • 「14日」ではなく「13日」
    • 法律の限界ギリギリを狙うのではなく、1日のバッファ(余裕)を持たせることで、急な欠員によるシフト変更時にも法違反を回避できる柔軟性を確保します。

ステップ2|振替運用の再点検と「代休依存」からの脱却

長期連勤が発生する原因の多くは、休日の「振替手続き」の形骸化にあります。

  • 「事後的な代休処理への過度な依存」は、法定休日管理上のリスクを高める要因
    • 休日出勤させた後に「来週休んでいいよ」とする代休処理は、法定休日未付与のリスクを伴います。
    • 必ず、労働日と休日を事前にセットで入れ替える「振替休日」を徹底してください。
  • 手続きのデジタル化
    • 振替休日の「事前特定」が漏れないよう、申請フローをシステム化し、休日出勤の申請時に必ず振替日を入力させる運用へと切り替えます。
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ステップ3|属人化の解消による「持続可能なシフト」への転換

「あの人しかこの作業ができないから、休ませられない」——。連勤が常態化する最大の根本原因は、業務の属人化にあります。

多能工化(マルチスキル化)の推進

  • 特定の従業員に依存している業務をマニュアル化し、他のスタッフでも対応できるように教育を進めます。
  • まず自社のシフトを見渡し、「この人がいないと回らない」曜日・時間帯・業務を書き出すことから始めてください。
  • 次に、その業務を3つに分類します。
    • 今すぐ他の人に教えられるもの
    • マニュアル化すれば引き継げるもの
    • どうしても一人に依存せざるを得ないもの
  • 最初の2つから着手するだけで、連勤リスクの高い「属人ポイント」は大幅に減らせます。3つ目については、採用・育成計画の優先課題として経営判断に上げてください。
  • 組織の持続可能性
    • 今後、連続勤務に対する規制強化が進む可能性を踏まえると、「属人化した組織」ほど、人手不足と法対応の両面で課題を抱えやすくなるでしょう。
    • 今のうちに業務を標準化することは、法改正対策であると同時に、人手不足に強い組織を作るための「攻めの投資」でもあります。

まとめ|法改正を「組織改善」のチャンスに

「4週4休の枠内だから、連勤が続いても問題ない」

こうした形式的な解釈については、現在、見直しの方向で議論が進められています。

本来、労働基準法が目指しているのは「毎週少なくとも1回の休日」という、人間が健やかに働くための当たり前のリズムです。

今回の「14日連勤制限」の議論は、例外規定によって生じていた「48連勤」のような不自然な運用を、本来の原則へと引き戻すための強力な是正措置といえます。

経営者が今、直視すべきこと

法改正の施行時期は不透明になりましたが、「連続勤務が長期化すれば労災・安全配慮義務リスクが高まる」という構造自体は、法改正の有無にかかわらず既に存在しています。企業が向き合うべき現実は明確です。

  • 数字上のつじつまが合っていても、従業員の健康を害せば企業の社会的責任は免れません。
  • 「本来の筋」への回帰
    • 週1回の休日を基本とし、例外的な連勤であっても長期化を防ぐ管理体制を築くことは、今後の企業経営において極めて重要な課題になっていくでしょう。

法改正は、単なる規制の強化ではありません。人手不足が深刻化する中で、「安心して働ける環境」を整えることは、優秀な人材を惹きつけ、定着させるための最大の武器になります。

「法律が変わるから対応する」のではなく、「本来あるべき週休制の原則に立ち返り、持続可能な組織へとアップデートする」。

そんな前向きな姿勢こそが、これからの時代に選ばれる企業の姿ではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご相談の際は、以下よりお気軽にお問い合わせください。☟

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戸塚淳二
この記事を書いた人
  • 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
  • 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

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