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【企業向け徹底解説】年次有給休暇の計画的付与制度・基礎と導入ステップ

年次有給休暇 計画的付与制度の基礎 労務の基礎知識
計画的付与の導入について
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本記事は「知っておきたい!年次有給休暇のすべて」シリーズのvol4です。

vol1は👉年次有給休暇の基本と付与のルール(企業担当者|中小企業経営者向け)

前回は、「労働者の年次有給休暇の時季指定権」と「企業側の時季変更権」について詳しく解説しました。

前回の記事は👉【企業向けガイド】有給休暇の取得希望と会社の対応|時季指定権・時季変更権の正しい運用法

今回は、会社が有給休暇の取得日を一部指定できる「計画的付与制度」について解説します。

「有給を取りたいけれど周りの目が気になる」という従業員と、「有給消化率を上げたいが業務が回らなくなるのは困る」という企業――双方の課題を解決できる可能性があるのが、この計画的付与制度です。

この記事で分かること

  • 有給休暇の「5日を超える部分」を会社が決められる?計画的付与制度の仕組みと法的根拠
  • 企業・従業員、双方にとってのメリットとは?消滅時効対策にもなる意外な効果
  • 就業規則にどう書く?そのまま使える条文サンプルと、文言ごとの解説
  • 労使協定に必ず書くべき5つの項目、実務で見落としがちな注意点とは
  • 導入はどう進める?検討から労基署への届出まで、4つのステップで解説

企業向け解説|有給休暇の計画的付与制度とは?目的・メリットを徹底解説

2019年4月の働き方改革関連法以降、政府は年次有給休暇の確実な取得など、ワークライフバランスの向上を後押ししています。

従業員が気兼ねなく休みを取り、心身をリフレッシュできる環境を整えることは、企業の生産性向上にも直結します。

そんな中で注目されているのが、有給休暇の計画的な取得を促す計画的付与制度です。

計画的付与制度の概要と仕組み|有給休暇を企業が計画的に割り振る方法

計画的付与制度とは、労働基準法第39条第6項に基づいて、労働者が持つ年次有給休暇のうち5日を超える部分について、企業が労働者との間で労使協定を結ぶことで、計画的に取得日を割り振れる制度です。

これは、年次有給休暇を「従業員が請求したときに与える」という原則から一歩踏み込みます。

そして、企業側が主導して有給休暇の取得日をあらかじめ定めることができる点が特徴です。

ただし、最低5日間の有給休暇は、従業員が自由に取得できる日として残しておく必要があります。

計画的付与制度を導入する目的

この制度を導入する目的は、主に以下の3点です。

  • 労働者の年次有給休暇取得促進
    • 従業員が「有給を取りたい」と考えていても、業務の都合や周囲への遠慮からなかなか申請できないケースは少なくありません。
    • 計画的付与により、企業側が取得日を定めることで、従業員は気兼ねなく有給休暇を取れるようになります。
  • 企業側の業務計画の安定化
    • 従業員が各自でバラバラに有給を取得すると、業務の繁閑時期に人員が不足したり、突発的な欠員が生じたりして、業務に支障が出る可能性があります。
    • 計画的付与によって、企業はあらかじめ人員配置や業務計画を立てやすくなります。
  • 有給消化率の向上
    • 上記の理由から、結果として企業全体の有給休暇消化率の向上が期待できます。
    • これは、企業のコンプライアンス遵守だけでなく、従業員のワークライフバランス向上にも繋がります。

企業と従業員双方が得られる計画的付与制度のメリット

計画的付与制度は、単に企業の義務を果たすためだけではありません。

企業と労働者の双方にとって大きなメリットをもたらします。

企業側のメリット

  • 業務の繁閑に合わせた休暇取得の促進
    • 年末年始やゴールデンウィーク、夏季休暇など、比較的業務が落ち着く時期に有給休暇を充てることで、効率的に有給消化を進められます。
  • 計画的な人員配置と業務遂行
    • あらかじめ休暇取得日が決まっているため、人員配置やプロジェクトの進行計画が立てやすくなり、業務の停滞を防げます。
  • 突発的な欠勤の減少
    • 計画的に有給消化が進むことで、従業員が無理なくリフレッシュでき、病欠など突発的な欠勤の減少にも繋がります。
  • 年5日取得義務化への対応
    • 労働基準法で義務付けられている「年5日の有給休暇取得」を確実に達成するための有効な手段となります。
    • 未取得による罰則リスクを軽減できるでしょう。

労働者側のメリット

  • 遠慮なく有給休暇が取得できる
    • 会社が取得日を指定してくれるため、上司や同僚に気を遣うことなく、堂々と有給休暇を取ることができます。
  • リフレッシュ機会の確保
    • 定期的に休暇が確保されることで、心身のリフレッシュが促され、モチベーション維持や生産性向上に繋がります。
  • 家族や友人との予定が立てやすい
    • 計画的に休暇日が決まることで、家族旅行や友人とのイベントなど、プライベートな予定を立てやすくなります。
  • 有給の消滅時効(2年)対策
    • 有給休暇には2年間の消滅時効があります。計画的付与によって定期的に消化できるため、「せっかくの有給が消滅してしまった」という事態を防ぎやすくなります。

このように、計画的付与制度は、単なる法令遵守のツールではなく、労使双方にとってWin-Winの関係を築き、より良い職場環境を実現するための有効な手段と言えるでしょう。

計画的付与制度の導入要件と具体的な手順

計画的付与制度が企業と従業員双方にとってメリットのある制度であることはご理解いただけたかと思います。

しかし、この制度は「会社が勝手に有給休暇日を決める」というものではありません。

適切に導入し運用するためには、労働基準法で定められた要件をクリアし、正しい手順を踏むことが不可欠です。

計画的付与制度導入に必須|就業規則の整備と労使協定の締結方法

計画的付与制度を導入する上で、特に重要となるのが「就業規則への記載」と「労使協定の締結」です。

就業規則への記載

まず、貴社の就業規則に、年次有給休暇の計画的付与に関する規定を盛り込む必要があります。

就業規則は、労働者の労働条件や服務規律などを定めたものであり、企業と労働者の間で遵守すべきルールブックです。

ここに制度の根拠を明記することで、制度の正当性が担保されます。

就業規則の「年次有給休暇」に関する章(またはその付近)に、以下のような条文を追加・追記することが考えられます。

(年次有給休暇の計画的付与)

第〇条

  1. 会社は、労働者の過半数で組織する労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者)との書面による協定に基づき、前条第〇項に定める年次有給休暇のうち、5日を超える部分について、計画的に取得時季を定めることができる。
  2. 前項の定めにより計画的に付与する年次有給休暇の対象者、日数、付与時季、付与方法その他必要な事項は、前項の労使協定に定めるものとする。
  3. 前項の労使協定を締結した場合、労働者は、同協定に定められた時季に年次有給休暇を取得するものとし、その時季指定権は行使できないものとする。ただし、労使協定に別段の定めがある場合はこの限りではない。
文言の解説とポイント
  • 第〇条
    • 就業規則の適切な条項番号を入れてください。
  • 第〇条第〇項に定める年次有給休暇のうち
    • これは、就業規則内の「年次有給休暇の付与日数や条件」を定めた条項を指します。
    • 具体的に該当する条項番号を記載することで、規定間の連携を明確にします。
  • 5日を超える部分について、計画的に取得時季を定めることができる
    • 労働基準法で定められた「労働者が自由に取得できる5日」を残すことを明確にするための重要な文言です。
    • この部分が最も基本的な法的要件となります。
  • 労働者の過半数で組織する労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者)との書面による協定に基づき
    • 労使協定が必須であること、およびその締結相手を明確に示しています。
  • 第2項(労使協定に委ねる内容)
    • 就業規則の本文には詳細を記載せず、具体的な運用ルールは全て「労使協定」に記載する旨を定めています。
    • これにより、就業規則を頻繁に改定する手間を省き、労使協定で柔軟に運用を変更できるようにします。
    • 労使協定に記載すべき事項の概要はこの後の「労使協定の締結」セクションで詳しくご紹介しますので、ここでは項目名だけ確認しておきましょう。
      • 計画的付与の対象となる労働者の範囲
      • 計画的付与の対象となる有給休暇の日数
      • 具体的な付与日
      • 付与方法
      • 急な事由による欠勤等の取り扱い
  • 第3項(時季指定権の制限)
    • 計画的付与の日に指定された有給休暇については、労働者は別の日への変更を求める時季指定権を行使できなくなります。
    • なお、この点は労働者側だけでなく会社側にも当てはまります。いったん労使協定で計画的付与日を定めた以上、業務上の事情が生じても、会社が時季変更権を行使してその日を変更することはできません。この点は、企業側が見落としやすい重要な注意点です。
    • ただし、特例を設ける場合はその旨も記載します。
注意点
  • 専門家への相談推奨
    • 上記はあくまで一般的な文言例です。
    • 会社の規模、業種、現在の就業規則の内容、労使関係によって最適な文言は異なります。
    • 労働基準法や関連法令は複雑なため、実際に就業規則を改定する際には、社会保険労務士などの専門家や労働基準監督署に相談し、法的に問題がないか、自社の実情に合っているかを確認することを強くお勧めします。
  • 周知義務
    • 就業規則は、変更後も従業員に周知する義務があります。

この文言例を参考に、就業規則への記載を進めてみてください。

労使協定の締結

次に、最も重要なステップが労使協定の締結です。

計画的付与制度は、労働者の有給休暇取得時季に関する権利(時季指定権)を制限する側面を持つため、労働者の同意が必要とされます。

この同意の証となるのが、以下のいずれかと書面で締結する労使協定です。

  • 労働者の過半数で組織する労働組合
  • もし労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者(民主的な方法で選出された者)

この労使協定には、以下の事項を必ず記載しなければなりません。

基本となる項目は、前々回の記事👉シフト制アルバイトの有給休暇管理、これで完璧!人事担当者向けでもご紹介しましたが、ここでは実際に協定を結ぶ際に押さえておきたい、より実務的な視点で改めて整理します。

計画的付与の対象となる労働者の範囲
  • 全従業員が対象か、特定の部署や職種のみかなどを明確にします。
  • 特に注意したいのは、計画的付与の時季に育児休業・産前産後休業に入る予定の従業員や、定年退職が決まっている従業員です。これらの方は計画的付与の対象から除外しておくのが実務上のポイントです。
計画的付与の対象となる有給休暇の日数
  • 5日を超える部分であること。
  • 例えば、「付与日数が10日の場合、計画的付与の対象は5日以下」といった形で具体的な日数を定めることも可能です。
  • 注意が必要なのは、入社1年目など有給休暇の残日数が少ない従業員です。計画的付与に充てる日数分の有給が足りない場合、対象から外すか、不足分を別途付与するなどの対応を労使協定であらかじめ決めておく必要があります。
具体的な付与日
  • 例えば「夏季休暇として8月〇日~〇日のうち3日間」のように、計画的付与によって取得させる日を具体的に記載します。
付与方法
  • 一斉付与、個人別付与、グループ別付与など、具体的な取得方法を定めます。
  • 事業所全体で一斉に休む「一斉付与方式」を選ぶ場合は、有給休暇が少ない新入社員や、有給休暇をすでに消化済みの従業員への対応(特別休暇として扱う、休業手当を支給するなど)も併せて検討しておくと、トラブルを防げます。
急な事由による欠勤等の取り扱い
  • 計画的付与日に急な病気や慶弔事が発生した場合の対応なども定めておくと、後々のトラブルを防げます。

計画的付与制度を導入するための具体的ステップと手順

実際に計画的付与制度を導入する際の具体的なステップは以下の通りです。

1. 現状把握と検討

  • まず貴社では、どの時期に、どの部門や職種の従業員に有給休暇を取得させることが最も効率的かを検討します。
  • 業務の繁閑、プロジェクトのスケジュール、人員体制などを考慮し、制度の導入目的(有給消化促進、業務効率化など)に最も合致する運用方法を考えましょう。

2. 労使間の協議と労使協定の締結

  • 検討した内容を基に、労働組合または労働者代表と十分に話し合いの場を設け、制度の目的、メリット、具体的な運用方法などを丁寧に説明します。
  • 双方の理解と合意形成を図った上で、前述の労使協定を締結します。

3. 就業規則の変更と労働基準監督署への届け出

  • 就業規則に計画的付与に関する規定を新たに盛り込む場合や、既存の規定を変更する場合は、変更後の就業規則を労働基準監督署に届け出る必要があります。
  • 計画的付与に関する労使協定自体は、原則として労働基準監督署への届け出は不要です。

4. 労働者への周知徹底

  • 制度の導入が決定し、準備が整ったら、全従業員に対して計画的付与制度の内容、運用ルール、対象となる有給休暇の日数、取得日などを十分に周知徹底することが重要です。
  • 掲示板、社内イントラネット、説明会など、複数の方法で繰り返し説明し、従業員が疑問なく制度を利用できるよう配慮しましょう。

これらの要件と手順を適切に踏むことで、計画的付与制度は貴社にとって円滑な有給休暇取得を促し、働きやすい環境づくりに貢献する強力なツールとなるはずです。

まとめ|計画的付与制度導入のポイント

今回は、年次有給休暇の計画的付与制度について、その目的やメリットに加え、導入に不可欠な就業規則への記載や労使協定の締結、そして具体的な導入手順を詳しく解説しました。

この制度を企業に導入する際には、法令を遵守し、労使間の合意形成を丁寧に進めることが、円滑な運用とトラブル回避の鍵となります。

次回予告|計画的付与制度の運用パターンと注意点を解説

さて、次回では、引き続き計画的付与制度に焦点を当て、その「主なパターン(一斉付与、個人別付与など)と運用例」、そして導入における「注意点や起こりうるトラブル事例とその対策」について、さらに深掘りしていきます。どうぞお楽しみに!

次回の記事は👉【企業担当者|企業経営者必見】計画的付与制度の実務で困らないための制度の使い方

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戸塚淳二
この記事を書いた人
  • 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
  • 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

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