本記事は「やさしく学ぶ年休シリーズ」シリーズの第5話です。
前回までは、年次有給休暇(年休)が労働者に与えられた大切な権利であり、正社員だけでなくパートやアルバイトにも取得する権利があることをお伝えしました。
前回の記事は👉会社員向け|有給休暇申請のコツ|病欠時の年休・時間単位年休等
原則として、年休は労働者自身が「いつ休むか」を決めて請求するものです。
でも、こんな課題を感じている会社や従業員もいるんじゃないでしょうか?
- 会社側
- 「うちの会社、繁忙期にみんながバラバラに休むと業務が回らないな…」「計画的に休んでもらえないと、事業運営が滞ることもある…」
- 従業員側
- 「年休は欲しいけど、職場の雰囲気を考えると、なかなか言い出しにくいんだよな…」「気づいたら、せっかくの年休が消えちゃってた!」
そうなんです。せっかくの制度があっても、なかなか利用しづらいという声は少なくありません。
そこで登場するのが、年休の取得を強力に後押しする「計画的付与制度」です。
この記事で分かること
- 計画的付与制度って何?会社が年休の取得日を決められる仕組みをやさしく解説
- 全部の年休が対象になるの?「5日は自由に取れる」というルールを確認
- 会社が一方的に決められる制度じゃない?労使協定の役割とは
- 全社一斉・交替制・個人別|自分の会社はどのタイプ?3つの運用方式を紹介
計画的付与制度とは?年次有給休暇の課題を解決する仕組み
この制度を一言でいうと、会社と従業員の代表者が話し合って協定を結べば、会社が従業員の年次有給休暇の取得時期をあらかじめ決めることができる仕組みのこと。
会社が従業員の年休取得日をあらかじめ決めることで、遠慮なくリフレッシュできるメリットがあります。
具体的な根拠は、労働基準法第39条第6項に定められています。法律で認められている制度なんですね。
計画的付与制度が必要な理由とは?年休取得率向上と業務効率化のメリット
この制度が導入された背景には、「周りに気を遣って年休を使い切れない」という従業員の悩みと、「繁忙期に人手不足になる」という会社側の悩み、その両方を同時に解決したいという狙いがあります。
会社が「この日は休んでOK」と決めてくれることで、あなたは気兼ねなく年休を取得でき、結果的にプライベートの時間も充実させやすくなります。
計画的付与制度の対象年休日数とは?自由取得分と指定可能分の違いを解説
「計画的付与制度」は、会社が年休の取得日を指定できる便利な仕組みですが、実は従業員に付与された全ての年休を会社が一方的に指定できるわけではありません。
ここには大切なルールがあります。
計画的付与は年休5日超から!対象範囲と法律で保障された自由取得分のルール
大切なポイントが一つあります。会社は、あなたの年休を全部好きに指定できるわけではありません。
労働基準法では、最低5日分は「あなたが自由に取得できる分」として必ず残すことが定められています。
例えば年間10日の年休がある場合、5日は自由取得分、残りの5日だけが計画的付与の対象です。
急な体調不良や家族の用事のために、5日分の自由な年休は必ず手元に残る、と覚えておきましょう。
計画的付与制度の導入手順と必要な手続き【労使協定・就業規則・周知方法を解説】
「計画的付与制度」が、会社と私たち労働者双方にメリットがある仕組みだということは、ご理解いただけたでしょうか。
では、この制度が皆さんの会社で実際に導入されるには、どのような手続きが必要になるのでしょうか?
会社が「明日から年休は会社が決める!」と一方的に決められるわけではありません。
大切なステップがいくつかあります。
労使協定の締結方法と内容のポイント【計画的付与制度で決めるべきこと】
この制度は、会社が一方的に決められるものではありません。
会社と、私たち労働者の代表(労働組合や、労働者の過半数を代表する者)との間で「労使協定」を結ぶことが、法律上必須です。つまり、労働者側の意見も反映される仕組みになっているということです。
協定には、対象者や対象日数のほか、「まだ年休がない新入社員や、年休を使い切ってしまった人が計画的付与の日をどう過ごすか」といった配慮のルールも定められます。
会社の労使協定の詳しい記載事項については、以下の記事でも解説しています。
就業規則に計画的付与制度を明記する方法と注意点
労使協定が結ばれた後は、会社の就業規則にもこの制度を導入する旨が記載されます。
もし気になる方は、就業規則を確認してみると、実際にどう運用されるのかがより具体的に分かります。
計画的付与制度の周知方法|労働者への通知と理解促進のポイント
最後に、会社は計画的付与制度について、私たち労働者全員にきちんと知らせる(周知する)義務があります。
具体的には、説明会を開いたり、書面を配布したり、社内掲示板やイントラネットに掲載したりするなど、様々な方法で、制度の内容や取得日が明確にわかるように伝えられます。
これは、私たちが安心して制度を利用し、計画的に行動できるよう、非常に大切なステップです。
これらの手続きがきちんと行われて初めて、計画的付与制度は法的に有効に運用されることになります。
もし皆さんの会社でこの制度が導入される際には、これらのプロセスが透明に行われているか、確認してみると良いでしょう。
計画的付与制度の3つのタイプ|自分の会社はどれに当てはまる?
一口に「計画的付与」と言っても、実は運用方法にはいくつかのパターンがあります。あなたの会社がどの方式を採用しているか知っておくと、いつ頃休みが指定されるのか見通しが立てやすくなります。
- 全社一斉付与方式
会社全体が同じ日に休む方式です。夏季休暇やお盆休みに数日をプラスして大型連休にする、といった形でよく使われます。
- 班・グループ別交替制付与方式
部署やチームごとに、交代で休む方式です。業務を止めずに済むため、シフト制の職場などでよく採用されます。
- 個人別付与方式
一人ひとりの希望を聞きながら、会社が個別に休暇日を調整する方式です。誕生日休暇のように、記念日に合わせて休みを設定する会社もあります。
それぞれの方式のメリット・デメリットや、会社側の導入時の注意点については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
👉有給休暇の計画的付与の運用方法とトラブル事例と対策を徹底解説
まとめ|計画的付与制度で年休を有効活用するポイント
今回は、年次有給休暇の計画的付与制度について、その全体像を解説しました。
この制度が、私たちが持つ年休の「5日を超える部分」を対象とし、会社と私たちの代表が結ぶ労使協定に基づいて導入されること、そして就業規則への記載や従業員への周知が必要なことをお分かりいただけたでしょう。
また、計画的付与には、全社一斉に休む方式、部署やグループで交代で休む方式、そして個人の希望を聞きながら決める方式の3つがあることをご紹介しました。
どの方式があなたの会社に合っているかは、それぞれの業務内容によって異なりますが、この制度が私たち労働者の年休取得を促進し、会社全体の業務効率を上げるための有効なツールであることが理解できたはずです。
この制度を正しく理解することは、あなたのワークライフバランスを守るためにも非常に重要です。
次回予告|計画的付与制度のよくある疑問を徹底解説
次回の記事では、この計画的付与についてよくある疑問「会社に年休を強制されるの?」という点に焦点を当てます。
次回の記事は👉有給休暇の計画的付与は強制?注意点と会社への提案方法まで解説
計画的付与が単なる「強制」ではない理由、そして制度が運用される上で知っておきたい注意点、さらには年休がない従業員への会社の配慮について、あなたの視点から徹底的に掘り下げていきます。
「自分の年休、これで大丈夫?」そんな不安を解消するために、ぜひ次回の記事も参考にしてください。
なお、同じ有給休暇について「会社側の対応」を知りたい方は、人事・総務担当者向けシリーズ「知っておきたい!年次有給休暇のすべて」もあわせてご参照ください。
👉年次有給休暇の正しい管理方法|企業向けガイド

- 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|29240010号)
- 会社員歴30年以上、転職5回を経験した氷河期世代の社会保険労務士です。自らが激動の時代を生き抜いたからこそ、机上の空論ではない、働く人の視点にたった情報提供をモットーとしています。あなたの働き方と権利を守るために必要な、労働法や社会保険の知識、そしてキャリア形成に役立つヒントを、あなたの日常に寄り添いながら、分かりやすく解説します。

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