2025年・改正育児介護休業法【実務対応編】(20)女性従業員の育休復帰「見える化フロー」ガイド

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女性の育児休業取得フロー 2025年改正育児介護休業法
女性従業員の育児休業取得の手順
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社会保険労務士 戸塚淳二

執筆者:社会保険労務士 戸塚淳二

法改正対応のスペシャリスト。戸塚淳二社会保険労務士事務所 代表として、多岐にわたる労働関連法規の解説から、実践的な労務管理、人事制度設計、助成金活用まで、企業の「ヒト」と「組織」に関する課題解決をサポートしています。本記事では、事業主の皆さまが安心して法改正に対応できるよう、専門家の視点から最新情報をお届けします。

社会保険労務士登録番号:第29240010号

女性の従業員から妊娠の報告を受けた時、会社としてどのように対応すれば、本人も会社も安心して一連の休業期間を過ごし、スムーズに職場復帰できるでしょうか。

2025年改正育児介護休業法のなかで特に改正された部分がある分野ではないのですが、中小企業の経営者の方、人事担当者の方には是非押さえていただきたいポイントです。

法改正の直接的なテーマではないものの、育児休業の取得・復帰を円滑にする上で、多くの企業が直面する課題であり、従業員エンゲージメントを高めるために不可欠な実務対応です。

今回は、企業が主体となって「女性従業員の妊娠発覚から産前産後休業、育児休業、そして復帰まで」の一連のプロセスを「見える化」し、効果的に運用するための具体的なステップを解説します。

実際のタイムライン(2025年4月1日妊娠報告、2025年9月1日出産予定日)を例に、会社が「いつ、誰が、何を伝えるべきか」を詳しく見ていきましょう。従業員が安心して働ける環境を整えることは、優秀な人材の定着、ひいては企業の持続的な成長に直結します。

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妊娠発覚から復帰までの「見える化フロー」の全体像

女性従業員の妊娠から職場復帰までの道のりは、いくつかのフェーズに分かれます。企業はこの各フェーズにおいて、適切なタイミングで情報提供、意向確認、そして具体的な調整を行うことで、従業員の不安を解消し、円滑な業務遂行をサポートできます。

見える化フローの主要なフェーズ

  1. 妊娠発覚~産前休業開始前】妊娠報告、初期面談、制度説明、業務引継ぎ計画
  2. 産前産後休業・育児休業中】定期的な連絡、復帰意向確認、保育園状況のヒアリング
  3. 復帰前~復帰後】復帰日・復帰後の働き方の調整、環境整備、フォローアップ
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各フェーズで会社がすべきこと:いつ、誰が、何をすべきか

【フェーズ1】妊娠発覚~産前休業開始前:安心と準備の期間

実践例 2025年4月1日に妊娠報告を受けた場合

女性の従業員から「本人が妊娠した」との報告を受けた時がスタート地点です。今回の例では、2025年4月1日に妊娠報告があったとします。

対応者
  • 直属の上司:初期の相談窓口、業務調整の責任者。
  • 人事担当者:制度説明、手続き案内、会社全体の窓口。

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具体的な対応
  1. 妊娠報告時(例:2025年4月1日):温かい受容と初期サポート
    • 直属の上司がすべきこと
      • 「ご懐妊おめでとうございます」と心からお祝いの言葉を伝え、まずは従業員の健康と安全を最優先する姿勢を示しましょう。
      • 「体調で何か変化があったら、遠慮なく教えてくださいね」と、無理をしないよう配慮を促します。
      • 人事担当者へ速やかに連携し、今後の手続きやサポート体制について確認します。
    • 人事担当者がすべきこと
      • 妊娠報告後、速やかに個別面談の機会を設け、母性健康管理に関する措置(時差通勤、休憩、軽易業務への転換など)について説明し、必要に応じて対応します。
      • 「産前産後休業は法律で定められた権利であり、出産に伴い取得いただく休業となります。出産予定日が9月1日ですので、産前休業は単体妊娠の場合は7月22日(火)から開始されます(出産予定日の42日前)。多胎妊娠の場合は5月26日(月)から開始されます(出産予定日の98日前)。その後の育児休業についても、継続して取得いただくのが一般的です。 今後の手続きについては、改めて詳しくご案内します」と、制度の基本的な流れと連続性、具体的な日付を明確に伝えます。
  2. 出産予定日決定後~産前休業2〜3ヶ月前(例:2025年5月~6月頃):制度の詳細説明と育児休業期間の確認
    • 人事担当者がすべきこと
      • 改めて個別面談を行い、産前産後休業、それに続く育児休業、育児休業給付金、社会保険料免除、復帰後の時短勤務や時差出勤などの育児関連制度について、資料を用いて詳細かつ分かりやすく説明します。
      • 男性従業員が取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」についても情報提供し、夫婦での育児休業取得を促しましょう。
      • 「産後休業終了後、いつ頃まで育児休業を取得されるご予定ですか? 多くの方が保育園の入園時期に合わせて、翌年4月までの取得を希望されます。現時点での希望で構いませんので、お聞かせください」と、具体的な育児休業期間の意向を丁寧に確認します。
      • 育児休業の申請手続きに必要な書類やスケジュールを説明し、不明点がないか確認します。
    • 直属の上司がすべきこと
      • 「7月22日(火)から産前休業に入りますので、それまでに業務の引継ぎ計画を立てましょう」と、出産予定日や産前休業開始日を踏まえた具体的な引継ぎスケジュールを立てるよう促します。
      • 担当業務の洗い出し、優先順位付け、引き継ぎ先の検討、マニュアル作成などを従業員と共に進めます。業務の属人化を防ぐため、日頃から業務の「見える化」を進めておくことが重要です。
  3. 産前休業開始前(例:2025年7月初旬):最終確認とスムーズな送り出し
    • 人事担当者がすべきこと
      • 育児休業の申請書類に漏れがないか最終確認し、必要書類を回収します。給付金申請についても、手続きの流れを改めて伝え、安心して休業に入れるようサポートします。
    • 直属の上司がすべきこと
      • 引継ぎ状況の最終確認を行い、休業中の緊急連絡先や、会社からの連絡方法(頻度、手段など)について、従業員の希望を尊重して確認します。必要以上の連絡は行わないことを明確に伝え、休業中の安心を保証しましょう。
      • 部署内で休業中の業務体制について改めて周知し、チーム全体で支え合う意識を醸成します。
      • 「お身体を大切に、ゆっくり休んでくださいね。復帰を楽しみに待っています」と、温かい言葉で送り出します。

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【フェーズ2】産前産後休業・育児休業中:繋がりの維持と復帰準備の支援

【実践例 産前休業開始2025年7月22日~出産日2025年9月1日(予定)~産後休業終了2025年10月28日】

従業員が休業に入ってから、職場復帰の数ヶ月前までの具体的な企業からの対応です。

対応者
  • 人事担当者:制度関連の情報提供、復帰に向けた意向確認の中心。
  • 直属の上司:従業員の状況を把握し、復帰後の業務調整に向けた準備。
具体的な対応
  1. 定期的な連絡と情報提供(月1回~四半期に1回程度)
    • 人事担当者がすべきこと
      • 事前に確認した希望連絡頻度と手段で、定期的に連絡を取り、従業員の状況を把握します。
      • 育児休業に関する法改正や社内制度変更があれば、速やかに情報提供します。
      • 社内報や社内イベントの情報などを共有し、会社とのつながりを維持します。
      • 「育児休業期間の変更、または延長をご検討されている場合、育児休業給付金の申請期限等を考慮し、〇ヶ月前までに会社にご連絡いただく必要があるか」を改めて伝え、計画的な復帰判断を促します。
    • 直属の上司がすべきこと
      • 緊急時のみの連絡に留め、基本的には人事と連携し、従業員が安心して休業できる環境を保ちます。個人的なメッセージで体調を気遣うなど、心遣いも大切にしましょう。
  2. 復帰意向の確認と保育園状況のヒアリング(例:2026年1月~2月頃を目安
    • 人事担当者がすべきこと
      • 「育児休業終了後、いつ頃の復帰を考えていらっしゃいますか?」と、復帰の最終意向を丁寧に確認します。
      • 特に「保育園の入園状況はいかがでしょうか。待機児童の問題など、何か困っていることはありませんか?」と、具体的にヒアリングを行います。保育園が決まらない場合は復帰が困難になるケースが多いため、この情報は非常に重要です。
      • もし保育園が決まらないなどの理由で復帰が困難な場合、育児休業は子が1歳6ヶ月(2027年3月1日まで)、さらに2歳(2027年8月31日まで)まで延長できることを説明し、翌年度の4月1日復帰(例:2027年4月1日復帰)も選択肢として提示します。 これにより、従業員は保育園入園の選択肢が広がり、安心して復帰時期を検討できます。
      • 「復帰後の働き方について、時短勤務や時差出勤などの希望はありますか?」と、改めて復帰後の働き方について具体的な希望をヒアリングします。

【フェーズ3】復帰前~復帰後:スムーズな再スタートと定着支援

実践例:2026年3月頃~(一般的な4月復帰の場合)

職場復帰の1〜2ヶ月前、そして復帰後です。

対応者
  • 人事担当者:復帰手続き、制度適用、育児支援制度の案内。
  • 直属の上司:復帰後の業務・体制調整、チームへの周知、日々のフォロー。
具体的な対応
  1. 復帰前(例:2026年3月頃):復帰準備と環境整備
    • 人事担当者がすべきこと
      • 復帰に向けた最終面談を行い、復帰日(例:2026年4月1日)、復帰後の勤務条件(勤務時間、部署、業務内容など)を最終確認します。
      • 必要書類の提出、社会保険の手続きなどを案内します。
      • 利用可能な育児支援制度(例:福利厚生、社内イベント情報など)を改めて案内し、安心して復帰できる環境を整えます。
    • 直属の上司がすべきこと
      • 復帰する従業員のデスクやPC環境などを事前に準備し、スムーズに業務を開始できるよう配慮します。
      • チームメンバーに復帰日(例:2026年4月1日)と復帰後の働き方について周知し、協力を促します。復帰後の業務分担やサポート体制を明確にします。
      • 復帰後の業務内容や目標について、事前にすり合わせを行います。
  2. 復帰後(例:2026年4月1日以降):きめ細やかなフォローアップ
    • 直属の上司がすべきこと
      • 復帰直後は、業務内容や職場の変化に慣れるまで、きめ細やかなサポートを心がけます。定期的な面談で、困っていることや改善点がないかヒアリングします。
      • 時短勤務やフレックスタイムなど、利用している制度に合わせて、業務負荷や時間管理に配慮したマネジメントを行います。
      • 体調や家庭の状況の変化にも柔軟に対応できるよう、日頃からコミュニケーションを密に取ります。
    • 人事担当者がすべきこと
      • 復帰後も、定期的なヒアリングやアンケートなどを通じて、従業員の定着状況や制度利用状況を把握します。
      • 必要に応じて、上司と連携し、部署内でのサポート体制の強化や制度の見直しを検討します。
      • キャリア支援に関する情報提供も行い、育児と仕事の両立を長期的にサポートする姿勢を示しましょう。
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まとめ

女性従業員の妊娠・出産・育児は、企業にとって大切な人材が長期的に活躍し続けるための、重要な転機です。企業が主体的に「見える化フロー」を構築し、妊娠発覚から復帰までの各フェーズで、適切なタイミングで、適切な担当者が、きめ細やかな情報提供と丁寧なコミュニケーションを行うことは、従業員のエンゲージメントを最大化し、優秀な人材の定着に繋がります。

この実践ガイドが、貴社の育児休業支援体制をさらに強化し、従業員が安心してキャリアを継続できる環境づくりに貢献できれば幸いです。

次回のブログでは、夫婦での育児休業分担、女性従業員が育児休業を2回に分けて取得する場合の注意点、企業がどのようにサポートすべきか、押さえておくべきポイントを解説します。多様な働き方に対応する企業の姿勢は、人材確保においてますます重要になります。どうぞご期待ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご相談の際は、以下よりお気軽にお問い合わせください。☟

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