本記事は「2025年改正育児介護休業法シリーズ」の第38弾です。他のシリーズの記事はコチラから👉2025年育児介護休業法改正|企業がすべき対応と助成金情報
育児休業等支援コース助成金とは、従業員の育児休業取得・職場復帰を支援した企業に最大60万円(中小企業)が支給される、両立支援等助成金の中核となるコースです。
前回の記事では、2025年育児介護休業法改正の全体像と、それに伴う両立支援等助成金の重要性についてお話ししました。
前回の記事は👉2025年育児介護休業法改正と両立支援等助成金|企業の活用ポイント
法改正によって企業に求められる対応が増える中、助成金を戦略的に活用することは、企業の負担を軽減し、むしろ競争優位性を確立するための重要な鍵となります。
さて、今回からはいよいよ、各助成金コースについて具体的に掘り下げていきます。
この記事で分かること
- 取得時と復帰時の2フェーズで最大60万円(中小企業)が受給可能
- 受給には「雇用保険の加入」と「法適合した就業規則の届出」が必須
- 取得時助成金は「連続3か月以上の育休」が鍵。産後休業もカウント可
- 「両立支援のひろば」への情報公表で2万円の上乗せ加算あり
- 育休開始「前日」までに面談記録の作成と申出書の受理を完了する
育児休業等支援コース助成金の概要と活用法
今回の記事では、多くの企業にとって最も身近な両立支援の課題である「育児休業」に焦点を当てた「育児休業等支援コース」について、その概要と具体的な活用法を解説します。
この助成金に限らず、「両立支援等助成金」は、その名の通り仕事と育児の両立を支援する企業を応援するための制度であり、その根拠となる法律は「雇用保険法」です。
つまり、雇用保険の適用事業主である企業が、ハローワークを通じて申請する公的な支援策となります。
これは、育児休業中の従業員を雇用保険の枠組みの中でサポートし、企業の継続的な成長を後押しすることを目的としています。
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)の助成内容と支給額
仕事と育児の両立は、現代の企業にとって重要な課題です。
従業員が安心してキャリアを継続できるよう支援することは、企業の人材定着や生産性向上にも直結します。
そんな企業を強力に後押しするのが、厚生労働省が提供する「両立支援等助成金(育児休業等支援コース)」です。
この助成金は、従業員の育児休業取得から職場復帰まで、企業が講じる支援策に対して支給されます。
具体的にどのフェーズで、いくらもらえるのか、詳しく見ていきましょう。
育児休業取得時の助成金内容と申請条件
従業員が育児休業を円滑に取得できるよう、企業が代替要員を確保するなどの体制整備を行った場合に支給されるのが「育児休業取得時」の助成金です。
- 支給対象
- 育児休業開始日に雇用保険被保険者である従業員(男女を問いません)が、育児・介護休業法に基づく育児休業を取得し、企業が代替要員を確保した場合に対象となります。
- 原則として連続3か月以上の育休取得が要件です。3か月未満の育児休業は対象外となります。例外については管轄の労働局にご確認ください。
- 支給額
- 中小企業
- 従業員1人につき 30万円
- 大企業
- 本コースは中小企業事業主のみが対象です。大企業・特定事業主は対象外となります。
- 中小企業
この支給は、従業員が長期の育児休業に入ることへの企業の負担を軽減し、育児休業取得をためらうことなく選択できる環境作りを促します。
職場復帰時に支給される助成金とは
育児休業を終えた従業員がスムーズに職場に復帰し、その後も安心して働き続けられるよう支援する企業に対して支給されるのが「職場復帰時」の助成金です。
- 支給対象
- 育児休業を取得した従業員が、休業終了後に原職または原職相当職に復帰し、その後6か月以上継続して雇用され、かつ予定就業日数の5割以上就業した場合に支給されます。
- 「6か月以上継続雇用」と「予定就業日数の5割以上就業」の両方が、助成金支給の重要な要件となります。
- 支給額
- 中小企業
- 従業員1人につき 30万円
- 中小企業
情報公表加算とは?育児休業等支援コースでの支給額2万円上乗せ
申請前事業年度に「両立支援のひろば」の一般事業主行動計画サイトに、以下の情報を公表していた場合に2万円が加算されます。
- 男性労働者の育児休業取得割合
- 女性労働者の育児休業取得割合
- 育児休業平均取得日数(男女別)
- 加算額
- 1事業主につき 2万円
- 適用回数
- 「育児休業取得時」または「職場復帰時」のいずれか1回限り加算されます。
この加算は、企業の育児休業取得状況や両立支援への取り組みを社会に公表することで、より一層の透明性と企業のイメージアップを図ることを奨励するものです。
育児休業等支援コース助成金の最大支給額|いくらもらえる?
この助成金では、1人の従業員が育児休業を取得し、その後の職場復帰要件も満たした場合、中小企業であれば最大で合計60万円(取得時30万円+復帰時30万円)が支給されます。
「両立支援のひろば」への情報公表加算2万円は、従業員の人数に関わらず、事業主(企業)に対して1回限り支給されるものです。
したがって、例えば複数の従業員が育児休業を取得し、それぞれに最大60万円(中小企業の場合)が支給されたとしても、情報公表加算は企業全体で一度だけ、最大で2万円の加算となります。
各従業員に対して62万円が支給されるわけではありません。
本コースの支給は1事業主につき最大2人まで(有期雇用労働者1人・無期雇用労働者1人)です。企業としては、最大で「60万円×2人=120万円」に、「情報公表加算2万円」が別途1回のみ加わる形になると理解しておくと良いでしょう。
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)は、従業員のワークライフバランスを重視し、多様な働き方を推進する企業にとって、非常に有効な支援策です。
これらの助成金を活用することで、従業員の定着率向上や企業イメージアップにも繋がり、持続可能な組織づくりに貢献できるでしょう。
助成金を受けられる企業と従業員の条件
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)は、すべての企業や従業員が対象となるわけではありません。
この助成金を活用するためには、厚生労働省が定める特定の要件を満たす必要があります。
ここでは、どのような企業や従業員が対象となるのか、その詳細を明確に解説します。
対象企業の条件|両立支援等助成金を受けられる会社
この助成金は、以下の条件を全て満たす事業主が対象となります。
雇用保険の適用事業主であること
- まず大前提として、雇用保険の適用事業主であることが必須です。
- 従業員を雇用し、雇用保険に加入させている企業が対象となります。
育児・介護休業法に適合した育児休業制度を規定していること
- 労働者が育児休業を取得できるよう、育児・介護休業法に基づいた育児休業制度を就業規則などに適切に定めている必要があります。
- この規定は、労働基準監督署に届け出て受理されている必要があります。
- 単に制度があるだけでなく、法律の要件を満たし、社内で周知されていることが重要です。
- また、一般事業主行動計画を策定・届出のうえ、有効かつ「両立支援のひろば」サイトで公表・周知していることも必須要件です。
その他の支給要件を全て満たすこと
- 上記の基本的な要件に加え、助成金の各支給フェーズ(育児休業取得時、職場復帰時など)に定められた詳細な要件も満たす必要があります。
- これには、育児休業中の情報提供や、職場復帰支援の実施などが含まれます。
- 過去に育児休業等に関する法違反がないこと
- 申請先は管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。
- 申請を検討する際は、厚生労働省の最新のパンフレットや申請先の労働局で確認し、不明な点は社会保険労務士などの専門家へご相談ください。
助成金の対象従業員とは|両立支援等助成金を受給できる社員の条件
助成金の支給対象となる従業員は、以下の条件を全て満たしている必要があります。
- 育児休業開始日に雇用保険の被保険者であること
- 育児休業を開始した日時点で、その従業員が雇用保険の被保険者であることが必須です。
- パートタイマーや契約社員など、雇用形態に関わらず雇用保険に加入していれば対象となり得ます。
- 2025年改正育児・介護休業法に基づく育児休業を取得していること
- 取得する休業が、育児・介護休業法に則った正式な育児休業である必要があります。
- 育児・介護休業法に規定されていない任意の休暇制度は対象外です。
- 育児休業取得時支給に必要な3か月以上の取得要件
- 特に「育児休業取得時」の助成金を受け取るためには、対象となる従業員が連続して3か月以上の育児休業を取得していることが必須です。
- 産後休業(出産日後8週間以内)を含めて連続3か月以上であれば要件を満たします。
- 3か月未満の育児休業の場合、この支給区分は対象外となりますので注意が必要です。
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)は、これらの要件を満たす企業が、従業員の仕事と育児の両立を積極的に支援するための有効な制度です。
自社がこれらの条件に当てはまるかを確認し、ぜひ助成金の活用を検討してみてください。
育児休業等支援コース助成金|休業前に必要な準備と手続き
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)の受給を目指す上で、最も重要と言えるのが、従業員が育児休業を開始する「前日」までに、企業が適切な準備を完了していることです。
この初期段階での対応が、その後のスムーズな申請手続きと助成金受給の成否を分けます。
ここでは、育児休業開始日前日までに、企業が必ず実施すべき事項を詳しく解説します。
1. 就業規則の整備と労働局への届出
両立支援等助成金は、法律に基づいた企業の制度整備を評価するものです。
育児休業に関する社内制度が法的に適切に整備され、従業員に周知されていることが、助成金支給の前提条件となります。
育児・介護休業法に準拠した規定の明確化
- 貴社の就業規則に、育児・介護休業法に則った育児休業に関する規定が明確に盛り込まれているかを確認してください。
- 単に「育児休業が取れる」だけでなく、取得可能な期間、申出の手順と期限、育児休業中の待遇(給与・社会保険の扱いなど)、職場復帰に関する規定、そして育児休業中の情報提供等の措置に関する定めまで、具体的に記載されている必要があります。
労働局雇用環境・均等部(室)への届出と受理
- 整備・改定した就業規則は、必ず所轄の労働局雇用環境・均等部(室)に届け出て、受理されている必要があります。
- 届出の控えや受理印のある就業規則の写しは、助成金申請時に提出を求められますので大切に保管してください。
従業員への周知徹底
- 就業規則に規定した内容は、全従業員がいつでも閲覧できる状態にするなど、適切に周知されている必要があります。
- 従業員が制度を理解し、安心して利用できる環境を整えることが求められます。
申請時の主な提出書類
- 取得時:【育】様式第1号①②、【育】様式第2号(面談シート)、【育】様式第3号(育児休業取得支援プラン)
- 復帰時:【育】様式第4号①②、【育】様式第2号(面談シート)、【育】様式第6号(情報提供記録)
2. 育児休業の申出受付と事前計画のポイント
従業員からの正式な申出を受け付けることは、育児休業が法的に成立した証拠となります。
また、事前の計画と合意形成は、休業中のトラブルを防ぎ、スムーズな職場復帰に繋がります。
育児休業申出書の適切な受理と保管
- 従業員から育児休業の申出があった際には、必ず会社所定または任意様式の「育児休業申出書」を提出させ、これを適切に受理し、保管してください。
- この申出書は、助成金申請の重要な証拠書類となります。
従業員との面談を通じた計画と合意形成
- 妊娠の事実を把握した後、育児休業開始日の前日までに、育児休業に入る従業員と面談を実施してください。
- 話し合った内容は【育】様式第2号(面談シート)に記録し、育児休業取得支援プランを【育】様式第3号に作成することが必要です。
- 面談では以下の点について話し合い、合意内容を明確にしておきましょう。
- 育児休業の具体的な期間(開始日と終了予定日)
- 休業中の連絡方法と頻度(例:月に1回メールで連絡、緊急時のみ電話など)
- 職場に関する情報提供の要否(例:人事異動、組織変更、社内制度の変更などの情報を休業中に共有するかどうか)
- 職場復帰に関する意向(例:短時間勤務の希望の有無、復帰後の業務内容に関する希望など)
- これらの話し合いの内容は、面談記録として残しておくことが望ましいです。
これらの「育児休業開始日前日までの必須事項」を確実に実行することが、両立支援等助成金(育児休業等支援コース)の支給要件を満たすための第一歩となります。
制度の趣旨を理解し、従業員が安心して育児休業を取得できる環境を整備していきましょう。
申請期限について
取得時の申請は、育児休業開始日から3か月経過後の翌日より2か月以内に行う必要があります。
復帰時の申請は、職場復帰日から6か月経過後の翌日より2か月以内が期限です。
期限を過ぎると受給できなくなるため、スケジュール管理を徹底してください。
まとめ|育児休業等支援コース助成金、受給への第一歩
今回は、両立支援等助成金の中でも中心となる「育児休業等支援コース」の概要と、育児休業開始前日までに企業が準備すべき重要なポイントに焦点を当てて解説しました。
特に、就業規則の整備や従業員との事前のコミュニケーションがいかに大切かをご理解いただけたかと思います。
次回予告|育児休業中・復帰時の助成金申請と実務対応
いよいよ「育児休業中の企業対応と、育児休業取得時の助成金申請」、そして「職場復帰時の手続きと助成金申請」について、さらに深掘りしていきます。
次回の記事は👉育児休業等支援コース|助成金申請フローと必要書類|徹底解説
育児休業中の従業員への具体的な情報提供方法や、復帰後のフォローアップ、そしてそれぞれの助成金申請に必要な書類とフローを詳細にご紹介しますので、ぜひご期待ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご相談の際は、以下よりお気軽にお問い合わせください。☟
📌社会保険・労務対応・就業規則作成等について👉奈良県・大阪府・京都府・三重県など、近隣地域の企業・個人の方は・・・⇨戸塚淳二社会保険労務士事務所 公式ホームページからお問い合わせください。
📌遠方の方や、オンラインでのご相談をご希望の方は⇨ココナラ出品ページをご利用ください。

- 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
- 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

コメント