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失業保険受給中にアルバイトする方法と控除額の計算例|注意点も徹底解説

失業手当受給中のアルバイト 働く人の権利と安心ガイド
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社会保険労務士 戸塚淳二

執筆者:社会保険労務士 戸塚淳二

会社員歴30年以上、転職5回以上を経験し、氷河期世代として激動の時代を生き抜いてきた社会保険労務士、戸塚淳二です。私自身が様々な働き方を経験してきたからこそ、机上の空論ではない、「働く人の視点」に立った労働法や社会保険法の役立つ情報をお届けします。あなたの日常に寄り添い、働き方と権利を守るためのヒントを分かりやすく解説していきます。

社会保険労務士登録番号:第29240010号

本記事は「あなたの働く人生を守るセーフティネット!雇用保険のすべて」シリーズの第11話です。第1話は👉雇用保険とは?何のためにある?|加入メリットや目的を解説

前回は、失業手当を受け取るために欠かせない「失業認定日」について、その意味や手続きの流れを詳しく解説しました。

この失業認定日は、手当を確実に受け取る上で非常に大切な日であり、特にアルバイトをしたときなどは、この時にしっかりとした申告が必須となります。

前回の記事は👉失業認定日とは?手続きの流れ・必要書類・求職活動のポイントを徹底解説

失業手当は、働く意思がありながらも仕事が見つからない方の、再就職までの大切な生活の支えとなります。

しかし、「失業手当だけでは生活費が足りない」「次の仕事に役立つ経験を積みたい」といった理由から、手当をもらいながらアルバイトをしたいと考える方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、失業保険を受け取りながらアルバイトをする際のルールや、知っておくべき注意点について、詳しくお伝えします。

失業保険受給中のアルバイト|働く時間・収入の基本ルール

失業保険は、「働く意思と能力があるにもかかわらず、仕事が見つからない」人に対して、生活を保障し、再就職を支援することを目的としています。

この「失業」の状態を前提として手当が支給されるため、原則として、働くこと(収入を得ること)は認められていません。

アルバイトをすることで収入を得るということは、この「失業」の状態に矛盾が生じると考えられます。

これが、失業保険受給中のアルバイトが原則禁止とされている理由です。

しかし、全てのアルバイトがNGというわけではありません。

厚生労働省は、再就職に向けた準備期間として、一定の条件を満たす「一時的、または短期的な労働」については、これを認めています。

これは、求職活動を妨げない範囲での労働は、生活の安定に繋がり、結果として再就職を後押しする可能性があると捉えられているからです。

次のセクションでは、この「特定の条件下」とは具体的にどのようなものなのか、アルバイトをする際の具体的なルールについて詳しく見ていきましょう。

失業保険受給中のアルバイトのルール|時間・日数・収入の目安

失業保険を受給しながらアルバイトをする場合、重要なルールは「働く時間」と「働いて得た収入額」です。

働く時間と日数|「週20時間未満」が最も重要

雇用保険法では、「1週間の労働時間が20時間未満であること」が、失業状態を維持するための基本的な判断基準とされています。

もし、週の労働時間が20時間を超えた場合は、「就職」とみなされ、失業保険の受給資格を失うことになります。

働く日数については、法律上「週3日以下」と明確に定められているわけではありません。

しかし、実務上は週4日以上働くと「就職」と判断されるリスクが非常に高くなります。

そのため、トラブルを避けるためにも、以下の両方を満たすことを目安にしましょう。

  • 週の労働時間が20時間未満
  • 労働日数が3日以下

失業保険中のアルバイト|1日の収入上限と手当減額のルール

働いた時間だけでなく、得た収入も失業保険の給付額に影響します。

1日の労働によって得た賃金が「賃金日額の80%相当額+控除額」を超えると、その日の基本手当が減額されるか、または支給されなくなります。

具体的な計算方法は少し複雑ですが、いくつかのパターンで考えてみましょう。

給付額が減額されるケース

1日のアルバイト収入と基本手当日額の合計が、離職前の賃金日額の80%相当額+控除額の範囲内にある場合、その超えた金額分だけ基本手当が減額されます。

【例】 賃金日額が10,000円で基本手当日額が7,000円、控除額が1,310円の方の場合、ある日にアルバイトで2,500円の収入を得たとします。

この場合の減額分は、以下の計算式で求められます。

(基本手当日額7,000円+アルバイト収入2,500円)-(賃金日額10,000円の80%相当額8,000円+控除額1,310円) = 9,500円 - 9,310円 = 190円

この日の基本手当は、7,000円から190円減額され、6,810円が支給されます。

失業保険を受給しながらアルバイトをする場合、働いた時間や収入によって基本手当が減額されることがあります。

しかし、「控除額」という仕組みのおかげで、アルバイト収入が丸ごと失われるわけではありません。

控除額とは?

控除額とは、ハローワークがあなたの状況に応じて決める特別な金額です。

  • 誰が決める? → ハローワーク
  • いつ決める? → 失業保険の手続き時、「雇用保険受給資格者証」を発行するとき
  • 役割 → アルバイトをしても基本手当が一気に減らず、アルバイト収入を手元に残せるようにする

具体例(控除額あり)
  • 賃金日額
    • 10,000円
  • 基本手当日額
    • 7,000円
  • 控除額
    • 1,310円
  • その日のアルバイト収入
    • 2,500円

(基本手当7,000円 + アルバイト収入2,500円) − (賃金日額10,000円 × 80% + 控除額1,310円)
= 9,500円 − 9,310円
= 190円

結果
この日の基本手当は7,000円から190円減額され、6,810円が支給されます。
➡ アルバイト収入2,500円はほぼそのまま手元に残ることになります。


もし控除額がなかったら?

同じ条件で控除額が0円の場合、計算はこうなります。

(基本手当7,000円 + アルバイト収入2,500円) − (賃金日額10,000円 × 80%)
= 9,500円 − 8,000円
= 1,500円

結果
この日の基本手当は7,000円から1,500円減額され、5,500円しか支給されません。
➡ アルバイト収入2,500円のうち、1,500円は基本手当に吸収され、手元に残る金額が少なくなってしまいます。

給付額が全く支給されないケース

1日のアルバイト収入と基本手当日額の合計が、離職前の賃金日額を上回る場合、その日の基本手当は支給されません。

【例】 賃金日額が5,000円で基本手当日額が4,000円の方の場合、ある日のアルバイト収入が2,000円だったとします。

(アルバイト収入2,000円 + 基本手当日額4,000円)=6,000円

となり、賃金日額5,000円を上回るため、その日の基本手当は支給されません。

【注意】 正確な計算は、個々の賃金日額や、時期によって変動する控除額によって変わります。これらの具体的な金額は、ハローワークで渡される「雇用保険受給資格者証」に記載されているため、必ず確認しましょう。

失業保険受給中の内職・手伝い|収入も申告が必要な理由

「アルバイト」という形ではなくても、仕事をして収入を得た場合は、すべて申告の対象となります。

「内職」やインターネットでの「フリマアプリでの売上」「クラウドソーシングでの作業」など、どんなに少額であっても、労働の対価として得た収入は失業認定申告書に記入しなければなりません。

これらの申告を怠ると、不正受給と見なされ、厳しい罰則が科される可能性があります。

失業保険期間中のアルバイト|待期・給付制限・給付期間ごとの影響

失業保険の受給手続きは、主に「待期期間」「給付制限期間」「給付期間」の3つのステップに分かれています。

このどの期間にアルバイトをするかによって、その影響が大きく変わってきます。

1. 待期期間中のアルバイト|失業保険に与える影響と注意点

待期期間(原則7日間)とは、ハローワークで受給資格が決定した日から数えて7日間、失業の状態にあるかどうかを確認するための期間です。

この間は基本手当は支給されません。

自己都合退職などの場合は、この待期期間が終了したあとに「給付制限期間(原則1か月または3か月)」が設けられます。

そのため、実際に手当の支給が始まるのは、待期期間と給付制限期間が両方終わった後になります。

会社都合退職などの場合は給付制限期間がないため、待期期間の終了直後から基本手当の支給が開始されます。

この期間において、アルバイトを含むいかなる就労をした日は、待期にカウントされません。

もし待期期間中にアルバイトをしてしまうと、その日数分だけ待期期間が延長されます。

例えば、待期期間が3日経過した時点で1日アルバイトをすると、その1日分が待期期間にカウントされないため、待期期間の完了が1日遅れることになります。

つまり、手当の支給開始がその分遅れてしまうことになります。

2. 給付制限期間中のアルバイト|失業保険受給への影響と注意点

自己都合退職などで給付制限期間が設定されている場合、この期間は待期期間とは異なり、アルバイトをすることが可能です。

2025年4月1日の法改正により、給付制限期間は以下のように変更されています。

  • 原則1ヶ月
    • 5年間のうち2回目までの離職の場合
  • 3ヶ月
    • 5年間のうち3回目以降の離職の場合

給付制限期間中のアルバイトは、「働く意思と能力があるのに仕事が見つからない」という失業保険の原則に反しない限り、特に制限はありません。

ただし、働く時間や収入が多すぎると「就職した」と見なされる可能性があるため、先ほど解説した「週20時間未満、週3日以下」を目安にすることが重要です。

3. 給付期間中のアルバイト|失業保険への影響と正しい申告方法

給付期間中とは、失業手当が支給されている期間のことです。

この期間中にアルバイトをすることは可能ですが、働いた日数や収入によって、その日の基本手当がどうなるかが変わってきます。

  • 収入が少ない場合
    • アルバイト収入が一定額より少ない場合、その日の基本手当は減額支給となります。
  • 収入が多い場合
    • アルバイト収入が一定額より多い場合、その日の基本手当は不支給となります。
    • 不支給となった日は受給期間の末尾に繰り下げられ、受給日数が減ることはありません。

いずれの場合も、失業認定申告書に正確に記入して申告することが必須です。

この「給付期間中」のアルバイトも、働く時間や収入が多すぎると「就職した」と見なされる可能性があります。

そのため「週20時間未満、週3日以下」を目安にすることが重要です。

失業保険受給中のアルバイト申告手続き|必要書類と記入方法を解説

失業保険受給中のアルバイトは、働く時間や日数、収入に注意が必要ですが、最も重要なのは「働いたことを正しく申告する」ことです。

どんなに少額の収入であっても、申告を怠ると不正受給と見なされます。

ここでは、失業認定日までに何を準備し、どのように申告すればよいのかを具体的に解説します。

1. 失業認定申告書の記入方法|アルバイト収入の正しい申告手順

失業認定日には、ハローワークで受け取った「失業認定申告書」を提出します。

この書類には、認定期間中に働いた日やその収入を記入する欄があります。

  • 労働した日
    • アルバイトをした日の欄に「〇」を記入します。
  • 労働時間と収入
    • アルバイト先から発行された「給与明細書」などを参考に、働いた時間と賃金の額を正確に記入します。
  • 仕事の内容
    • どんな仕事をしたのかを簡潔に記入します。

記入欄には、アルバイトだけでなく、内職やインターネットでの副業(クラウドソーシングなど)も含まれます。

これらもすべて、労働の対価として収入を得た場合は漏れなく記入しましょう。

2. アルバイト収入の証明書類|失業保険申告に必要な書類と準備方法

失業認定申告書に記入した内容を証明するため、アルバイト先から以下のいずれかの書類を準備しましょう。

  • 給与明細書
  • タイムカードのコピー
  • 就労証明書(ハローワークで配布している様式)

アルバイト先が決まった書式の「勤務証明書」を発行していない場合でも心配ありません。

上記のように、いつ、何時間働き、いくら収入があったかを証明できる書類であれば、原則として認められます。

もし、これらの書類の準備が難しい場合でも、正直に働いた事実をハローワークに伝えましょう。

その際に、「事業主氏名」「所在地」「連絡先」などを控えておき、失業認定申告書に記入します。

ハローワークが直接事業主に問い合わせて事実を確認することもあります。

3. 失業保険の虚偽申告リスク|アルバイト申告での罰則と注意点

「勤務証明書がないからバレないだろう」と考えて、虚偽の申告をしたり、申告を怠ったりすることは絶対に避けてください。

あなたのアルバイト収入は、事業主が税務署に提出する給与支払報告書などからハローワークに共有されるため、遅かれ早かれ必ず発覚します。

悪質な不正受給と判断された場合、以下のような厳しい罰則が科せられます。

  • 不正に受給した金額の全額返還
  • さらに、不正に受給した金額の2倍に相当する金額の納付命令(いわゆる「3倍返し」)
  • 場合によっては、詐欺罪として刑事罰の対象となることもあります。

不正受給は、今後の社会生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。正直に申告することが、何よりも大切です。

まとめ|失業保険受給中のアルバイトで押さえておくべきルールと申告方法

ここまで、失業保険を受け取りながらアルバイトをする際の、働く時間や収入のルール、そして申告方法について詳しく解説してきました。

最後に、これまでの重要なポイントを改めて確認しておきましょう。

1. アルバイトはあくまで再就職活動の「補助」

失業保険は、働く意思と能力があるにもかかわらず仕事が見つからない人への生活支援と再就職支援を目的とした制度です。

アルバイトをすることは可能ですが、「失業」の状態を前提にしているという大原則を忘れてはいけません。

アルバイトはあくまでも、再就職に向けた準備期間の生活を支えるための補助的な手段と捉えましょう。

本業として就職する意思をしっかりと持ち、求職活動を継続することが何よりも重要です。

2. 不明な点は自己判断せず、ハローワークに相談

雇用保険のルールは非常に複雑で、個々の状況によって適用される規定が異なります。

  • 「自分のアルバイト収入がどう影響するのか」
  • 「この仕事は就職と見なされるのか」
  • 「証明書類が用意できない」

など、少しでも疑問や不安に感じることがあれば、必ず自己判断せずにハローワークに相談してください。

正直に相談することで、トラブルを未然に防ぎ、安心して再就職活動に専念することができます。

ハローワークの職員は、あなたの状況に合わせて適切なアドバイスをしてくれます。

次回予告|再就職手当の条件・金額・申請方法を解説

ここまで、失業保険受給中のアルバイトについて、その注意点やルールを詳しく解説してきました。

失業手当は、再就職に向けた大切な生活の支えとなりますが、失業期間中に次の仕事が決まる方も多くいらっしゃいますよね。

実は、一定の条件を満たして早期に再就職が決まると、「再就職手当」がもらえることをご存じでしょうか。

次回は、この再就職手当について徹底解説します。

  • どのような条件を満たせばもらえるのか
  • どれくらいの金額が支給されるのか
  • 申請の手続き方法

など、再就職を早めることで生活の安定につながるこの制度を、賢く活用するためのヒントをお届けします。

次回の記事は👉再就職手当の申請方法と必要書類|早期就職で一時金を受け取る

お楽しみに。

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