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2026年義務化で変わるカスハラ対策|安全配慮義務として企業が整えるべき実務対応

2026年義務化で変わるカスハラ対策 企業のハラスメント防止
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本記事は「企業のハラスメント対策バイブル」シリーズの第14話です。

第1話は👉企業必見|ハラスメント対策の重要性と法的義務|人材流出・組織力低下を防ぐ方法

前回は、パタハラを巡る重要裁判例を徹底分析し、司法が「何をもって企業の不利益取扱いと断じたか」を明らかにしました。

前回の記事は👉パタハラ裁判例で学ぶ不利益取扱いの境界線|男性育休と企業防御の実務

そこで浮き彫りになったのは、形式的な同意書よりも「誠実な協議プロセスの証拠化」が企業の命運を分けるという冷徹な事実です。

しかし、企業が守るべき安全配慮義務の範囲は、社内(パワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラ)に留まりません。

今、企業の経営基盤を揺るがしているのは、社外からの理不尽な攻撃――カスタマーハラスメント(カスハラ)です。

2026年10月の改正法施行により、カスハラ対策は努力義務から「法的義務」へと格上げされます。

前回の記事のパタハラ訴訟が「社内の歪み」を突いたように、これからはカスハラへの対応放置が「企業の安全配慮義務違反」として法廷で裁かれる時代がやってきます。

今回は、パタハラ対策で学んだ「証拠とプロセスの重要性」を念頭に置きつつ、司法がカスハラをどう定義し、どこに「拒絶の境界線」を引いているのかを詳説します。

この記事で分かること

  • 10年前から約2倍に急増し72.1%に達したカスハラ被害の深刻な実態
  • 言動の態様が社会通念を逸脱していれば組織として対応を拒絶できるという法的境界線
  • SNSの普及によって個人の不満が企業の存続を脅かす暴力へと変質した背景
  • 2026年10月から義務化される対策の具体的内容と被害者への不利益取扱いの禁止
  • 現場の孤立を防ぐ組織対応フローの構築と法的武器となる証拠化の運用手法
  1. 加速するカスハラ被害と、問われる企業の防衛力
  2. カスハラとは何か|法的定義と「正当な要求」との境界線
    1. 1. 顧客等からの言動であること|カスハラの対象となる範囲
    2. 2. 要求内容の妥当性、または手段・態様の不相当性|カスハラ判断の核心
    3. 3. 労働者の就業環境が害されること|安全配慮義務との関係
    4. 判定の要諦|カスハラは「何を」ではなく「どう」言っているかで決まる
  3. カスハラの歴史的変遷と社会的背景|歪んだ「お客様は神様」の終焉
    1. 自律の言葉から「特権の免罪符」へ|「お客様は神様」の誤読
    2. 「顧客の絶対的優位」が巨大化した結果、カスハラに防御不能となる企業
    3. カスハラに対する「正当な対抗手段」の欠如が招く、企業の自壊
  4. 2026年義務化で何が変わる?経営者が今から備えるべきカスハラ対策
    1. カスハラ対策「2026年義務化」という避けて通れない経営課題
    2. 経営資源の最適配分|カスハラを生む不採算顧客を排除するという経営判断
    3. カスハラを許さない「対等なパートナーシップ」が採用力を最大化する
  5. 2026年10月施行|カスハラ対策改正法で企業に課される2つの義務
    1. 1. カスハラ対策の要|組織的な防衛体制の構築(雇用管理上の措置)
    2. 2. カスハラ相談・通報をした労働者への「不利益取扱い」の禁止
    3. 3. カスハラにおける「安全配慮義務」の判断基準をどう見るか
  6. 経営者のためのカスハラ対策戦略|「組織的防衛」で現場を孤立させない
    1. 1. カスハラ対応で現場を独りにしない「組織対応フロー」の確立
    2. 2. カスハラ対策に不可欠な「証拠化」|録音・録画・記録のテンプレート運用
  7. まとめ|カスハラ義務化時代、経営者の「決断」が組織の未来を創る
  8. 次回予告|司法が引く「拒絶の境界線」――カスハラ裁判例の徹底分析

加速するカスハラ被害と、問われる企業の防衛力

2026年10月の「カスタマーハラスメント(カスハラ)対策義務化」を前に、現場の状況は「過去最悪」の局面にあります。

民間機関の最新調査(2025年)によれば、顧客からカスハラを経験した割合は72.1%に達しました。

10年前(2015年頃)の調査では同経験率は30〜40%台にとどまっていましたが、この10年で被害は倍増し、いまや現場の「日常」と化しています。

  • 最新データが示す深刻な実態(2025年調査)
    • 個人顧客からの被害
      • 72.1%(2023年比 3.8ポイント増)
    • 法人顧客からの被害
      • 51.3%(2023年比 2.1ポイント増)
    • 従業員への影響
      • 50.9%が「メンタルヘルスの低下」を自覚
    • 主な加害内容
      • 「威圧的言動(33.8%)」
      • 「執拗な言動(32.6%)」

かつてのカスハラは「一部の理不尽な客」による限定的なトラブルでしたが、現代ではSNSによる晒し行為や権利意識の肥大化により、攻撃が組織の存続を脅かすレベルまで凶暴化しています。

しかし、脅威が倍増したこの10年間、企業の備えは停滞したままです。

対策の必要性を認知している企業は7割を超えるものの、具体的なマニュアルを策定している企業は4割にすぎません。

半数以上の現場が、10年前とは比較にならないほどリスクが高まった現代において、依然として「丸腰」で戦わされているのが現実です。

本記事では、この放置された10年を挽回し、2026年の義務化を機に従業員と経営資源を守り抜くための「組織的防衛術」を詳説します。

カスハラとは何か|法的定義と「正当な要求」との境界線

カスハラ対応において、企業が最も恐れるのは「正当なクレームを切り捨ててしまうことによる炎上や信用失墜」です。

しかし、厚生労働省の指針および近時の司法判断に基づけば、その境界線は驚くほど明確に定義されています。

実務上、カスハラと認定されるのは、以下の「3つの要素」をすべて満たす場合です。

1. 顧客等からの言動であること|カスハラの対象となる範囲

対象は直接の消費者のみならず、BtoBの取引先担当者や、就職活動中の学生、さらにはSNS上の自称・顧客まで、業務遂行に関連する外部の人間すべてを指します。

2. 要求内容の妥当性、または手段・態様の不相当性|カスハラ判断の核心

ここが判断の核心であり、パタハラ訴訟における「業務上の必要性」と同様の重要度を持ちます。

  • 内容の不当性
    • 商品に欠陥がないのに返金を求める、過剰な慰謝料を要求するなど、要求そのものが法的・契約的根拠を欠くケース。
  • 態様の不当性
    • たとえ顧客の言い分(内容)に理があったとしても、その「伝え方」が社会通念を逸脱しているケース。

3. 労働者の就業環境が害されること|安全配慮義務との関係

従業員が強い精神的苦痛を感じ、本来の業務に支障をきたす、あるいは離職を余儀なくされるような状況を指します。

判定の要諦|カスハラは「何を」ではなく「どう」言っているかで決まる

実務担当者が現場で、あるいは法廷で「これはカスハラである」と主張するための決定的なポイントは、「内容(What)」以上に「態様(How)」を重視することにあります。

たとえ企業側にミスがあり、顧客が抗議する権利を有していたとしても、以下のような「不相当な態様」が認められれば、企業は法的にも道義的にも「対応を打ち切る権利」を有します。

  • 身体的・精神的な攻撃
    • 怒鳴る、机を叩く、人格を否定する暴言(「死ね」「無能」など)。
  • 過剰な拘束
    • 数時間に及ぶ電話、店舗への居座り、繰り返し同じ説明を強要し業務を停滞させる行為。
  • 土下座・謝罪の強要
    • 社会通念上、謝罪の域を超えた屈辱的な行為の強要。
  • デジタル・ハラスメント
    • 従業員の顔写真や氏名の無断撮影・SNS投稿、ネット掲示板での拡散を盾にした脅迫。

「正当なクレーム」には誠実に対応し、「不当な態様」には組織として即座に拒絶する。

この境界線を明確に引くことは、パタハラ対策で「不利益取扱いの境界線」を引いたのと同様、2026年義務化時代における企業の最優先事項となります。

カスハラの歴史的変遷と社会的背景|歪んだ「お客様は神様」の終焉

なぜ、今これほどまでにカスハラが社会問題化し、法による規制が必要となったのでしょうか。

その背景には、日本社会に深く根付いた「お客様は神様」という言葉の、悲しき誤読と変質があります。

自律の言葉から「特権の免罪符」へ|「お客様は神様」の誤読

かつての日本において、「お客様は神様です」という言葉は、歌手の三波春夫氏が自らのプロとしての心構えを説いたものでした。

三波氏にとっての「神様」とは、客が偉いという意味ではなく、演者(パフォーマー)が最高の芸を披露するために、「雑念を払い、神前で祈るような澄み切った心でお客様に向き合う」という、あくまで自分自身を律するための自制の言葉でした。

しかし、この言葉は高度経済成長期を経て、企業のサービス競争のキャッチコピーとして独り歩きを始めます。

いつしか、演者の側のプロ意識ではなく、顧客の側の「自分は神様だから何をしても許される」という特権的な免罪符へと歪んで定着してしまいました。

この「企業は無限に耐えるべき、顧客は絶対である」という誤った空気こそが、現在のカスハラを増長させる心理的な土壌となったのです。

「顧客の絶対的優位」が巨大化した結果、カスハラに防御不能となる企業

現代において、顧客と企業のパワーバランスを決定的に変質させたのはSNSの普及です。

もともと日本社会には「客が上位で店(企業)が下位」という構造が存在していましたが、SNSはこの既存の格差を「制御不能なレベルまで巨大化・怪物化」させました。

かつて、顧客の不満は電話や対面という「1対1」の閉じた関係の中で処理されていました。

この範囲であれば、企業も法や理屈に基づいた防御が可能でした。

しかしSNSの登場により、一消費者が「不当な要求」を瞬時に数万人に拡散し、不特定多数の「匿名的な正義感」を味方につけて企業を叩く「メディアの力」を手にしました。

もともと優位にあった顧客の立場に、無制限の攻撃力が加わったのです。

企業にとってブランドイメージは最大の資産ですが、SNS社会ではその急所を常に外部に握られている「人質」のような状況です。

かつてのクレームが「不満の解消」を求めていたのに対し、現代のカスハラは、この絶望的なまでに開いた力の差を背景に、企業を「公開処刑」の恐怖で支配し、不当な要求を呑ませるという構造に変質しています。

今、企業に突きつけられているのは、「いつまでも一方的な攻撃を甘んじて受け続けるのか」、それとも「組織として理不尽を撥ね退ける、正当な対抗手段を確立するのか」という、極めて厳しい選択です。

カスハラに対する「正当な対抗手段」の欠如が招く、企業の自壊

2026年の義務化を境に、企業が「正当な対抗手段」を身につけているか否かは、単なるコンプライアンスの問題を超え、企業の存続そのものを左右する分岐点となります。

対策を怠り、現場に忍耐を強いつづける企業には、以下のような逃れられない「自壊への連鎖」が待ち受けています。

人材の流出と採用市場からの拒絶

  • 企業が組織として不当な攻撃を撥ね退ける術(すべ)を持たなければ、現場の従業員はたった一人で理不尽な暴力にさらされ続けることになります。
  • その結果、心身を病む、あるいは「会社は自分を守ってくれない」という失望から、優秀な人材ほど早期に離職します。
  • 一度「ハラスメント放置企業」としての悪評が立てば、深刻な労働力不足が続く現代において、二度と新しい人材が門を叩くことはありません。

「ESG」の欠如によるブランド価値の失墜

  • 現代の企業評価には、ESG(環境・社会・ガバナンス)という視点が不可欠です。
  • 特に「S(Social:社会・人権)」において、従業員をカスハラから守ることは企業の重大な責務とみなされています。
  • 理不尽な要求に屈し、従業員を犠牲にし続ける姿勢は、「人権を軽視する不健全な企業体質」と判断され、投資家や取引先からの信頼を失う直結要因となります。

一般の良質な顧客からの離反

  • 「消費者からの厳しい目」は、加害者ではない一般の顧客からも注がれます。
  • カスハラが横行する現場では、従業員の疲弊によってサービスの質が著しく低下します。
  • また、店頭で怒号が飛び交うような不愉快な光景を放置する店に、一般の顧客は二度と足を運びたいとは思いません。
  • 賢明な消費者は、従業員を大切にしない企業の商品やサービスを避ける「倫理的な選択」を始めています。

「お客様は神様」という言葉の呪縛を解き、「顧客と従業員は対等なプロフェッショナルである」という三波氏本来の精神へ回帰する。

このパラダイムシフトを受け入れ、組織として「守るべき一線」を明確に定義することこそが、未来の市場で生き残るための唯一の戦略となります。

2026年義務化で何が変わる?経営者が今から備えるべきカスハラ対策

カスハラ対策を、単に従業員への「優しさ」や「親切心」で行うものだと誤解してはいけません。

経営者にとって、この対策の真の目的は、「法改正への適応」を大義名分として、不当な攻撃から「経営資源を奪還」し、「企業の市場価値を最大化」することにあります。

カスハラ対策「2026年義務化」という避けて通れない経営課題

まず直視すべきは、2026年10月の法改正です。

これにより、カスハラ対策は「努力目標」から、すべての企業に課される「法的義務」へと変わります。

  • 「知らなかった」は通用しない
    • 対策を怠り、従業員が心身を病むような事態を招けば、企業は「安全配慮義務違反」として巨額の損害賠償を命じられるリスクを負います。
  • 不利益取扱いの禁止
    • 被害を訴えた従業員に対し、「君の対応に問題があった」と責任を転嫁することは、法的に厳しく禁じられます。
    • パタハラ同様、声を上げた者が損をする組織体質は、もはや法が許しません。

経営資源の最適配分|カスハラを生む不採算顧客を排除するという経営判断

法改正という「外圧」は、実は経営を圧迫する「不採算顧客」を整理する絶好の機会でもあります。

  • 1%の悪意に奪われるリソースの奪還
    • 統計上、悪質なカスハラ加害者は顧客全体の1%に満たない存在です。
    • しかし、対策を怠れば、全従業員の精神的エネルギーの数割がこの1%に浪費されます。
  • 利益の源泉へ集中投資
    • 組織として毅然と「不当な要求」を撥ね退ける仕組みを作ることは、この無駄なコストをカットし、残り99%の良質な顧客へのサービス向上にリソースを集中させることを意味します。
    • カスハラ対策とは、究極の「生産性向上施策」なのです。

カスハラを許さない「対等なパートナーシップ」が採用力を最大化する

「お客様は神様」という歪んだ呪縛を解き、従業員の尊厳を守ることは、現代の採用市場において最強の武器となります。

  • 「従業員を盾にする企業」からの脱却
    • 「我が社は理不尽な暴力から従業員を守り抜く」と宣言することは、最高のリクルーティングメッセージになります。
    • 人手不足が深刻化する中で、優秀な人材は「自分を大切にしてくれない会社」を真っ先に見限ります。
  • ESG経営の体現
    • 従業員の人権を守る姿勢は、投資家や消費者からも「健全なガバナンス(統治)を持つ企業」として高く評価されます。

2026年10月施行|カスハラ対策改正法で企業に課される2つの義務

2026年10月の施行に向け、経営者が具体的に整備すべき法的要件は、以下の「措置義務」に集約されます。

これらは単なる努力目標ではなく、履行しなければ法令違反(労働施策総合推進法の義務違反)となり得るものです。

1. カスハラ対策の要|組織的な防衛体制の構築(雇用管理上の措置)

厚労省の指針では、使用者が対応を労働者個人のみに委ねることのないよう、組織的な体制整備を求めています。

  • 基本方針の策定と周知
    • 就業規則への明記に加え、ポスターやウェブサイトで「顧客等からの暴言・脅迫・過度な要求など、著しい迷惑行為には、組織として対応する」旨の方針を公式に表明すること。
  • 相談・通報体制の整備
    • 担当者が直ちに報告でき、管理職や本部が速やかに介入・遮断できる実効性のある窓口を構築すること。
  • 事後フォローの定型化
    • 被害を受けた労働者へのメンタルヘルスケアや、必要に応じた業務軽減、配置転換などを標準的なルールとして備えること。

2. カスハラ相談・通報をした労働者への「不利益取扱い」の禁止

経営者が実務上で最も留意すべきは、被害を申し出た従業員への対応です。

前回の記事(パタハラ)と同様、以下の行為は法的に禁じられています。

  • 責任転嫁の禁止
    • 被害を相談したことを理由に、「対応に問題があった」と一方的に責めたり、人事評価を下げたりすること。
  • 不当な人事処置の回避
    • 相談を機に、本人の意に反する配置転換や減給等を行うことは、原則として認められません。
    • 懲戒や配転を検討する際は、客観的な合理性と社会的相当性を慎重に検証しなければ、企業が「二次加害者」として問われるリスクが生じます。

3. カスハラにおける「安全配慮義務」の判断基準をどう見るか

今回の義務化により、裁判所が企業の責任を判断する際のハードルは実質的に上がります。

義務化された措置を講じていなかったという事実は、企業側の過失(安全配慮義務違反)を基礎付ける強力な要因となり得ます。

もし、著しいカスハラによって従業員に重度のメンタル障害や自殺事案などの重大な結果が生じた場合、企業は数千万円規模の損害賠償責任を負う可能性もあり、経営上の甚大な損失と社会的信用の失墜を招きかねません。

経営者のためのカスハラ対策戦略|「組織的防衛」で現場を孤立させない

カスハラ対策を実効性のあるものにするためには、「担当者の努力」に依存する段階を脱し、組織としての「防衛システム」を構築しなければなりません。

経営者が導入すべき具体的なアクションは以下の2点に集約されます。

1. カスハラ対応で現場を独りにしない「組織対応フロー」の確立

最大の失敗は、現場の担当者に「最後まで一人で解決させようとする」ことです。

法改正が求める措置義務の核心もここにあります。

  • 「二人以上」での対応を原則化
    • 攻撃的な兆候が見えた瞬間、あるいは一定時間を超える拘束(長電話など)が発生した時点で、自動的に上司や同僚が介入するルールを徹底します。
  • 介入・遮断の権限を明確にする
    • 「これ以上の対応は組織としてお断りします」と宣告し、通話を切断したり、退店を促したりする権限を、現場担当者ではなく「管理職」に明確に持たせます。
  • 本部のバックアップ体制
    • 現場で解決できない案件を即座に法務・総務などの「本部」へ引き継ぐルートを整備します。「ここからは専門部署が対応します」という一言が、加害者への強い抑止力となり、担当者の精神的負担を劇的に軽減します。

2. カスハラ対策に不可欠な「証拠化」|録音・録画・記録のテンプレート運用

悪質な加害者が最も嫌うのは「客観的な事実」です。

感情的な泥沼を防ぎ、法的な対抗手段を可能にするために、以下の「証拠化」を標準化します。

  • 録音・録画の自動化と告知
    • 「接客の品質向上とトラブル防止のため、録音(録画)を行っております」という告知は、それだけで加害者を冷静にさせる「盾」になります。
    • 最新の防犯カメラやウェアラブルカメラ、通話録音装置の導入は、従業員への安全投資として極めて高い費用対効果を生みます。
  • 「事実」に特化した記録テンプレート
    • 「ひどいことを言われた」という感想ではなく、「いつ、どこで、誰が、どのような文言を、何回発したか」を数分で入力できるフォーマットを整備します。
  • 証拠は「組織の矛」になる
    • 蓄積された記録は、警察への通報や弁護士を通じた禁示請求、あるいは不当な賠償請求を跳ね返すための最強の「矛」となります。
    • 組織が証拠を握っているという事実こそが、従業員に「会社が守ってくれる」という安心感を与えます。

まとめ|カスハラ義務化時代、経営者の「決断」が組織の未来を創る

2026年10月の法改正は、単なる規制強化ではなく、過剰なサービス至上主義から日本企業を解放する「再起動(リセット)」のチャンスです。

パワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラ対策が「社内の信頼」を築くものなら、カスハラ対策は「社外との境界線」を引くものです。

悪質な1%の悪意に浪費されていたエネルギーを奪還し、99%の良質な顧客と、働く従業員の尊厳のために再投資してください。

  • 現場を独りにしない。
  • 理不尽には、組織として毅然と「NO」を告げる。
  • 「組織が従業員の盾になる」と宣言する。

この決断こそが、人手不足の時代に選ばれ、持続可能な利益を生むための最強の経営戦略となります。

「お客様は神様」の呪縛を解き、対等なプロフェッショナルとしての誇りを取り戻す。その一歩を、今ここから踏み出しましょう。

次回予告|司法が引く「拒絶の境界線」――カスハラ裁判例の徹底分析

次回の記事では、2026年10月の義務化を見据え、カスハラを巡る重要裁判例を掘り下げます。

「客だから」という理由で対策を怠った企業が、なぜ数千万円の賠償責任を負うことになったのか。

一方で、毅然と対応を打ち切った企業の「正当性」はどこで認められたのか。

司法の判断基準から、2026年以降に経営者が守るべき「法的デッドライン」を明らかにします。

お楽しみに。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご相談の際は、以下よりお気軽にお問い合わせください。☟

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戸塚淳二
この記事を書いた人
  • 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
  • 日々、企業の「ヒト」と「組織」に関わる様々な課題に真摯に向き合っています。労働法の基本的な知識から、実務に役立つ労務管理の考え方や人事制度の整え方まで、専門家として確かな情報を初めての方にもわかりやすくお伝えします。

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