2025年 改正育児・介護休業法(9)男性の育児休業取得状況の公表義務における実務ポイント①

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2025年4月の法改正により、従業員数300人を超える企業にも、男性の育児休業等取得状況の公表が義務づけられることになりました。これにより、対象企業は法的に一定の情報を外部に向けて公開することが求められるようになります。

育児休業取得状況公表義務の記事はこちらから

実際に準備するとなると、「どうやって公表すればいいの?」「いつまでにやれば大丈夫?」と悩みますよね。

一緒に具体的な対応方法を確認していきましょう。

どこで公表すればいいのか?──公表「方法」の基本

公表方法と公表場所の選択肢

企業は、育児休業取得状況について「誰でも閲覧できるように」する必要があります。この要件を満たす公表場所として、以下のような選択肢があります。

  1. 企業の自社ホームページ
    • もっとも一般的で推奨される方法です。採用ページやCSR(社会的責任)活動ページなどに掲載することで、求職者や一般の閲覧者に広くアピールできます。
  2. 求人情報の媒体
    • ハローワーク求人票や企業説明資料など、採用活動の一環として使用される書類や情報の中で公表する方法です。ただし、この方法だけでは「不特定多数がいつでも閲覧可能」とまでは言えない場合があるため、補足的手段として使われます。
  3. 「両立支援のひろば」(厚生労働省委託のポータルサイト) https://ryouritsu.mhlw.go.jp/
    • 厚生労働省が運営する、企業の両立支援の取り組みを公開するポータルサイトです。企業はここに無料で登録でき、育児・介護との両立支援に関する情報(行動計画、公表データなど)を掲載することができます。特に次のような企業にはおすすめです。
      • 自社サイトがない、または更新できる体制が整っていない中小企業
      • 両立支援に力を入れており、対外的に好印象を与えたい企業
      • 法改正を機に、取り組みを「見える化」したいと考えている企業

公表に際しての注意点

  • いずれの公表方法でも、厚労省が示すフォーマットに準じた内容である必要があります。
  • 形式や内容が不十分な場合、「公表した」とは認められない可能性があります。
  • 特定の場所だけに限らず、複数箇所での公表も可。たとえば「自社HP+両立支援のひろば」のような併用も効果的です。

実務のポイント・コツ

  1. 自社サイトに掲載する場合は「トップページから2クリック以内でたどり着ける位置」にするのが望ましいとされています。
  2. 公表した日付と対象年度を明記すること。
    • 公表日:2025年6月1日 
    • 対象年度:2024年度(2024年4月1日〜2025年3月31日) という感じです。
  3. 可能であれば、PDFやエクセルではなく、HTMLページとして公開する方がアクセシビリティが高く、検索にも有利です。
    • なぜHTMLがいいの?
      • アクセシビリティが高い→ スマホやタブレットでも見やすく、視覚障がいのある方が使う読み上げソフトでも対応しやすいんです。
      • 検索されやすい(SEOに有利)→ Googleなどの検索エンジンが内容を読み取りやすく、見つけてもらいやすくなります。
    • 対比イメージ
      • PDF/Excel → ダウンロードしないと見られない、内容が検索されにくい。
      • HTML → ブラウザですぐ読める/検索されやすい

どこに出す?どこがダメ?公表場所ガイド

育児休業等取得状況の公表は、「どこで公表するか」も非常に重要なポイントです。公表先によっては、法的な要件を満たさない可能性もあるため注意が必要です。

ここでは、主な公表手段ごとの特徴と注意点を整理してみましょう。

公表手段メリット注意点
自社ホームページ求職者へのPR効果が高い/自社のブランド向上管理・更新の体制が必要
求人媒体(ハローワークなど)採用と連動しやすい一般公開とは言いづらい面も
両立支援のひろば国の公式サイトなので信頼性が高い/コスト不要アカウント登録などの事前準備が必要

一方で、一見情報を発信しているように見えても、「公表」としては不適切な手段もあります。
ついやってしまいがちな公表場所の例と、その理由を確認しておきましょう。

  1. 社内掲示板・イントラネットのみ
    • 理由: 社員しか閲覧できないため、外部(求職者や一般の人)から見えない→ 義務を果たしていることにならない
  2. SNSのみ(X、Instagram、Facebookなど)
    • 理由:
      • 情報が流れて埋もれやすい
      • アカウントがないと見づらいこともある
      • 投稿が一覧性・持続性に欠ける
    • → 一時的なPRとしては活用できても、正式な「公表」としては不十分
  3. メール配信・社外向けニュースレター
    • 理由:誰でも自由にアクセスできる情報ではない→ 閲覧対象が限られており、「公に広く公表」しているとは言えない
  4. 紙媒体(パンフレットや会社案内など)のみ
    • 理由: 一般の人が常時アクセスできるものではない→ オンライン上に恒常的に掲載されている必要があるため、これもNG

最後に、公表手段ごとの評価をまとめてみました。どの方法が推奨され、どれが不適切なのか、ひと目でチェックできます。

公表手段公表義務の観点からの評価
自社HP◎ ベスト
両立支援のひろば◎ 国が推奨
ハローワーク△ 補助的にはOKだが単独では不十分⇒求人に応募しない限り見られないこともある
社内掲示板・イントラ❌ 一般公開されていない
SNSのみ❌ 情報が流れやすく一時的
メール配信❌ 不特定多数がアクセスできない
紙媒体のみ❌ 閲覧にアクセス制限がある

どこに公表するかが大事、というお話を今回はお届けしました。
次回は、「いつまでに」「どんな形で」公表すればいいのか? 実際の事例なども交えてご紹介していきます!

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