
執筆者:社会保険労務士 戸塚淳二
会社員歴30年以上、転職5回以上を経験し、氷河期世代として激動の時代を生き抜いてきた社会保険労務士、戸塚淳二です。私自身が様々な働き方を経験してきたからこそ、机上の空論ではない、「働く人の視点」に立った労働法や社会保険法の役立つ情報をお届けします。あなたの日常に寄り添い、働き方と権利を守るためのヒントを分かりやすく解説していきます。
社会保険労務士登録番号:第29240010号
本記事は「あなたの働く人生を守るセーフティネット!雇用保険のすべて」シリーズの第5話です。第1話は👉雇用保険とは?何のためにある?|加入メリットや目的を解説
前回の記事では、失業給付金をもらうための重要な条件について解説しました。
前回の記事は👉雇用保険|失業給付金をもらえる条件と期間をチェックリストで徹底解説
ご自身の受給資格があることを確認できた方は、いよいよ申請手続きの準備です。
その第一歩として、絶対に欠かせないのが「離職票」という書類です。
「退職した会社が手続きしてくれるんでしょ?」と安心してはいけません。
離職票は、失業給付金の申請に必要な唯一の書類であり、その記載内容が給付額や給付期間に直結する、非常に重要なものです。
この記事では、離職票をスムーズに受け取り、正しく手続きを進めるためのポイントを解説します。
離職票とは?失業給付金申請に必須の重要書類
離職票は、あなたが雇用保険の被保険者であったことを証明し、退職したことを公的に示すための書類です。
これは退職した会社が作成し、ハローワークを通じて発行されます。
正式には、2枚の書類で構成されています。
- 雇用保険被保険者離職票-1
- 雇用保険被保険者離職票-2
この2枚が揃って初めて「離職票」としての効力を持ちます。
離職票が失業給付金に与える重要な役割
失業給付金は、離職票がなければ手続きを始めることすらできません。
この書類は、単にあなたが会社を辞めたことを証明するだけでなく、以下の重要な情報が記載されています。
- 離職理由
- 退職理由が「会社都合」か「自己都合」か。これによって、給付金がもらえるまでの期間や給付日数が大きく変わります。
- 離職前の賃金
- 失業給付金の金額を算出するための基礎となります。
- 雇用保険の加入期間
- 失業給付金を受給するための条件を満たしているかを確認する根拠となります。
離職票の内容に間違いがあると、給付金が本来もらえる額より少なくなったり、給付が遅れたりする可能性があります。
そのため、手元に届いたら必ず内容を隅々まで確認することが非常に大切です。
離職票の受け取り手順と退職後の交付タイミング
離職票は、退職後すぐに手に入るわけではありません。
会社がハローワークで手続きを行うため、受け取るまでに一定の期間がかかります。
会社側の手続き
- 会社はあなたが退職した後、10日以内にハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を提出します。
- ハローワークがこの書類を確認し、問題がなければ会社に「離職票-1」と「離職票-2」を交付します。
あなたへの交付
- 会社はハローワークから受け取った離職票を、あなたの自宅に郵送するか、手渡しで交付します。
- 一般的には、退職から10日〜2週間程度で手元に届くことが多いでしょう。
もし、この期間を過ぎても届かない場合は、すぐに会社の担当部署に確認の連絡を入れましょう。
離職票の記載内容と確認ポイント|給付金申請前に必ずチェック
離職票には2つの種類があり、それぞれ重要な役割があります。
離職票-1と離職票-2を徹底比較|違いと確認すべきポイント
離職票は2枚の書類で構成されており、それぞれ役割が異なります。それぞれの特徴を理解しておくことで、手続きがよりスムーズに進みます。
項目 | 離職票-1 | 離職票-2 |
---|---|---|
目的 | 個人情報・基礎情報の確認 | 離職理由・給付額・給付期間の確認 |
記載例 | 氏名、住所、被保険者番号、振込先口座 | 離職理由、賃金支払状況、離職日 |
使用場面 | ハローワークの申請書類に記入 | 給付金計算・受給資格確認 |
離職票-1
氏名、住所、被保険者番号などの基本的な個人情報が記載されています。
この書類は、ハローワークで失業給付金の申請をする際に、振込先口座を記入する欄があるため、あらかじめ振込先の銀行名、口座番号、名義人を確認しておきましょう。
離職票-2
失業給付金の金額や給付期間に影響する、最も重要な書類です。
以下の3つの項目は必ず確認してください。
「離職理由」
- 退職理由が「会社都合」か「自己都合」かによって、給付金がもらえるまでの期間や給付日数が大きく変わります。
- 会社の倒産や解雇などの「会社都合」の場合、自己都合よりも手厚い給付を受けられます。
- 記載された内容が自分の認識と合っているか、必ず確認しましょう。
「賃金支払状況」
- 退職前の6ヶ月間の給料が記載されています。
- この金額をもとに失業給付金の額が計算されるため、正確な金額が記載されているか、給与明細と照らし合わせてチェックしましょう。
「離職日」
- 正確な日付が記載されているか確認しましょう。
- この日付が、失業給付金の給付期間を計算する起点となります。
離職票の離職理由に誤りがある場合の対処法|給付金への影響と手続き手順
離職票に記載された離職理由が、あなたの認識と異なる場合は、決してそのままにせず、必ずハローワークで相談してください。
この違いは、失業給付金の給付日数や給付開始時期に大きな影響を与えるため、非常に重要なポイントです。
よくあるパターン 会社から退職を促されたのに自己都合になっている場合
「会社から退職を促された(退職勧奨)ので辞めることにしたのに、離職票には『自己都合退職』と書かれていた」というケースは少なくありません。
会社が自己都合にすることで、余計な事務手続きや、雇用調整助成金などに関する不利益を避ける目的があると考えられます。
このような場合は、本来「会社都合退職」として認められるべき可能性があります。
1. ハローワークの窓口で相談する
- 離職票を提出する際に、窓口の担当者に「記載された離職理由に異議がある」旨を伝えてください。
- あなたの主張を裏付ける客観的な証拠(例えば、退職勧奨を受けた際のメールや通話記録、上司との面談メモ、会社の業績不振を示す報道資料など)があれば、一緒に提示するとスムーズです。
2. 異議申し立ての手続き
- ハローワークの調査員が、会社とあなた双方に事実関係を確認します。
- 調査の結果、あなたの主張が認められれば、離職理由が訂正され、適切な給付を受けられるようになります。
離職票が届かない・紛失したときの対応方法|再発行手続きと注意点
「待っているけど届かない」「うっかり捨ててしまった」など、予期せぬトラブルが起こることもあります。そんな時でも焦らず、落ち着いて対処しましょう。
離職票が届かない場合
- まずは会社の担当者に電話で状況を確認しましょう。
- それでも対応してくれない場合や、連絡が取れない場合は、お住まいの地域を管轄するハローワークに相談してください。
- ハローワークが会社に発行を促してくれます。
紛失してしまった場合
- 会社に再発行を依頼するのが基本です。
- 会社が再発行してくれない場合や、すでに会社がなくなっている場合は、ハローワークで「離職票再交付申請書」を提出することで、ハローワークから再発行してもらうことができます。
離職票の保管方法と注意点|紛失を防ぐ管理のポイント
無事に離職票を受け取ったら、失業給付金の申請手続きが完了するまで大切に保管しておく必要があります。
この書類は、再発行に手間がかかるため、紛失しないように厳重に管理することが大切です。
離職票は、失業給付金の手続きが完了するまで、絶対に失くしてはいけない重要書類です。
特に以下の点に注意して保管しましょう。
- 折ったり汚したりしないようにする
- クリアファイルや封筒に入れて保管し、湿気や汚れから守りましょう。
- すぐに取り出せる場所に保管する
- 失業給付金の申請手続きは、ハローワークに複数回足を運ぶ必要があります。
- 必要な時にすぐに取り出せるよう、分かりやすい場所に保管しましょう。
- コピーを取っておくことを推奨
- 万が一紛失してしまった場合に備え、あらかじめコピーを取っておくことを強く推奨します。
まとめ|離職票は失業給付金を受け取るための重要な鍵
ここまで、退職後の離職票をスムーズに受け取り、正しく手続きを進めるためのポイントを解説してきました。
離職票は、失業給付金の申請に不可欠な書類であり、その内容は給付内容に直結します。
退職後の新しいスタートをスムーズに切るためにも、以下の3つのポイントを再確認しておきましょう。
1. 離職票の受け取りタイミングを正しく把握する
- 離職票は退職後すぐに届くわけではありません。
- 会社がハローワークに提出してから交付されるため、一般的には10日〜2週間程度かかります。
- この期間を過ぎても届かない場合は、会社やハローワークに確認の連絡を入れましょう。
2. 離職票の記載内容を徹底チェックして失業給付を正確に受ける
- 特に重要なのが「離職理由」です。離職理由が「会社都合」か「自己都合」かによって、失業給付金がもらえるまでの期間や給付日数が大きく変わります。
- もし、会社から「辞めてほしい」と言われたのに、離職票が自己都合になっている場合は、注意が必要です。
- 以下の表で、離職理由の違いによる給付期間と給付日数の差を確認しておきましょう。
離職理由 | 給付制限期間 | 給付日数(被保険者期間による) |
---|---|---|
会社都合(倒産・解雇など) | なし | 90日〜330日 |
自己都合(自己都合退職) | 7日間の待機期間+1ヶ月または3ヶ月の給付制限* | 90日〜150日 |
*5年間に3回以上自己都合退職した場合は3ヶ月の給付制限となります。
3. 離職票トラブルへの対処法と再発行手続き
- 離職票が届かない、または紛失してしまった場合でも、会社やハローワークに相談することで再発行の手続きが可能です。
- 慌てずに、落ち着いて対処法を知っておくことが、スムーズな手続きに繋がります。
離職票は単なる書類ではなく、あなたの失業期間中の生活を守るための重要な鍵です。この知識を活かして、万が一の事態にも備えておきましょう。
次回予告|ハローワークでの失業給付申請手続きの流れ
次回の記事では、いよいよハローワークでの具体的な手続きについて解説します。
失業給付金をもらうために不可欠な「失業認定」とは何か、申請に必要な書類や当日の流れを詳しく説明します。
コメント