本記事は「あなたの働く人生を守るセーフティネット!雇用保険のすべて」シリーズの第16話です。第1話は👉雇用保険とは?何のためにある?|加入メリットや目的を解説
前回は、教育訓練給付金がどんな制度なのか、そしてあなたが給付金を受け取るための「支給条件」について詳しく解説しました。
前回の記事は👉教育訓練給付金とは?種類・支給額・支給条件をわかりやすく解説
ご自身の雇用保険の加入期間や受給資格の有無など、大切な準備が整ったかと思います。
今回は、いよいよ実践編です。
せっかく受給資格があっても、手続きを間違えてしまうと給付金は受け取れません。
今回の記事では、給付金を確実に受け取るために必要な「申請手続きの流れ」を、一つひとつ具体的かつ丁寧に解説していきます。
手続きはいくつもありますが、ご安心ください。
ステップを間違えず、確実に進めることが成功の鍵です。一緒に確認していきましょう。
教育訓練給付金の申請手続き|初心者でもわかる5ステップ完全ガイド
教育訓練給付金を受け取るには、いくつかの手続きを踏む必要がありますが、安心してください。
以下の5つのステップを順番通りに進めれば、給付金を確実に受け取ることができます。
最も大切なのは、「受講前」の準備を確実に行うことです。
ステップ1|受給資格の確認とキャリアコンサルティングの手順|教育訓練給付金 受講前準備
給付金を受け取るための最重要ポイントは、講座の受講を開始する前に準備を完了させることです。
- 受給資格の照会
- まずは、ご自身の受給資格があるか、そして何日分の被保険者期間があるかを確認します。
- 最寄りのハローワークへ行き、「教育訓練給付金支給要件照会票」を提出しましょう。
- これにより、あなたがどの種類の給付金(一般・特定・専門実践)の対象となるかを正確に把握できます。
- キャリアコンサルティング(特定・専門実践のみ必須)
- 特定一般教育訓練給付金または専門実践教育訓練給付金を希望する場合は、講座の受講前にハローワークなどでキャリアコンサルタントによる面談を受けることが必須です。
- これは、選ぼうとしている講座が、あなたのキャリアプランに合致しているかを確認するための重要なプロセスです。
- 事前にハローワークで予約を取りましょう。
ステップ2|教育訓練給付金対象講座の選び方
自分の受給資格とキャリアプランが明確になったら、受講する講座を決定します。
- 指定講座の検索
- 給付金の対象となるのは、厚生労働大臣が指定した講座のみです。
- 以下の「教育訓練講座検索システム」で、ご自身の目的と受給資格に合った講座を選びましょう。
- 教育訓練講座検索システムURL|教育訓練給付の講座指定について|厚生労働省
- 学校・スクールへの申し込み
- 講座への申し込みや受講料の支払いなどは、ハローワークではなく、 受講者ご自身が個別に学校やスクールに対して行います。
- ハローワークはあくまで「給付金の申請窓口」であり、受講申込みは通常の習い事と同じように個別に行うことを覚えておきましょう。
ステップ3|専門実践教育訓練給付金の受講前手続き|申請方法と必要書類
専門実践教育訓練給付金を申請する場合は、受講後だけでなく、受講前にも特別な手続きが必要です。
- 受講前申請の提出
- 専門実践給付金の場合、原則として受講開始日の1ヶ月前までに、必要書類をハローワークに提出しなければなりません。
- この「受講前申請」がないと、どれだけ講座を頑張って修了しても、給付金を受け取ることはできません。期限を絶対に厳守してください。
- 受講前申請の必要書類(専門実践)
- この受講前申請に必要な書類は、講座の内容によって変わることはありませんが、申請者個人の状況によって追加で必要になる書類があります。
提出書類の分類 | 主な書類名 | 補足・注意点 |
必須書類 | 教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票 | ハローワークで入手します。 |
ジョブ・カード | ステップ1のキャリアコンサルティングで発行されたもの(発行から1年以内)。 | |
本人・住所確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカードなど。 | |
写真2枚 | 縦3.0cm×横2.4cmの証明写真(6ヶ月以内に撮影したもの)。 | |
払渡希望金融機関の通帳またはキャッシュカード | 給付金の振込先指定用です。 | |
該当者のみ | 専門実践教育訓練給付再受給時報告 | 過去に特定一般または専門実践給付金を受給したことがある場合。 |
離職票/雇用保険受給資格者証 | 離職中の方が該当する場合。 | |
委任状 | 代理人を通じて手続きを行う場合。 |
ステップ4|講座の受講と修了手続き|教育訓練給付金の受給条件
選んだ講座の学習を開始し、修了を目指します。
- 修了要件の達成
- 給付金を受け取るためには、講座が定める修了要件を満たす必要があります。
- これには、所定の出席率(例:8割以上)や、修了試験の合格などが含まれます。
- 修了後、学校から修了証明書を受け取ったら、給付金申請の準備が完了です。
ステップ5|給付金の支給申請方法|教育訓練給付金を確実に受け取る
講座を無事に修了したら、いよいよ給付金の支給を申請します。
給付金の種類によって申請回数が異なるため、注意が必要です。
- 一般教育訓練・特定一般教育訓練の場合(原則1回)
- これらの給付金は、講座の修了後に、必要な書類を揃えてハローワークに提出します。
- この申請手続きは原則1回で完了です。
- 専門実践教育訓練の場合(原則6ヶ月ごと)
- 専門実践教育訓練は期間が長いため、原則として6ヶ月ごとに受講状況の確認と、その期間分の給付金の支給申請手続きをハローワークで行う必要があります。
支給申請に必要な書類一覧|教育訓練給付金の申請手続き
講座を修了した後、給付金の支給申請を行う際には、以下の書類を揃えてハローワークの窓口に提出します。
書類名 | 入手元・補足 |
教育訓練給付金支給申請書 | ハローワークで入手、または学校から配布されます。 |
教育訓練修了証明書 | 受講した学校・スクールが、修了認定基準を満たした方に発行します。 |
領収書またはクレジット契約証明書 | 受講費用(入学金、授業料など)を支払ったことを証明する書類です。 |
本人・住所確認書類 | マイナンバーカード、運転免許証、住民票の写しなど。(郵送の場合はコピーを添付) |
払渡希望金融機関の通帳またはキャッシュカード | 申請者本人名義の口座情報が必要です。 |
教育訓練経費等確認書 | 学校・スクールが発行する、経費の内訳を証明する書類です。 |
雇用保険受給資格者証 | 離職者の方が基本手当の受給資格決定を受けている場合。(該当者のみ) |
訓練前キャリアコンサルティングの証明書類 | 特定一般および専門実践給付金の支給申請時に必要となる場合があります。(該当者のみ) |
教育訓練給付金の受給資格者証 | 専門実践給付金の受講前申請(ステップ3)後にハローワークから交付されたもの。(専門実践のみ) |
【特に注意が必要な点】 最終的な必要書類は個別の状況やハローワークの指示によって変わるため、申請手続きに入る前に、必ずハローワークに確認し、正確な提出書類リストを入手してください。
支給額の確定方法と振込までの期間|教育訓練給付金
- 支給額の確定
- 支給額は、ハローワークに提出された「領収書」と「教育訓練修了証明書」の内容に基づき、ハローワークが申請を承認した時点で確定します。
- 振り込みまでの期間(目安)
- 原則として、ハローワークが支給を決定した日の翌日から起算して7日以内に、ご本人が指定した金融機関の口座に振り込まれます。
- ただし、書類の不備があった場合や、月末月初などでハローワークの窓口が混み合っている場合は、支給決定までに時間がかかり、振り込みが遅れることがあります。
申請期限を厳守することが最重要|教育訓練給付金の注意点
給付金を確実に受け取るために、何よりも大切なのは申請期限を厳守することです。
期限を過ぎてしまうと、原則として給付金は支給されません。
教育訓練給付金の原則的な申請期限(いつまでに申請すべきか)
給付金の種類や申請のタイミングごとの提出期限は以下の通りです。
給付金の種類 | 申請のタイミング | 提出期限 |
一般・特定一般教育訓練 | 講座の修了後(1回限り) | 修了日の翌日から1ヶ月以内 |
専門実践教育訓練 | 6ヶ月ごとの申請 | 各期間の終了日の翌日から1ヶ月以内 |
専門実践教育訓練(最終申請) | 講座の修了後 | 修了日の翌日から1ヶ月以内 |
教育訓練給付金の申請期限を過ぎた場合の対応方法
- 一般・特定一般給付金の場合
- 修了日の翌日から1ヶ月の期限を過ぎてしまうと、原則として給付金は一切支給されません。
- この期限は絶対に厳守してください。
- 専門実践給付金の6ヶ月ごとの申請の場合
- 原則の支給申請期間をうっかり過ぎてしまった場合でも、次の支給申請期間に前回の分と合わせて申請することが可能です。
- これが実質的な救済措置となります。
- ただし、この場合でも、最終的な講座修了後の1ヶ月以内という大前提の期限を過ぎてしまうと、すべての給付が受けられなくなるため、申請忘れには細心の注意を払い、万が一の場合は速やかにハローワークに相談しましょう。
まとめ|教育訓練給付金の申請はハローワークへの事前相談が成功のカギ
教育訓練給付金を受け取るための手続きは、受給資格の確認から始まり、講座の申し込み、そして修了後の支給申請と、いくつかのステップに分かれています。
特に「受講開始前の手続き」や「申請期限」は厳しく定められており、ここを間違えてしまうと、せっかくの給付金が受け取れなくなってしまいます。
しかし、これらの手続きのすべての窓口となるのはハローワークです。
申請をスムーズに進め、給付金を確実に受け取るための最善策はただ一つ、「迷ったら、まずはお住まいの地域を管轄するハローワークに相談すること」です。
不安な点や疑問点は、必ず事前にハローワークの担当者に確認し、ご自身のキャリアアップへの挑戦を実りあるものにしてください。
次回予告|「教育訓練休暇給付金」とは?働きながら学ぶあなたをサポートする制度
さて、今回は教育訓練給付金の「申請手続き」について詳しく解説しました。
次回は、2025年10月1日からスタートする雇用保険の新しい制度である「教育訓練休暇給付金」に焦点を当てます。
この制度は、在職中の雇用保険被保険者が、仕事を続けながらスキルアップを目指すために、連続30日以上の無給休暇を取得した場合に、生活費を支援するものです。
次回の記事は👉会社員向け|教育訓練休暇給付金で無給休暇中も生活費をサポート
なお、この給付金は退職せずに学ぶ人を対象としており、退職後の学びについては、前回までに解説した「専門実践教育訓練給付金」などの別制度が適用されます。
次回は、この「教育訓練休暇給付金」の詳しい要件や、在職中の学びを支える仕組みについて解説します。
ご期待ください。

執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
会社員歴30年以上、転職5回を経験した氷河期世代の社会保険労務士です。自らが激動の時代を生き抜いたからこそ、机上の空論ではない、働く人の視点に立った情報提供をモットーとしています。あなたの働き方と権利を守るために必要な、労働法や社会保険の知識、そしてキャリア形成に役立つヒントを、あなたの日常に寄り添いながら、分かりやすく解説します。
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