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高年齢求職者給付金とは?65歳以上でももらえる失業一時金の条件・金額・手続き

高齢者求職者給付金 働く人の権利と安心ガイド
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本記事は「あなたの働く人生を守るセーフティネット!雇用保険のすべて」シリーズの第23話です。第1話は👉雇用保険とは?何のためにある?|加入メリットや目的を解説

高年齢求職者給付金は、65歳以上で離職し再就職を目指す方の生活を支援するため、雇用保険から一時金として支給される重要なセーフティネットです。

前回の記事で解説した「高年齢雇用継続給付」が、60歳以降も働き続ける方を対象としていたのに対し、この給付金は「65歳以降に離職し、再び働くことを希望する方」のために設けられています。

今や、雇用保険の加入にも、この給付金の受給にも年齢の上限はありません。

しかし、制度の認知度は低く、多くの高齢者が受給せずに機会を逃しています。

本記事で制度を正確に理解し、ご自身のセーフティネットを確保しましょう。

高年齢求職者給付金の対象者と要件|雇用保険加入も給付金受給も、年齢上限はなし

2017年の法改正により、雇用保険の適用が拡大され、「何歳まででも働ける」環境に対応した制度設計となっています。

項目要件の詳細重要な補足事項
雇用保険加入の上限なし。
2017年1月の法改正により、雇用保険の加入に年齢の上限は撤廃されました。75歳で働いていても、要件を満たせば「高年齢被保険者」として加入できます。
給付金受給の上限なし。
受給資格が「65歳以上で離職した方」と定められているため、70代、80代で離職しても、他の要件を満たせば受給可能です。
対象年齢(下限)離職日において65歳以上であること。65歳未満は通常の失業手当(基本手当)の対象となります。
保険期間要件離職日以前の直近1年間で、雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること。
年金との併給老齢年金を受給している場合でも、給付金と併給(同時に受給)が可能です。老齢年金が給付金の受給によって減額・支給停止されることはありません。
離職理由自己都合、会社都合など、離職理由は問いません。

年齢制限に関する大きな変更点|高年齢求職者給付金

高年齢求職者給付金で最も重要なポイントは、「雇用保険への加入」と「給付金の受給」の両方で、年齢の上限が撤廃された点です。

かつて、雇用保険は原則65歳未満が対象でしたが、2017年1月の法改正により年齢の上限が撤廃されました。

これにより、65歳以降に初めて就職した方や、一度離職後に再就職した方も、所定の労働時間等の要件を満たせば、年齢に関係なく雇用保険に加入できます。

このため、70代や80代で離職した場合でも、直近1年間に6ヶ月以上の雇用保険加入期間があれば、高年齢求職者給付金の対象となります。

また、通常の失業手当と異なり、老齢年金との併給が可能であるため、年金受給者にとっても安心して再就職活動ができるよう配慮されています。

高年齢求職者給付金支給額の算出方法と具体的なシミュレーション

この高年齢求職者給付金の最大の特徴は、通常の失業手当(基本手当)と異なり、原則として一時金(一括)としてまとめて支給される点です。

高年齢求職者給付金受給の手続き回数の違い

通常の基本手当は、原則として4週間に一度ハローワークで失業認定を受け、その都度、支給日数分が分割して振り込まれます。

そのため、定期的なハローワークへの訪問が必要です。

一方、高年齢求職者給付金は一時金であるため、定期的な訪問は不要ですが、「求職の申し込み・申請(初回)」と「失業の認定(支給決定のための訪問)」など、最低でも2回程度はハローワークを訪れる必要があります。

一度の認定で、定められた日数分(30日または50日分)がまとめて支給されます。

支給額は、離職前の賃金を基に計算される「基本手当日額」と、雇用保険の加入期間に応じた「支給日数」を掛け合わせて決定されます。

高年齢求職者給付金支給額の計算ロジック

ステップ項目計算式
① 賃金日額離職前の賃金から1日あたりの賃金を算出。離職前の直近6ヶ月間の賃金総額 ÷ 180日
② 基本手当日額賃金日額に給付率(約50%〜80%)を乗じたもの。賃金日額が低いほど給付率が高くなる仕組みです。
③ 最終支給額基本手当日額に、雇用保険の加入期間に応じた日数を乗じる。基本手当日額 × 支給日数(30日または50日)

支給日数と上限額(2025年8月1日改定)

項目詳細
支給日数加入期間1年未満|30日分、
加入期間1年以上|50日分
基本手当日額の上限7,623円
基本手当日額の下限2,411円
受給期間離職日の翌日から1年間。(この期間内に申請が必要です)

具体例シミュレーション(加入期間1年以上、賃金日額1万円の場合)

ご自身の支給額がどの程度になるか、以下の具体例で確認してみましょう。

設定条件
  • 雇用保険の加入期間|1年以上
  • 離職前6ヶ月間の総賃金(手当や残業代込み)|180万円
ステップ計算内容計算式結果
① 賃金日額離職前6ヶ月の賃金を180日で割ります。1,800,000円÷180日10,000円
② 基本手当日額賃金日額に給付率(※)を適用します。10,000円×60%(例)6,000円
③ 最終支給額基本手当日額に支給日数50日分を乗じます。6,000円×50日300,000円

※この場合の給付率(60%)は、賃金水準に応じて自動的に決まります。

結果の読み方

この例の場合、再就職までの活動資金として、30万円が一時金としてまとめて支給されることになります。

高賃金者の場合

仮に離職前賃金が高く、基本手当日額が上限額の7,623円(2025年8月改定)になった場合、支給額は以下のようになります。

7,623円(上限額)×50日分=381,150円

ご自身の正確な給付額については、離職時の年齢や賃金水準によって変動するため、必ずハローワークで確認が必要です。

高年齢求職者給付金の認知度と受給に向けた行動の必要性

この高年齢求職者給付金は、65歳以降の再就職活動を支援する極めて重要な制度です。

それにもかかわらず、その認知度は非常に低いという深刻な課題を抱えています。

現在、関連給付を含めた制度の認知度は約2割程度にとどまってます。

「制度を知らなかった」「自分が対象か分からない」といった理由で、受給対象者であるにもかかわらず申請しないまま、機会を逃してしまう高齢者が多いのが現状です。

特に、会社からの説明が不十分な場合や、情報がインターネット中心になったことで情報が届きにくい世代には、自治体からの直接的な案内など、積極的な周知が求められています。

あなたは、ご自身でこの記事を読まれたことで、既に貴重な情報を得ています。

この制度は、ご自身の生活の安心感を高めるための「セーフティネット」です。

受給資格があるにもかかわらず、手続きをせずに権利を放棄することのないよう、ぜひ行動に移してください。

まとめ|65歳以降の再就職を支える高年齢求職者給付金の活用を

高年齢求職者給付金は、年齢の上限なく、65歳以降の再就職活動を経済的に支えるための最重要制度です。

ご自身が対象となる可能性がある場合は、以下の行動を速やかに実行してください。

  1. 離職後1年間の受給期間を逃さぬよう、速やかにハローワークに相談する。
  2. ハローワークで求職の申し込みを行い、申請手続きを進める。

この一歩を踏み出すことが、65歳以降の生活の安心感を確保するための最良の手段となります。

次回予告|働くパパ・ママ必見!「育児休業給付金」を徹底解説

今回の記事では、65歳以降の離職者を支える高年齢求職者給付金について解説しました。

社会全体で働き方を支える制度がある一方で、現役世代のキャリアとライフイベントを両立させるための重要な仕組みもあります。

それが「育児休業給付金」です。

次回は、「仕事を続けながら育児も頑張りたい」と考える会社員のあなたのために、育児休業給付金制度を徹底解説します!

  • いくらもらえる?
    • 給付額の計算方法と、休業開始後の賃金保障の割合。
  • どれくらいの期間もらえる?
    • 基本的な支給期間と、延長が認められる条件。
  • 給付金の種類は?
    • 従来の育休に加え、パパ・ママ育休プラス、そして2022年から始まった出生時育児休業(産後パパ育休)など、知っておくべき給付の種類とその特徴。

これらについて、順次解説していきます。

どうぞご期待ください!

筆者 戸塚淳二
筆者 戸塚淳二
  • 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
  • 会社員歴30年以上、転職5回を経験した氷河期世代の社会保険労務士です。自らが激動の時代を生き抜いたからこそ、机上の空論ではない、働く人の視点に立った情報提供をモットーとしています。あなたの働き方と権利を守るために必要な、労働法や社会保険の知識、そしてキャリア形成に役立つヒントを、あなたの日常に寄り添いながら、分かりやすく解説します。

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