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税金の扶養とは?所得税・住民税と配偶者控除の仕組みを解説

税金の扶養とは 会社員の給料とお金の基本
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本記事は「会社員の給料とお金の基本」シリーズの第13話です。

第1話は👉給料・給与・賃金・報酬の違いとは?知らないと損するお金の基本

前回の記事では、パートで働く上で考慮すべき「3つの関門(所得税・住民税・社会保険)」の全体像を整理しました。

前回の記事は👉扶養の年収の壁とは|税金と社会保険は別モノです

今回はそのうち、「所得税」と「住民税」の2つに焦点を絞ります。

給与から天引きされるこれら2つの税金は、単なる控除項目ではありません。私たちがどの程度働くかによって、「本人自身の税負担」だけでなく、「配偶者の税負担」をも左右する、世帯単位の「戦略的な壁」として機能しているからです。

「所得税の扶養内なら安心」といった言葉を耳にしますが、ここに大きな落とし穴があります。

パートの収入が増えるということは、単に「本人に税金がかかる」というだけではありません。世帯全体で見れば、「配偶者の税金を安くしていた割引枠(配偶者控除・配偶者特別控除等)」が縮小・消滅することを意味します。

重要なのは、この「割引枠の縮小」が、所得税と住民税の双方で同時に起きるということです。

2026年からの「所得税178万円の壁」という新基準だけを見て安心していると、住民税の判定や配偶者の扶養控除のズレにより、思わぬ手取り減少を招くリスクがあります。

本記事では、所得税・住民税それぞれの制度が「本人の課税」と「配偶者の控除」にどう影響を及ぼすのかを紐解き、世帯全体の税負担を最小限に抑えるための考え方を解説します。

本人課税と配偶者控除の連動構造

税金の壁を検討する際、多くの人が「自分自身の給与から天引きされる税金」を基準に判断しがちです。

しかし、実務上は、自身の年収増が「配偶者の税負担」にどう影響するかを含めて考える必要があります。

具体的には、年収が一定の基準を超えると、以下の2つの事象が同時に進行します。

① 本人課税の開始

自身の年収が課税ライン(所得税であれば178万円、住民税であれば各自治体の定める非課税限度額)を超えると、自分自身の給与に対して所得税や住民税が課税されます。

これにより、額面上の給与が増えても、税負担によって実質的な手取り増加分が相殺されることになります。

② 配偶者控除・特別控除の縮小

自身の年収が一定ラインを超えると、配偶者が受けている税制上の控除(配偶者控除・配偶者特別控除)が段階的に縮小または消滅します。

この控除は「配偶者が一定以下の収入であること」を条件に適用されるため、自身の収入増が配偶者の納税額を増やす結果となります。

世帯収支における影響の整理

この構造を整理すると、年収が基準を超えた場合、世帯全体では以下の2つの要素を同時に考慮しなければなりません。

  • 本人側の影響: 自身の給与額面から税金が控除されることによる手取りの減少。
  • 配偶者側の影響: 控除額の縮小に伴う、配偶者の所得税・住民税の納税額の増加。

世帯単位で見れば、自身の収入増加分から「自分にかかる税金」と「配偶者の増税分」を差し引いた額が、実質的な世帯所得の増加分となります。

「所得税の課税ライン」という一側面のみを基準とするのではなく、自身の年収増が世帯全体の税負担をどのように変化させるかという連動性を把握しておくことが、適切な働き方を選択する上で重要な視点となります。

【所得税】「178万円の壁」と控除縮小の連動構造

2026年からの税制改正により、所得税の課税開始ラインが「178万円」へと引き上げられたことは、多くのパート勤務の方にとって大きなトピックです。

しかし、この「178万円の壁」を正しく理解するためには、自分自身の課税ラインだけでなく、配偶者の所得税計算に影響する「配偶者控除・配偶者特別控除」の仕組みも併せて理解しておく必要があります。

本人課税の「178万円の壁」

2026年の税制改正により、給与収入のみで他に所得がないパート勤務者であれば、年収178万円までは所得税が発生しないケースが一般的となりました。

これは、基礎控除や給与所得控除の見直しによって、所得税が課税されない範囲が拡大したためです。

その結果、以前よりも多く働いても本人に所得税がかかりにくくなり、「178万円の壁」が新たな目安として注目されるようになりました。

配偶者控除・配偶者特別控除との関係

一方で、配偶者(稼ぎ手)側の所得税計算では、パート勤務者の年収に応じて「配偶者控除」または「配偶者特別控除」が適用されます。

給与収入のみの場合の主な目安は次のとおりです。

パート収入配偶者が受けられる控除
136万円以下配偶者控除
136万円超~169万円以下配偶者特別控除(満額)
169万円超~207万円以下配偶者特別控除(段階的に縮小)
207万円超控除なし

つまり、年収169万円までは配偶者特別控除を満額受けられますが、169万円を超えると年収の増加に応じて控除額が徐々に減少し、最終的に207万円で控除がなくなります。

なお、この控除はパート勤務者本人の年収だけで決まるものではありません。

控除を受ける配偶者(稼ぎ手)側の合計所得金額にも上限があり、900万円(給与収入のみの場合、目安として年収1,095万円)を超えると控除額が段階的に縮小し、1,000万円(同、目安年収1,195万円)を超えると配偶者控除・配偶者特別控除ともに一切受けられなくなります。

そのため、上表で示した控除額の目安は「配偶者の合計所得金額が900万円以下であること」を前提とした数値です。

「178万円まで非課税」と「世帯の税負担」は別問題

ここで注意したいのは、

「178万円まで本人に所得税がかからない」ことと、「世帯全体の税負担が増えない」ことは別問題である

という点です。

例えば、パート収入が180万円の場合を考えてみましょう。

  • 本人については178万円を超えるため、わずかに所得税が発生します(※178万円超過分に対してのみ課税)。
  • また、169万円を超えているため、配偶者が受けている配偶者特別控除はすでに縮小しています。

その結果、

  • 本人の所得税は発生
  • 配偶者の所得税も増加

という状況が発生します。

「178万円の壁」だけで判断しない

所得税の課税開始ラインが178万円まで引き上げられたことで、

178万円までは税金がかからないから安心

と考えがちです。

しかし実際には、

  • 136万円を超えると配偶者控除から配偶者特別控除へ移行する
  • 169万円を超えると配偶者特別控除が縮小し始める
  • 207万円を超えると配偶者特別控除がなくなる

という仕組みが存在します。

そのため、自分の収入増加額・配偶者の税負担増加額・世帯全体の手取り額をセットで考えることが重要です。

世帯全体の手取りを最大化するためには、自身の収入増加と配偶者の税負担の変化を合わせて考えながら、働き方を選択することが大切です。

【住民税】の死角と自治体ごとの違い

住民税は市区町村や都道府県に納める地方税です。

「税金の壁」というと所得税ばかりが注目されがちですが、実際には住民税にも独自の課税基準や控除制度が存在します。

そのため、「所得税はかからないと思っていたのに、翌年になって住民税の納付書が届いた」というケースも少なくありません。

また、住民税にも所得税と同様に「配偶者控除」「配偶者特別控除」があるため、本人だけでなく配偶者の税負担にも影響します。

住民税にも配偶者控除・配偶者特別控除がある

所得税だけでなく、住民税にも配偶者控除・配偶者特別控除があります。

そのため、パート収入が増えると、

  • 本人に住民税がかかる
  • 配偶者の控除額が減り、配偶者の住民税も増える

という現象が起こります。

ただし、住民税の控除額は所得税よりも小さく設定されています。

例えば、配偶者控除の満額は、

税目控除額
所得税38万円
住民税33万円

となっています。

そのため、配偶者控除が縮小・消滅した場合には、所得税だけでなく住民税にも影響が及びます。

具体的には、配偶者特別控除が段階的に縮小するタイミング自体は所得税・住民税でほぼ同じ年収ラインですが、各段階の控除額は住民税の方が低く設定されています。

本人の住民税は所得税より早く発生する

住民税で特に注意したいのは、本人への課税開始ラインです。

所得税は2026年から給与収入178万円まで課税されないケースが一般的になりました。

しかし住民税はそれより低い収入でも課税されます。

住民税の非課税限度額は自治体や家族状況によって異なりますが、給与収入のみの場合、おおむね110万円前後が一つの目安となります。

つまり、

  • 所得税はゼロ
  • 住民税は発生

という状態が十分あり得ます。この点が住民税の大きな特徴です。

具体例|本人と配偶者の双方に影響するケース

例えば、

夫:会社員(年収500万円)

妻:パート

という世帯を考えてみます。

妻の年収が100万円の場合、

  • 妻本人の住民税は非課税
  • 夫は配偶者控除を受けられる

状態です。

その後、妻の年収が170万円になったとします。

すると、

  • 妻本人に住民税が発生する可能性がある
  • 配偶者特別控除が縮小するため、夫の住民税負担も増加する

という変化が起こります。

妻の収入が増えたことで世帯収入は増えていますが、「妻自身の住民税」と「夫の住民税増加」が同時に発生することになるのです。

自治体ごとの違いにも注意

住民税は地方税であるため、非課税限度額の判定には自治体ごとの違いがあります。

ただし近年は大きな差は少なく、多くの自治体で似た基準が採用されています。

それでも、

  • 扶養親族の人数
  • ひとり親かどうか
  • 障害者控除の有無

などによって非課税となるラインは変わります。

「○万円までなら絶対に住民税はかからない」と一律に考えるのではなく、自分が住んでいる自治体のホームページで確認することが重要です。

住民税で見るべきポイント

住民税について確認すべきポイントは次の2つです。

① 自分自身に住民税が発生する年収はいくらか

② 自分の収入増加によって、配偶者の配偶者控除・配偶者特別控除に影響が出ないか

所得税だけを見ていると、この住民税の影響を見落としがちです。

世帯全体の手取りを正確に把握するためには、所得税と住民税をセットで考えることが重要になります。

まとめ|「自分の税金」だけでなく「世帯の税金」で考える

パート収入が増えると、本人の所得税・住民税だけでなく、配偶者控除・配偶者特別控除の縮小を通じて配偶者側の税負担も連動して変化します。

「178万円まで本人非課税」であることと「世帯の税負担が増えない」ことは同じではなく、住民税は所得税より低い年収で課税が始まるため「所得税はゼロでも住民税はかかる」というケースもあります。

働き方を考える際は、「○万円の壁を超えるかどうか」ではなく、収入増加額と世帯全体の税負担増加額を比較して最終的な手取りがどう変わるかで判断することが重要です。

本記事の控除額・境界ラインは、配偶者(稼ぎ手)側の合計所得900万円以下であることを前提としています。配偶者の年収が高い世帯では適用条件が異なるため、あわせてご確認ください。

税金の壁は、働くことを制限するためのものではありません。

制度の仕組みを正しく理解し、自分自身と家族にとって最適な働き方を選択するための判断材料として活用していきましょう。

次回予告|より大きな「壁」との対峙

今回整理したのは、あくまで税金に関する壁でした。

しかし、働く世代にとって、税金以上に手取りへ大きな影響を与えるのが、社会保険料(健康保険・厚生年金)の負担です。

次回は、いわゆる「社会保険の壁(106万円・130万円)」について解説します。

税金の壁とは異なり、社会保険への加入は保険料の負担が非常に大きく、また将来の年金受給額にも直結する「世帯の収支と将来設計」を大きく変える要因となります。

税金の壁を理解した上で、次に検討すべきこの大きな壁について、具体的な判断基準を整理していきます。

戸塚淳二
この記事を書いた人
  • 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|29240010号)
  • 会社員歴30年以上、転職5回を経験した氷河期世代の社会保険労務士です。自らが激動の時代を生き抜いたからこそ、机上の空論ではない、働く人の視点にたった情報提供をモットーとしています。あなたの働き方と権利を守るために必要な、労働法や社会保険の知識、そしてキャリア形成に役立つヒントを、あなたの日常に寄り添いながら、分かりやすく解説します。

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