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育児時短就業給付で復帰後の収入減を補填|時短勤務の家計不安を解消

育児時短就業給付金 働く人の権利と安心ガイド
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本記事は「あなたの働く人生を守るセーフティネット!雇用保険のすべて」シリーズの第27話です。第1話は👉雇用保険とは?何のためにある?|加入メリットや目的を解説

前回の記事では、育児休業中の社会保険料の全額免除という強力な家計防衛策について解説しました。

前回の記事は👉育児休業中の社会保険料免除|出生後休業支援給付金 vs 有給の給与 どっちが得か

保険料負担がゼロになっても年金が減らないこの特例措置のおかげで、「休業中の収入減」という不安は大きく緩和されます。

しかし、育児休業を終え、いざ職場に復帰する際、新たな、そして非常に多くの親が直面する経済的な壁が立ちはだかります。

それが、「時短勤務による収入減」です。

この記事でわかること

  • 2025年4月からの給付金「育児時短就業給付」の全貌
  • 育児時短就業給付を受けられる「3つの必須条件」と期間
  • 育児時短就業給付を確実に受給するための「会社との連携術」

時短勤務の経済的なジレンマ|子育て中の7割が直面する収入減の現実

幼い子どもを育てる家庭では、保育園の送迎や突発的な病気対応のため、勤務時間の短縮は事実上必須の選択肢となります。

この実態は、統計データからも明らかです。

【データが示す現実】 厚生労働省の「国民生活基礎調査(2021年)」によると、子育て中の女性のうち、約7割が時短勤務を選んでいます。時短勤務は、もはや一部の選択肢ではなく、子育て世帯にとっての「標準的な働き方」となりつつあるのです。

時短勤務は育児と仕事の両立に不可欠ですが、その代償として避けられないのが「賃金の低下」です。

  • 例えば、1日8時間勤務から6時間勤務に短縮すれば、賃金は単純計算で25%減少します。
  • 約7割の親が選ぶ時短勤務によって、手取りの減少幅が大きくなるのが実情です。

この「時短勤務は必要だが、手取り減少は避けられない」というジレンマこそが、育児復帰後の家計を悩ませる「隠れた壁」です。

収入が減ることで、せっかく復帰したにもかかわらず、再びキャリアを中断せざるを得ない状況に陥る家庭も少なくありませんでした。

育児時短就業給付|時短勤務の収入減を補填する新制度

このような復帰後の経済的な課題を解決し、約7割の親が直面する収入の壁を取り除くため、国は新たな支援策を打ち出しました。

それが、2025年4月からの導入されている「育児時短就業給付」です。

この制度は、時短勤務で低下した賃金の一部を補填し、働く親の家計を力強く支えることを目的としています。

時短勤務を選んでも、経済的な理由で諦めずにキャリアを継続できる環境を整備するための、待望の制度と言えます。

この記事では、あなたの家計とキャリアを守るために、この新しい給付金制度の全貌と具体的な活用戦略を徹底解説します。

育児時短就業給付の全貌|時短勤務による収入減を補填する新制度

育児時短就業給付は、子育て中の親がキャリアを諦めずに済むよう、国が設けた画期的なセーフティネットです。

この制度の目的と、あなたが給付を受けられるための具体的な要件を詳しく見ていきましょう。

制度の目的と概要|育児時短就業給付で時短勤務の収入減を補填

項目詳細
正式名称育児時短就業給付
制度の目的短時間勤務による賃金低下を補填し、経済的な不安を軽減することで、離職防止とキャリア継続を支援すること。
法的根拠雇用保険法に基づく給付金(雇用保険の財源から支給される)。

この給付は、育児休業中に支給される「育児休業給付金」とは異なり、職場に復帰し、実際に働いている期間を支援するものです。

これにより、「フルタイムに戻ると育児が難しい」「時短勤務だと収入が不安」という二律背反の課題を解消します。

支給対象者と対象期間|育児時短就業給付で手取りを守る条件

育児時短就業給付を受け取るためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。

特に、制度の適用開始日と子どもの年齢には注意が必要です。

1. 支給対象者(3つの必須要件)

給付を受け取るのは、原則として以下の3つの要件をすべて満たす方です。

  1. 2025年4月1日以降に育児休業を終了し、職場に復帰した方。
    • この日が、制度の適用開始の起点となります。現在は、この条件を満たした方がすでに給付の対象となっています。
  2. 雇用保険の被保険者としての基盤がある人
    • 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて時短就業を開始していること、または時短就業開始日前2年間に、被保険者期間が12か月以上あること。
  3. 子が2歳に達する日の前日が属する月までであること。
    • 給付の対象となる期間は、子が2歳に達する日の前日が含まれる月までに限られます。

2. 対象期間と期間設定のルール

給付を受けられる期間は、以下の通り子が2歳になるまでが原則です。

項目期間設定のルール
給付開始育児休業終了後、短時間勤務を開始した月のから
給付終了子が2歳に達する日の前日が属する月まで

ただし、注意が必要な点として、この給付は分割取得が可能です。

育児休業給付金のように原則として「休業した月」単位で支払われるのではなく、短時間勤務を継続している期間に対して支給されます。

また、子が2歳未満であれば、例えば「1年間フルタイム復帰した後、改めて短時間勤務を利用する」といった柔軟な働き方にも対応できるよう設計されています。

育児時短就業給付の計算方法|復帰後収入を補填する支給額のルール

この制度の計算方法は、驚くほどシンプルです。

基本となるルールは、たったの「10%」。これだけを押さえておけば十分です。

育児時短就業給付支給額の計算式

育児時短就業給付として支給される額は、原則として以下の計算で決まります。

支給額 = 時短勤務中に「今」支払われている賃金 × 10%

ここで勘違いしてはいけないのが、「育休前の高い給料の10%」がもらえるわけではないという点です。

例えば、育休前の月収が30万円だった人が、時短勤務で月収20万円(約3割減)になった場合、給付額は「30万円×10%=3万円」ではなく、「20万円×10%=2万円」となります。

育児時短就業給付|時短勤務が増えると支給額はどう変わる?

「給料が減った分を補填する」という仕組みではないため、勤務時間を短くして給与が下がれば、それに比例して給付金の額も下がります。

  • 賃金3割減(月収21万円)の場合
    • 給付額は 2.1万円
  • 賃金4割減(月収18万円)の場合
    • 給付額は 1.8万円

このように、「今の給料の1割」が上乗せされるのがこの制度の正体です。

唯一にして最大のルール「100%の壁」

ただし、際限なく上乗せされるわけではありません。

「給料 + 給付金」の合計が、育休前の賃金を超えないという大原則があります。

項目内容
支給の天井育休開始前の賃金(100%)
調整の仕組み合計額が100%を超える場合、超えた分はカットされる。

この「100%の壁」があるため、時短勤務をすることで以前のフルタイム時より収入が増える、という逆転現象は起きない設計になっています。

計算が調整されるパターン

基本は「今の賃金の10%」ですが、以下のケースでは支給額が調整されます。

  • 月収が育休前の月収の90%を超えたとき
    • 「今の月収 + 10%給付」をすると100%を超えてしまうため、合計が100%に収まるよう、給付率は10%から段階的に減らされます。
  • 以前と同じ、またはそれ以上の月収をもらっているとき
    • 「時短による損失」がないため、給付金は0円になります。

結論|働いた分だけ、家計は確実に潤う

この制度の最大のポイントは、「働けば働くほど、給料も給付金(その1割)も両方増える」という点にあります。

「給付金をもらうためにわざと残業を減らす」といった調整は必要ありません。

育休前の自分という「天井」を意識しつつ、無理のない範囲でしっかり働くことが、復帰後の収入を最大化する最も賢い戦略となります。

育児時短就業給付の申請手続きと会社連携のポイント

給付金の申請は会社が行いますが、給付を確実にするためのあなたの役割と、実務上の注意点を理解しておきましょう。

申請の主体とあなたの役割

手続きは会社(事業主)を通じて行われますが、申請の起点を作るのはあなたです。

項目あなた(社員)の役割
申請依頼復帰後、すぐに人事部門に対し、「育児時短就業給付の申請手続きを進めてほしい」と明確に依頼する。
必要書類の提出会社から求められた子の生年月日がわかる書類(母子手帳のコピーなど)を迅速かつ正確に提出する。
継続的な確認給付申請は会社が毎月(または2ヶ月分まとめて)行いますが、期限(支給対象月の翌月末・2ヶ月分なら翌々月末)を過ぎるとその分受給できません。

継続的な申請と会社との連携

給付は子が2歳になるまで継続しますが、支給対象月ごとに申請(通常1〜2ヶ月分まとめて毎月または隔月程度)で、賃金変動時は随時申請が必要となります。

申請の期限や賃金の計算期間について、復帰前または復帰直後に人事・総務部門と密に連携を取ることが不可欠です。

正しく理解し、活用することで、家計の不安を軽減し、あなたが望むキャリアを自信を持って継続していくことが可能です。

まとめ|育児時短就業給付を正しく理解し、復帰後のキャリアを安定させよう

今回は、「育児時短就業給付」の仕組みと、賢い活用方法について解説しました。

育児休業を終えて職場に復帰する際、多くの親が「時短勤務による収入減」という壁に突き当たります。

この新制度は、そうした経済的不安を和らげ、キャリアを継続しやすくするための強力なサポーターです。

今回のポイントを振り返りましょう。

  • 今の給与に「1割上乗せ」
    • 給付額は「今の賃金の10%」です。育休前の高い給与ベースではない点に注意しましょう。
  • 働けば働くほど手取りは増える
    • 以前の賃金という「100%の天井」はありますが、基本的には働いて稼いだ分だけ、給付金も増える仕組みです。
  • 申請は会社経由、早めの相談を
    • 制度を確実に利用するためには、復帰直後に人事・総務部門へ申請の意思を伝え、連携することが不可欠です。

育児時短就業給付で復帰後の収入を最大化

時短勤務は、仕事と育児のバランスを取るための大切な選択肢です。

この新しい給付制度を正しく活用することで、「経済的な理由でキャリアを諦める」のではなく、「自分らしい働き方で、安定した家計を維持する」ことが可能になります。

制度の内容を正しく把握し、復帰後の新しい生活に向けた確実な資金計画を立てていきましょう。

次回予告|会社が非協力的な時の対処法

今回の給付金で復帰後の家計不安は和らぎますが、そもそも「育児休業の取得を拒否された」「申請に会社が非協力的だ」という、さらに大きな壁に直面する方もいます。

権利を守るための知識と行動

次回は、育児休業や時短勤務に関するトラブルに備える最終防衛策を解説します。

  • 法律で守られた権利
    • 育児休業は法律上の権利です。
    • 会社による拒否や不利益な扱いは禁止されています。
  • 公的窓口の活用
    • 会社が非協力的な場合の労働局やハローワークへの相談手順。
  • 証拠の残し方
    • 権利を行使し、自分と家族を守るために必要な記録(証拠)の残し方。

「知らなかった」で諦めないために。

いざという時に役立つ、あなたの権利を守るための具体的な行動ステップを次回ご紹介します。

筆者 戸塚淳二
筆者 戸塚淳二
  • 執筆者|社会保険労務士 戸塚淳二(社会保険労務士登録番号|第29240010号)
  • 会社員歴30年以上、転職5回を経験した氷河期世代の社会保険労務士です。自らが激動の時代を生き抜いたからこそ、机上の空論ではない、働く人の視点に立った情報提供をモットーとしています。あなたの働き方と権利を守るために必要な、労働法や社会保険の知識、そしてキャリア形成に役立つヒントを、あなたの日常に寄り添いながら、分かりやすく解説します。

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