前回の記事では、IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)の概要や補助対象となるITツール、補助率・補助額について解説しました。今回は、実際の申請手続きの流れや必要な書類、さらにスムーズな申請を行うためのポイントについてご紹介します。
IT導入支援事業者の選定
IT導入補助金を活用するには、まず IT導入支援事業者 を選定する必要があります。
本制度では「企業と支援事業者が共同事業体となって申請を行う」ことが前提となっています。具体的には、企業が申請手続きを行う前提として、まず自社の課題や業種に沿って登録済みの支援事業者と導入ツールを選定します。その後に支援事業者から申請システムへの招待を受ける流れです。申請マイページへのアクセスは、支援事業者から企業への招待があって初めて可能になります。
この仕組みのため、支援事業者を介さずに企業が独自に申請フォームを開設・入力することはできません。
支援事業者はどこで探すの?
中小企業が支援事業者を探すには、経産省の特設サイトにある「ITツール・IT導入支援事業者検索」「IT導入補助金2025 公式サイト」を利用するのが便利です。この検索機能では、事務局に登録・採択されている支援事業者やITツールを絞り込んで検索できます。例えば業種や導入したいITツール名、地域などの条件で検索できます。
支援事業者を選ぶ際のポイントは次のとおりです。
- 導入予定ツールの取扱有無
- 希望するITツールをその事業者が扱って(=事務局に登録して)いることを確認します。ツール登録の有無で申請可否が決まるため、取り扱いがなければ申請できません。
- 補助金申請の実績
- 過去の申請サポート実績が豊富な事業者を選ぶと安心です。経験豊富な事業者は書類作成の負担を軽減でき、審査上の要点なども熟知しています。
- 業界・課題の理解度
- 自社の業界特有の課題を理解し、同業種での導入実績がある事業者は、最適なITツールを提案してくれます。
- コミュニケーションと信頼性
- 相談しやすく説明が分かりやすい、質問への対応が迅速・丁寧な事業者を選ぶのが望ましいでしょう。可能であれば複数事業者を比較し、対応力や費用条件も確認します。
以上を参考に、公式検索ツールや地元商工会議所などで候補を絞り、企業のニーズに合った登録支援事業者を選定するのが良いでしょう。
例えばどんな業者?
- ITコンサルティング企業
- ソフトウェア開発・販売企業
- システムインテグレーター(SIer)
- Web制作・Webマーケティング企業
- OA機器・事務機器販売企業
- 士業(税理士、社会保険労務士、中小企業診断士など)
- 特定の業種に特化した事業者
IT導入補助金において、どんな事業者であっても、中小企業や小規模事業者のIT導入を支援し、補助金の交付対象となるためには、事前にIT導入支援事業者として事務局に登録されている必要があります。登録されたIT導入支援事業者は、トップページ | IT導入補助金2025で確認できます。
たとえ、実績のあるIT企業や、専門的な知識を持つ士業であっても、事務局に登録されていなければ、補助金を利用する事業者の支援を行うことはできません。
導入計画の策定
IT導入支援事業者を選定したら、次はIT導入支援事業者と協力しながら、具体的な 導入計画 を策定します。これは、補助金申請に必要な 事業計画 とも関連します。計画には以下の内容が含まれます。
- 導入するITツールの種類と概要
- 業務の効率化や生産性向上の目標
- 導入後の運用方法
- 目標達成のためのステップ
この計画が明確であればあるほど、申請後の審査もスムーズになります。また、補助金の支給には 一定の効果を証明 する必要があるため、具体的な目標設定も重要です。
このあたりの詳細については、ここで深掘りするよりも、実際にIT導入支援事業者と直接相談して、具体的な状況に合わせて詰めていく方が、より的確で効率的でしょう。
交付申請の手続き
計画がまとまったら、 交付申請 を行います。申請はオンラインで行われ、IT導入支援事業者がサポートしてくれます。主な提出書類は以下の通りです。
- 事業計画書
- 導入計画の詳細
- 会社の財務状況
- 事業活動の概要
特に 事業計画書 の内容は審査において非常に重要です。導入するITツールによって、どのように業務改善が見込めるか、具体的な効果を記載する必要があります。
申請の際は、 申請期限 にも注意しましょう。通常、IT導入補助金の申請は年度ごとに数回行われ、締め切りが設定されています。
このあたりの詳細についても、ここで深掘りするよりも、実際にIT導入支援事業者と直接相談して、具体的な状況に合わせて詰めていく方が、より的確で効率的でしょう。
審査と交付決定
申請後、内容に問題がなければ審査が行われます。審査のポイントは以下のようなものです。
- 業務効率化・生産性向上の具体性
- 導入後の持続性
- 財務状況の安定性
審査に通過すると 交付決定通知 が届きます。ここから正式にITツールの導入がスタートできます。交付決定の通知を受ける前に導入を始めてしまうと、補助金の対象外となるので注意が必要です。
ITツールの導入と運用開始
交付決定後、IT導入支援事業者と連携し、 ITツールの導入 を進めます。導入後の運用において、計画通りの業務効率化が実現できているかどうか、定期的な確認も必要です。
実績報告と検査
導入後は 実績報告 を行います。この報告は、補助金の支給条件として求められ、計画通りの成果が上がっているかを示します。また、場合によっては 現地調査 も行われることがあります。
報告内容には以下が含まれます。
- 導入ツールの活用状況
- 業務改善の結果
- 生産性向上の成果
補助金の受給
最終的に、実績報告が完了し、審査を経て問題がなければ、補助金が支給されます。受給後も定期的な状況確認が求められる場合があります。
IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)まとめ
IT導入は、テレワークを強力に推進し、場所を選ばない柔軟な働き方を実現するための鍵となります。単なるシステム導入ではなく、コミュニケーション円滑化、セキュリティ強化、業務効率化といったテレワーク環境の課題解決に貢献し新しい働き方を支える業務改善の重要な柱として捉えるべきです。
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等がテレワークをはじめとする多様な働き方に対応するため、また業務効率化や生産性向上を図るためのITツール導入を支援する制度です。この補助金を活用することで、テレワーク環境の整備に貢献するソフトウェアやクラウドサービスなどの導入費用の一部が補助され、企業のデジタルトランスフォーメーションを後押しします。
今回の解説はやや駆け足となりましたが、IT導入補助金の実務において最も重要な鍵となるのは、IT導入支援事業者の慎重な選定に尽きます。ここで適切なパートナーを見つけることができれば、その後の申請手続きから補助金の交付まで、支援事業者との緊密な連携によってスムーズに進められる可能性が格段に高まります。まさに、最初の選択が成否を左右すると言っても過言ではありません。
次回は、「地方自治体によるテレワーク助成制度」について深掘り解説していきます。ぜひチェックしてください。
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